ホルスタイン5ヶ月齢が中手骨骨折をした。
縛ってあったまま暴れたらしい。
畜主は手術してでも治したい、とのこと。
しかし、中手骨骨折なら、よほどキャスト固定に向かないconfiguration 立体構造、配置、形態でなければキャスト固定で治せるはず。
しかし、5ヶ月齢にもなったら、往診獣医師が、農場で、医療者一人で、X線画像を同時進行せずに、理想的なキャスト固定をするのは無理だ。
手術と同じように、診療所へ運んで、複数の獣医師が協力して、牛を横臥させて患肢を牽引し、X線撮影を繰り返しながらできるだけ完全に変位を整復し、それを確認し、キャスト固定し、さらに確認した方が良い。
輸送中に開放骨折になったりしないように、立ったまま応急処置用のキャストを巻いて来院してもらうことになった。
中手骨遠位骨幹端の長斜骨折だ。
長斜骨折をキャストで治せるかどうかは、議論があるところだ。
横骨折や短斜骨折の方が、キャスト固定には向いている。
このキャストはあくまで応急処置用。
このようなキャスト固定だと、骨折端が皮膚を突き破って開放骨折になりかねないことがわかる。
骨折遠位部が外旋しているかな。
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牛は、トラックから歩いて診療室へ入ってきた。
その前に体重を量った。187kg。
1. 鎮静して、胴締めをかけて倒す。
キャストを外す。
2. 蹄にドリルで孔をあけ、ワイヤーを通して患肢を牽引する。
整復して、X線撮影して確認する。
3. ストッキネットを二重にして肢に通す。
中手骨遠位部の骨折なので、ハーフリムキャストでも大丈夫かもしれない。
フルリムキャストにすると、生活が不自由になり、わずかとは言え橈骨や上腕骨骨折のリスクがある。
しかし、総合的に考えて、フルリムキャストにした方が良いだろう。
骨折部位の近位と遠位の関節を固定するのが外固定の基本だ。
4. キャストトップになる部位、副手根骨の掌側に外科用フェルト(エバウールシート)を帯状に当てる。
5. グラスファイバーキャストを巻いていく。
本当は少し腕節は屈曲させたい。しかし、そのことより骨折部が変位しないことを優先させる。そのために肢を牽引しておくことが必要なら牽引したままキャスト材を巻く。
6. キャストがほとんど巻けたところで蹄のワイヤーを抜く。蹄尖までキャスト材で覆う。
7. X線撮影してキャスト内で骨折部が変位していないことを確認する。
綿包帯をまいていないので、キャスト材と皮膚の間によけいなスペースはない。
もっと牽引して頑張れば、完璧な整復ができただろうか?
牛の骨折では、骨折端が1/2~1/3接触していれば骨癒合が期待できる、とされている。
もちろん、早く良好に骨癒合して早くキャストを外してやりたいけど。
この牛は、拮抗剤を投与してもなかなか立ち上がれなかった。
絨毯に乗せて、その絨毯をブルーシート2枚を交互に敷いた上を引っ張ってトラックへ運び込んだ。
農場へ帰ったら立ち上がって、フルリムキャストをしたまま上手に生活しているそうだ。
4-6週間で骨癒合が期待できる。
キャストの外からX線撮影して骨癒合を確認してからキャストを外す。
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牛の下肢、中手骨、中足骨の骨折はキャスト固定で良好に治癒する、ということになっているが、ある調査成績によれば治癒率は決して満足のいくものではない。
もちろん、開放骨折だったり、ひどい粉砕骨折だったり、新生子牛特有の問題を抱えていたり、状況はいろいろだろう。
子牛も半年を越えてくると200kg以上あるので、骨折部の変位の整復もたいへんだし、キャストの適応も悪くなる。
1歳未満の子牛の骨折は、全道で年間約400頭の共済病傷事故として発生しているそうだ。
治癒率はまだ向上させる余地があると思う。
日高は、他の地域に比べて明らかに治癒・救命率が良いそうだ。
X線画像器材が普及しているし、キャスト固定の技術があるし、二次診療施設が運営されているからだ。
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しかし、私たち以上に牛のキャスト固定に造詣と経験がある獣医さんが居るはず。
どなたか、牛のキャスト治療に自信があって、文章も書ける、という獣医さんが居ないだろうか?
自薦他薦を問わないので、教えてください。
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図書館の新刊書のところに並んでいた。
大版で、写真集のような本なので目立つ。
世界各地のオオカミと野生のイヌが美しい写真と文章で紹介されている。
オオカミから家イヌへの進化?についての最新情報も書かれている。
遺伝子分析の結果、東アジアの家イヌたちが、もっともオオカミに近いと考えられるようになっている。
柴犬や秋田犬など。
オオカミが飼い慣らされて人と暮らすようになったのが家イヌだと考えられてきたが、どうもちがうかもしれない。
家イヌはかなり古くから家イヌになるべく進化し、人との暮らしを選んだ。
世界中にはオオカミ以外にも多くのイヌ類、ジャッカル、コヨーテ、ハイエナ、などが居るが、家イヌがオオカミから派生したのは間違いない。
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一匹のオオカミがクマに食べ物を運び、一緒に暮らした観察はとても興味深い。
そんなことがあるんだ、と驚くが、そういうこともあるかもしれない、とも思う。
メルヘンのようでもあるが、生き物とはそういうものかもしれない。
とても良い本だ。
動画で見ました。クマと狼の仲良し。
この本、中古でもあまり安くなっていないけど、手に取って読んで、見て、感動を新たにしたいです。
運べない育成牛や成牛では、複数の獣医師で対応するようにすれば良いと思います。お互いに勉強する機会になりますから。
ただ、独創的な工夫をする前に、基本に忠実なキャスト固定をやってみてもらいたいと思います。
ほう、動画も出てますか。
2800円、税込み3080円。値打ちあると思います。ワンコを擬人化するより、イヌとはどういう動物か、を考えてもらいたいです。
ここまでは現地で出来なれけばならないことなのでしょう。
鋭端が向かっている関節を伸展させることは大事かも知れませんね。
負重が一番向かって、ややもすると外に逃げるのはそこだと思いますから。
回旋抑えるのに関節入っていないと無力なので、肘膝入ってフルリムかなと思います。
それ以上長い外固定の言葉知らないもので笑
我こそはという牛医者さんたくさん上梓されていると思います。
たまたま上手くいっている症例のベースになっているダメになった数の正確なところが本当は知りたかったりします。
多分症例の下腹には浮腫があります。
低ナトで飼われていたか、心奇形が覚醒の悪かった理由かも知れません。
甲斐犬みたいなのは狼ぽいなと思いますが、秋田犬や柴犬はゆるキャラに感じますね。
シベリアンハスキーなんかハーフ言われてたと思いますが、どうなんでしょうね。
現地で一人で、という固定観念を覆せば、よりよく治る骨折牛を増やせると思います。特に育成牛や成牛では、X線画像を見られる環境で、複数の獣医師で当たるべきだと思うのですが。
それでだめそうな症例は手術です。
下腹浮腫はありません。農場に帰ってからは自力で起立し、元気にしているようです。
シベリアンハスキーやアラスカンマラミュートが特にオオカミに近いということは遺伝子的にはないようです。外見だけ、なんですかね。
中身判らないうちはどんなに完璧な作法と結果であっても応急処置なんだと思います。
往診すればみんな戻ってくるわけですから、症例も走ってもらって複数名での確認と2次処置を検討対応すればいいのだと思います。
直帰しかできない、診療施設も持たないでは悲惨ですけど、これまでの積み上げの実態がそうなっているところは多いと思います。
現場処置で間に合っているんだから運ぶのめんどくさいのクライアントはそれなりの獣医師に対応してもらう様にすればいいと思います。
直接見た獣医師がそう申すのならその通りなのだと思います。
ただ問題は次なんですよね。キャストはずしは現地なのかも知れませんが、また覚醒が悪いとかやってられないわけです。
原因と対策は必要だと思います。
柴とか秋田ってご主人様、な感じでオオカミぽくないですけどね。
ゲノム評価的にこの辺が弱いかもです。
覚醒が悪かったというより、牛がフルリムキャストでの立ち方を知らなかった。周りが牛の立たせ方を知らなかった、のだと思います。
どうやらオオカミの一部が家イヌになったわけではないようです。オオカミから分派したイヌの一部が人と暮らすようになった?まあ、まだわからないところが興味をひくところで;笑
それは危ない。超危ないですね。
前肢だから良いですが、後肢固定して滑走する状況に放されたら結構股関節やると思います。
誰のせい?になりますね。
なるほどです。改良と進化の違いと申しますか。
普通生きれないようなものでも敢えて愛玩として保護して表現型を変えてきたのが洋犬かも知れません。
だから人を楽しませるような奔放さをみせるのもある。
しかしそれより前に、ヒトの残飯拾いから餌付けになりついて行ってのプロセスがイヌ化にある訳ですよね。
それを延々と続けて超ご主人様になったのが和犬かも知れません。
他人を楽しませる感じは殆どない笑
ニホンオオカミは駆除されて絶滅した訳ですが、実は彼らのとった生存手段の成れの果てに超進化したのが和犬であると解釈したら、面白いですね。
雑食できるようになったのがイヌである、かもしれません。イヌを飼えるようになって、現代の人類が生き残った、という説もあるらしいです。