梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

プラス・ワンその後(その4)

2023年03月11日 06時03分23秒 | Weblog
勉強会で招いた講師の方の名前は、並木将央さん(以下N氏)。中小企業診断士、電気工学修士、経営管理修士(MBA)などの資格をもつ、経営関係のコンサルティングをされている方でした。N氏の著書に『成熟社会のビジネスシフト』があり、後日読ませてもらうことになります。勉強会の後懇親会があり、席が近かったこともあり直に話が出来ました。

その場で、N氏にプラス・ワンの概要を伝えて、場合によっては色々アドバイスをもらいたい旨の話しをしました。N氏はコンサルティングの他、各地の大学や団体からの依頼による勉強会やセミナー講師の仕事が忙しく、時間は取りにくいけれど、相談の依頼があれば受けてくれるとのことでした。プラス・ワンの四人の会議に諮るべく、正式な依頼は持ち帰りました。

結果他三人は、N氏のコンサルティングを受けることに同意しました。三人もプラス・ワンの当面の業績は、自己努力によるところが多いとは理解しつつ、発展的な将来性については閉塞感を抱いていたことは確かです。そのような経緯で、去年の夏から年末までの間、お試しのズームによるミーティング(一時間)を経て、正式な一時間の外部のコンサルティングを二回受けました。

鉄鋼業界を全く知らない、N氏の理解力と分析力は群を抜いていました。またプラス・ワンに、とても興味を持ってもらいました。やり方次第だがビジネスとしての可能性を感じ、この事業にはやりようが多くあるとの感想でした。当然クリアしなければいけない課題あるものの、同業他社との陣取り合戦ではなく、ユーザーとの縁が深まれば、共存共栄を目指せる事業ではないかとの見解でした。

しかし今のプラス・ワンは、①誰に(誰を対象としてセールスするのか)、②何を(自社の何をセールスするのか)、③どの様に(どの様なサービスを提供するのか)、については③しか明確ではない。③だけではいずれネタ切れを生ずる。マーケッティングの未熟さをN氏に指摘されました。①と②は自社では中々コントロールできず、例えば展示会等を利用して見込み客を見出す方法を教わりました。

N氏の講義や本で言われているように、人口が減っていく時代つまり成熟社会においては、従来の成長社会の営業力では物は売れず、売れる仕組み(マーケッティング)を作らない限り物は売れない、との論旨にブレがありません。今は舵取りが本当に難しい時代。どれを選んでも正解が見えないが、逆にどれも正解になり得る。人口が増えている時代は判るからやる、人口が減っている時代はやるから判る。この認識を新たにしました。

N氏のアドバイスで後付けですが、検証できたことが二つあります。一つはロボットと職人との関係性です。近年同業者は、職人の高齢化や熟練工の後継が育たないことから、産業用ロボットである大型のレーザーやファイバー切断機を導入する傾向が強まっています。その結果、溶断業は薄ものの自動加工は進むものの、肉厚の特殊な形状を扱える同業が減っているように思われます。そこには最先端の機械に頼り、職人軽視の経営が垣間見えます。

プラス・ワンが踏み込んだ分野は協働ロボットです。ロボット化はするものの職人の機能を尊重し、技術力の温存・向上を目指すものです。N氏は「職人にとって一番辛いのは過去を否定されること。自分がやってきたことが要らなくなること」、そう明言します。ロボットのメリットは職人の実働時間短縮であり手間が掛かる段取りの排除で、デジタルとアナログの融合化です。そのような認識に立つことができました。

もう一つは売れる仕組みの試みです。二年前プラス・ワンとして初めて新規を取った時です。ロボ機の加工を必要とするであろうユーザーを調べ、アポも取らない「飛び込み」でした。押し売りが来たと思われ終始立ち話。会社概況を手短に説明し、立体加工の写真が入ったパンフを渡しました。後日引き合いがあり受注。無駄な営業トークは全く必要なかったのです。その会社の困りごとに焦点があたり、正に共感を得たのでした。

N氏からは、単に立体加工だけのニッチで終わらせない提案や、企業のブランディングに寄与するアドバイスをもらっています。これからも一つひとつ課題を解決しなくてはなりません。梶哲商店としては、従来からの主力ビジネスも確り運営し、プラス・ワンの更なる取り組みに挑戦し、互いの相乗効果も勘案し、バランスを図って行きたいと思っています。そのような営みを続けることが、わが社の事業継承に繋がっていくと信じています。


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