梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

瀬戸内の直島(その3)

2022年11月12日 06時05分52秒 | Weblog
ゲストハウスの宿代は、予約の時点では二人一室で14000円でした。思わぬラッキーとは、そこから3000円値引いてくれたのです。全国旅行支援が始まったけれど、自分の宿にはそのような援助は回ってこないと、女将はいうのです。一旦予約して、その援助がないならとキャンセルしたお客もいたそうです。来てくれただけでも嬉しいので自腹を切る、とのことでした(我々は納得して来てるのに、と思ったのでしたが)。
 
長引くコロナ禍、大手代理店や人気の宿を救済する今回の国の旅行支援なのでしょうが、それ以外は切り捨てる不公平さを感じた一幕でした。ここはしかし以前から外国人には好評のようで、その日私たちの他は、外人のお客さんでした。コンパクトなハウスで、無駄なものは一切なく機能的です。何と言っても、潮騒が間近で聞こえ夜中満天の星空が見られた、専用の屋上のテラスは、それだけでも泊まった価値がありました。

直島の沿革を調べてみました。「直島」という地名は、保元の乱(1156年)で敗れた崇徳上皇が讃岐へ配流される途中、この島に立ち寄り、島民の純真素朴さを賞して命名されたと伝えられています。徳川時代には、幕府の天領となり、瀬戸内海の海上交通の要衝を占め、海運業や製塩業の島として栄えました。大正6年になると、三菱の岩崎小彌太によって直島製錬所が設立され、以来島は飛躍的な発展を遂げます。

直島は、瀬戸内海に浮かぶ27の島々からなる町で、白砂青松の美しい自然に恵まれた町です。直島女文楽をはじめ多くの貴重な文化財が残る、人口約3000の島です。平成元年には、福武書店(現:ベネッセホールディングス)が直島文化村構想の一環として国際キャンプ場をオープン。その3年後にはベネッセハウスを開設するなど、文化性の高い島としても発展してきました。

また近年、豊島(直島と小豆島の中間に位置)廃棄物等中間処理施設の建設を契機として、循環型社会のモデル地域を目指す、エコアイランドなおしまプランが国の承認を受け、全町民と全事業者の参加と協働でこのプランを推進しています。直島町民は、あらゆる領域において常に環境に配慮して行動するとともに、町民・事業者・行政が一体となって、緑あふれる豊かで美しいまちづくりを進めることを決意し、平成15年「環境のまち・直島」を宣言します。

以上が直島の簡単な沿革です。島内を車で走っていると、カラフルな「瀬戸内国際芸術祭2022」の看板が目立ちました。この芸術祭は、香川県と岡山県に跨がる瀬戸内海の島々を舞台に開催される、今年5回目となる現代アートの祭典です。直島に限らず、瀬戸内には有史以来長い歴史があります。しかしこの静かで豊かな交流の海は、近代化の影響により、島々の固有性が失われ、人口が減少し高齢化が進み、地域の活力を低下させているといわれています。瀬戸内国際芸術祭は、その海の復権を目指しています。

直島でこの芸術祭の基盤となっているのは、ベネッセアートサイトだと思います。直島に入った初日、島の南部にあるそのサイトに行ったことはお伝えしました。その中核施設がベネッセハウスで、ホテルを備えた現代美術に特化した美術館です。海外で最も知名度の高い日本のリゾート施設の一つであり、屋外展示作品の大半は作家が当地で製作した作品だそうです。

ベネッセは、通信教育•出版の事業を行う、福山市に本社を置く企業です。福武哲彦が創業した福武書店がルーツ。現在は「教育・語学・生活・福祉」の分野を中心に事業を進めています。出版事業においては、妊娠から出産・育児までの子育て情報誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」は有名となり、小中高生用の進研ゼミなども展開しています。

直島の沿革や瀬戸内国際芸術祭や、ベネッセハウスもベネッセも、実は旅から帰って、このブログを書こうと思って調べた後付けです。岡山市に本拠がある会社ベネッセだから、岡山に近い直島にベネッセアートサイト開設だったのです。ゲストハウスの人懐っこい女将も、瀬戸内の海の復権を担っている島民だったのです。アートの島そのものが迎えてくれる、島内の宿はシンプルがベストでした。

二日間島内を巡ってみると、外人や若者のカップルが多く、それもレンタルサイクルを使ったりただ同然の町営バスに乗ったりして、観光スポットを移動していました。直島の本来の魅力を知っているのでしょう。「牛に引かれて善光寺詣り」ではありませんが、「全国旅行支援に惹かれて直島巡り」となった私たちでした。「もっと事前に調べ、また行きたい直島」。岡山から新幹線に乗って帰路に就いた、私たち夫婦の反省及び感想でした。

 宮ノ浦港で出迎えるカボチャ

 本村港にある船の待合所

 道に迷って出合ったゴミ箱

 ベネッセ敷地にあった作品





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 瀬戸内の直島(その2) | トップ | 欠礼とリビング・ウィル(その1) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事