梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

プラス・ワンその後(その3)

2023年03月04日 08時25分21秒 | Weblog
去年の5月に搬入されたロボ機は思ったよりコンパクトでした。白と緑独特の色彩のアームで、この小型のロボットは工場にあって、これが機械かなと見まがう程です。わが社の従来の溶断機器は大型です。去年の8月に導入したファイバーレザー切断機(産業用ロボットの典型)からすると見劣りしますが、このロボ機もこれからの活躍を担っています。  

導入して十カ月経ちますが、大きなトラブルもなく稼働は今日に至るまで順調です。A社のものと比べ相違点やこのロボ機自体の多少の改善点はありますが、色々な仕事を受注して、使えば使う程その切断加工のノウハウは蓄積されていきます。操作する人の工夫次第で新たな発見もあり、これが協働ロボットの真髄かもしれません。

さて、その後のA社との関係です。当初A社から、社長の高齢化と後継者(不在)の問題で、わが社に先々事業継承を見据えた申し出がありました。A社のロボ機もわが社へ売却したい旨の内容も含まれていました。しかし先述したように、ある時点から、わが社はA社の改良型を強く望むようになり、独自でロボ機を購入することを進めました。その段階では、その旨A社には伝えていませんでした。

ある期間事業継承の前提で、プラス・ワン専任の二人が頻繁にA社に訪れていましが、具体的な事業継承の時期については明確な回答がありませんでした。A社の社長の立場に立てば、出来る限り経営は続けたい想いがあったのだと思います。そのような距離感を覚えたのは、わが社のロボ機が納入される三カ月位前のことでした。意を決し、A社に新たなロボ機を導入することを話しました。すんなり賛同を得ました。

A社の販売先の移譲となれば商権の買い取り問題も浮上します。第三者が入るようなM&Aならまだしも、当事者同士の調整は簡単ではありません。わが社にとって商権の移譲は魅力がありますが、わが社のロボ機導入を機に淡い期待は捨て、結果的には、互いに一線を画すことになりました。関係性が明確になり、それはそれでよかったと思っています。現在A社とは、元の取引を継続しています。

プラス・ワンが加工するものは、主に地下構造物です。建物の基礎を打つ時と、その基礎を引き抜く時に、使用される鉄製の肉厚部材です。その部材を加工組み立てするメーカーは、一次加工品を調達して、そこの職人は手間をかけて仕上げの二次加工していました。それを二次加工まで一括請け負うわが社の仕事は、同業他社とは競合しないユーザーへの深堀であり、どちらかというのニッチの世界です。

私は一年ほど前から、ロボ機導入と前後して、プラス・ワンの毎週一回の打合せに同席しています。メンバーは専任二人と社長と私の四人です。社長と相談役(私)の二人だけの打合せと違って、四人全員がフラットの立場で意見交換できる会議にしています。経営や戦略的な観点では、社長や私の意見も活かされるかもしれません。

第三者からの見方や考え方は、会社にとって必要不可欠です。何故なら、自社内の判断や評価は視野が狭く、色々な角度で事業の展開を検証できないからです。わが社は事業を大きく転換する際に、過去第三者の貴重なアドバイスに助けられました。的確なアドバイザーは直ぐに現れませんが、常に求める心構え(他者の意見を受容する)は必要ではないかと思います。

去年の夏、ある方と勉強会で知り合いました。その方はその勉強会が招聘した講師でした。「成熟社会において従来の営業力では物は売れない、売れる仕組みを作らない限り物は売れない」との、論旨でした。一時間半の講義でしたが、一言一句が新鮮で衝撃を受けました。講義を受けながら私は同時にある事を考えていました。

「日本の人口はピークに達し、2008年頃から人口減少を主因として成長社会から成熟社会へと時代が切り替わった。成長社会は、資本の増加や技術の進歩も起こりやすく、大量生産→大量消費→大量廃棄、需要>供給の関係が成り立ち作れば売れる。成熟社会は全てこの反対。成熟社会の企業の留意点は、買いたいと思わせる仕組み(マーケッティング)が大事」「その成熟社会のマーケッティングとは、消費者の潜在的な困りごとを発見して、共感されるものを得て、売り込むのではなく顧客を呼び寄せること」。この要点が最後まで頭に残りました。

講義を受けながら同時に私が考えていたこととは、この方ならニッチの分野であるプラス・ワンをどう見るだろうとのことでした。 ~次回に続く~

 去年導入したファイバーレザー切断機
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