馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

帯広畜産大学 産業動物臨床施設見学

2017-10-30 | How to 馬医者修行

休みの日に、紅葉まっさかりの峠を越えて、十勝までドライヴ。

帯広畜産大学の産業動物臨床施設群を見学してきた。

オープンの時もお披露目の案内状をもらったのだけど、”えらいさん”達とピカピカの施設を観ることには興味がなかった。

私は臨床家だ。

どのように使われているのか、どのように使えるのかを観たい。

                           -

私には35年前の記憶があるので、「ここには何があったんだっけ?」とつい昔を思い出してしまう。

                               -

階段教室。

学生たちに牛や馬を見せながら講義ができるようになっている。

(ホントに患畜を入れて診せながら?講義したことはないらしい)

これは難産介助の練習をさせるための牛の模型。

本物の牛の10倍以上の値段がする;笑

私が学生の頃も、直腸検査を練習させるための牛の模型が置いてあった。

壊れていたし、誰も使っていなかったけど。

馬もある。

ちゃんと妊娠子宮が作ってあって、中に子馬が入っていた。

                            -

倒馬室。スイングドアもある。

そこから手術室とCT室へホイストで運べる。

CTを撮ってから手術するなら、途中でホイストを架け替える。

                             -

手術室。

隣の階段教室から見下ろせるようになっているし、無影灯の横についたCCDカメラで撮影して手術室内や階段教室のモニターで映すことができる。

録画したヴィデオはこれからe-learning用のライブラリーになっていくそうだ。

                             -

枠場。

CT。

このドーナツがスライドして撮影するので、馬はしっかり固定しておけば良い。

撮影は1分ほどで終わる。

MRI。

この部屋は、磁石にくっつく金属は入れられない。

                         -

牛用の枠場は幅を変えられるようになっていた。

牛用手術台。

子牛を載せるならこうだし、成牛を載せるなら同じ台を横に連結して載せるのだそうだ。

それはとても面白い。

                        -

入院厩舎。

入院馬房。

                        -

病理解剖室。

大動物もガンガンやれるゼっていう部屋なのは素晴らしい。

                       ---

すごい施設だ。

よく考えられて設計され、造られている。

私は、海外も含めてあちこちの馬診療施設も観てきた。

Davis california, Gainsville Florida, Oklahoma S.U., Hong-Kong Jocky club, そして日本のあちこち。

そのどこより最新鋭だろう。

大型Xrayや核シンチはなくても大きな問題ではないと思う。

未来を見せてもらったような気になった。

うまく使ってもらいたいものだ。教育にも、研究にも、臨床にも。

                        -

あちこちにラウンジがあり、学生達の部屋もあり、生活空間として快適に造られているのにも感心した。

しかし、土曜日、学生達はひとりもいなかった・・・・

                       ---

質量分析による細菌同定の方法を見せてもらって、

おいしいジンギスカンを楽しく食べて帰ってきた。

                                          /////////////

次の日、

朝、繁殖雌馬が第一趾骨を亀裂骨折している、との連絡。

調教、競走している馬によく見られる縦骨折ではなく前後割れ、だとのこと。

第一指骨・指骨は複雑な割れ方をすることがある。

”CTを使え”、とRichardson教授はおっしゃった。

できることならCTを撮ってから手術したいね~;笑

そんなことで天皇賞秋は観られず。

キタサンブラック、おめでとう!!

 

 

 



10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (azaodoroki)
2017-10-30 15:39:42
凄い施設ですねー!どれくらい稼働しているんでしょうかね?土曜日は誰もいないとはさすが大学ですね。
返信する
Unknown (大学の獣医)
2017-10-30 17:54:01
遠くからお越しいただきありがとうございました。ブログでもご紹介いただき光栄です。臨床家の視点からのご意見は大変貴重でした。こちらも少し未来が見えた気がします。みなさんにもっと広く活用していただけるよう、私も大学も頑張りますので、今後ともよろしくお願い致します。
返信する
Unknown (はとぽっけ)
2017-10-30 19:02:38
 そういえば最近の記事には登場していないようですが、峠越えのばんばたちも恩恵をうけることができるのでしょか?
hig先生のところから峠越えもあり、ということでしょか?
 キタサンブラック、わちゃくちゃスタートからの一等賞、すごいものだ。
返信する
>azaodorokiさん (hig)
2017-10-30 20:24:01
診療施設としてはまだほとんど活用されていないようです。土曜だからって、人が居ないようじゃあ・・ねえ;笑
返信する
>大学の獣医さん (hig)
2017-10-30 20:26:37
活用されるようになると良いですネ。
USAなら2時間のトラック輸送なんてザラです;笑
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2017-10-30 20:29:04
もう輓馬はお断りするようにしました。
去年は2頭CTを撮ってもらいました。とても役に立ち、助かりました。
返信する
Unknown (piebald)
2017-10-30 20:49:11
生きた馬や牛を使った講義や、実際の手術の見学ができたらいいですね。
hig先生が出張手術できたら、設備が生きると思えるのですが。
返信する
>piebaldさん (hig)
2017-10-31 05:44:04
放っておいたのでは治らない、何もしなければ死んでしまう動物を治せるんだ、という喜びを学生に教えて欲しいですね。

そのうち術前CTが必須と考えられるようになる手術もあると思います。私の時代ではないかな;笑
返信する
Unknown (cowcow)
2017-11-01 22:39:23
すごい施設ですね!
私が訪れたときは、まだ食堂だかができたときでした。
もうかれこれ10年くらい前でしょうか。
早く学生の教育にたくさん役立てればいいですね
今の学生は幸せだ。。。
返信する
>Cowcowさん (hig)
2017-11-02 04:18:38
こんな施設でたくさんの患畜を診せてもらえれば、知識や経験は今までとは比べものにならなくなると思います。

ただ、患畜もおらず、入院もおらず、学生も居ませんでした;涙。
臨床の主人公は患者さん。患者さんにとって大切なのは施設より、聴診器一本でも親切に診てくれる医療者。そのことを学べないなら獣医学生はとんでもなく不幸です。
返信する

コメントを投稿