馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

iatrogenic 子宮穿孔

2019-01-18 | 繁殖学・産科学

今日は、午前中1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

そのあと、15歳繁殖雌馬の子宮穿孔。

この馬、「5月分娩予定だったが、先日流産した。

後産が残っていたので、オキシトシンを投与したら、後産は落ちたものの、疝痛を示して子宮脱していた。

なんとか押し込もうとしたが、怒責が強く、なんとか押し込んだものの、その後調子が悪い。」

ということで来院した。

超音波検査で腹水の増量、腸管の肥厚、を診断し、

腹水中の白血球数が6万超であることから腹膜炎と確認し、

経過から、子宮脱を押し込んだ際の子宮穿孔だろうということで開腹手術することにした。

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子宮角に10cmの裂孔があった。

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子宮脱も、子宮穿孔も、医原性 iatrogenic だ。

今まで、オキシトシンの点滴投与以外の投与方法について懸念を書いてきた(胎盤停滞について)。

(悪露停滞について)

今回のような症例があったことも、記録し、記憶しておきたい。

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子宮の穿孔創は縫合して閉じて

腹腔内は生理食塩液10リットルで洗浄した。

腹部には32Frのトロッカーカテーテルを留置した。

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術後、この繁殖雌馬は横臥していたり、伏臥したり。

出血と、腹膜炎によるショックなのだろう。

術後12時間頃には落ち着いてきて、寝なくなった。

翌朝、5時に腹部のドレイン解放。オレンジ色の腹水がジャーッと流れ出た。

それでも数リットルだろう。

6時半に生理食塩液2リットルを注入。

7時半近くに観てもまだ少しずつ流れ出ていたので、あと1時間してから抗生物質を入れた生理食塩液を入れることにした。

                /////////

 

 

日当たりが良いカシワは、大木になる。

何本か切らないで残すべきだね。

 

 

 



6 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2019-01-20 08:06:32
踏んだり蹴ったり、って、踏まれたり蹴られたりだろな、と思うのだけど。iatrosはギリシャ語なんですね。
 ディープインパクトのおかぁさんは20歳くらいまで出産したようですが、この繁殖牝馬もまた妊娠する予定なのでしょうか?今は回復を祈るばかり。
 オラ君、その月、はとぽっけも見ていた。星もきれいでいい月夜だった。すっごく寒くて室内から。雪、ないねぇ。
 リスが好きそうな場所だけど、こちらではキツネやフクロウの狩場にもなりそう。そういうものだよね。
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>はとぽっけさん (hig)
2019-01-21 05:26:09
医学用語はラテン語やギリシャ語が語源になっていて難しいですね。欧米では学生がラテン語の授業で苦戦するようです。私たちはその素養がないので、なじめません。

だいじな繁殖雌馬というのは、行けるところまで行って、あとは功労馬として飼ってもらえる、という馬です。この馬がどうなるかわかりませんが。

大木って好きです。せめて大木を残して欲しいと思います。
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Unknown (piebald)
2019-01-21 11:05:06
大きな木になるのは、人の時間では測れない時間が必要なんですよね。大きな木になれる体力と運も必要だし、一瞬で切らないで欲しいと、願わずにいられないです。
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>piebaldさん (hig)
2019-01-21 17:47:54
その辺にある樹でも、倒されている年輪を見ると、軽く数十年ものだったりします。自分より長く生きてきたものに敬意を払うべきだと思うし、同じような樹が育つのを私たちは見ることさえできません。簡単に切り倒してはいけないと思いますね。
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Unknown (はとぽっけ)
2019-01-21 19:29:03
 オキシトシンのインタビューフォームを見ると、30分で定常状態、増量の際の注意あり、胎児の心音を確認、効果感受性個人差が大きい、点滴速度や容量に上限、などの記載が。感受性、点滴速度、使用量など、馬ではどうなのか、ヒトのように、きちんとまとまったデータがあるのか、まったくわからないけど、基本的な注意事項遵守して、過量などによる事故のないように、とつくづく思う。
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>はとぽっけさん (hig)
2019-01-21 19:43:06
サラブレッドに、ポンと1アンプル投与することの安全性への懸念を何度か書いてきました。ゆっくり点滴静注するなら投与量や投与速度を調節できますし、作用時間も伸ばせます。しかし、ポンと1アンプル投与して、獣医師がその場を離れたり、あるいは畜主に投与させては、ひどい痛みに対応できません。
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