馬や牛の赤ちゃんは、人よりはるかに不衛生な場所で生活しなければならない。
その上、人と違って、馬や牛は免疫成分が胎盤を通過しないので、液性免疫の移行は初乳に頼っている。初乳から免疫成分を吸収するまでは、腐りやすい生肉のようなものだ。
左は細菌性関節炎で予後不良となった子馬の球節。
解剖すると肝円索(臍静脈)の中に膿が貯まっていた(右)。
つまり、この子馬は臍から感染し、全身の菌血症を起こし、それが球節に関節炎、骨髄炎を起こしていた。
左は後肢がフレグモーネ様に腫脹し、やがて敗血症sepsisにより死亡した子馬。左後肢の皮下はすでに組織が破壊されている。
右はその子馬の腹腔。汚い腹水が溜まっており、腹膜炎状態だったが、治療・看護中には気づかなかった。
臍の周囲が感染、炎症を起こしており、侵入経路は臍だと思われた。
こういう症例では、しばしば臍動脈、臍静脈の中に膿があったり、あるいは血管の中の血液から菌が分離される。
娩出されても、臍動静脈には血液が流れている。子宮が収縮し、胎盤に含まれていた子馬の血が子馬に戻ると血流は少なくなり、臍帯は子馬か母馬が動くことで切れる。そして血管の中の血は自然に流れ出てなくなり、細菌の培地にならずに済む。
自然にうまくいけばこうなるはずなのに、胎盤が収縮する前に臍帯を人が切ってしまうと、子馬の貴重な血は胎盤に残ったままになる。まだ血流がある時期なので当然出血する。それで人が臍帯を縛る。臍動脈、静脈の中には血が残り、わずかな菌でも簡単に増殖する。
こうならないようにするためには、娩出後、子馬を親から引き離してはいけない。子馬の後肢が膣の中に引っかかった状態でおいておく。すると母馬は立ち上がらない。この状態で10分以上待てば子宮が収縮し、胎盤の血は子馬に戻る。
そして、この胎盤の血が子馬へと抜けることで、胎盤停滞もしにくくなるのではないかと私は考えている。子宮内膜と胎盤の血管は絡み合っている。片方の血が抜けていなければ、はがれにくくなるのではないかと思うわけだ。
そして、臍帯の血流がなくなっていれば臍帯が自然な位置で切れてもほとんど出血しない。で、縛らなければ血管内のたまり血が自然に流れ落ちることで、感染しにくくなる。
人がすべきことは臍の消毒だけ。これにはヨーチン、イソジンが良く使われている。しかし、臍や周りの皮膚を荒らす。また殺菌効果がクロルヘキシジン(ヒビテン)より弱いと言われている。
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からで、臍を0.5%クロルヘキシジンでディッピングしているところ。
まだ、ここまで実践している牧場はそうそうないだろう。
オーストラリアではほとんどの馬を放牧地で分娩させるそうだ。そして、厩で生まれた子馬より、放牧地で生まれた子馬の方が感染症が少なかったとする科学的な調査成績も報告されている。
臍を消毒しなければいけないのは、馬を建物内で分娩させるせいなのかもしれない。
分娩のときに人が何をして、何をすべきでないかもう一度見直してみる必要がある。
自然がうまくできていて、人がそれを邪魔していることが多いことに気づく。
根拠の無い習慣を知ったかぶりして、余計なコトを広めないように注意しなければいけませんね。
今年はヨーチンやめてヒビテンにしよう♪
ま、「異常がなければ」ということです。日高ではほとんどの牧場が何日も前から分娩監視しています。そのことは大事なことです。
もちろん、助産が必要かどうか判断しなければなりませんし、臍帯が切れて出血が多いようなら止める必要があります。
多くの馬は夜9時から12時の間に産みます。危険を避ける草食獣の本能でしょう。「さあお産だ」「それ引っ張れ」「臍切って!」「よし縛れ!」は違うんじゃないかということです。
子牛のへそ関係では臍帯炎、臍ヘルニアがよく見られます。
出生したときに臍帯がなんらかの事情でへその基部から切れてしまうと、どうもそこから感染し、臍帯炎になってしまうことが多いという印象を持ってます。
普通に切れてへそからぶら下がっている臍帯は、時間がたつにつれ自然乾燥しカチカチになり、細菌が上行性に侵入することは起こりにくくなるというのも、自然のメカニズムなのでしょうか?
その昔、メス子牛なのにへそからポタポタおしっこをする症例がいました。尿膜管遺残ということで手術(といってもお粗末なものですが)で結紮して陰部からカテーテルをいれて排尿を促したのですが、腹膜炎で死亡しました。手術時、腹腔内の臍帯部分がすでに化膿してました。原因はなんだったのでしょうか?
さて、先生のとこの末娘さん、かわいいですね!うちにも卒園式を迎えた娘がいます。お兄ちゃんが習っているそろばんをやりたいらしく、私の顔を見るたびに、「パパ、チョロバン!」と言います。勘弁してくれ(T▽T)尸~~SOS!!
昔は赤チンつけてたのになくなるし、
昔はへそしばってたのに今はしばらないし、
結局どうするのが1番いいんでしょうか?
馬でも臍尿漏は結構あります。縛るとそこで切れて短くなり、また縛るとまた切れてよくありません。たいていは放置で大丈夫ですが、感染していたりすると手術で臍、膀胱尖部、臍動脈静脈を取ってしまいます。
子牛は臍が大きな膿瘍になっているのがいますね。
>モワモワさん
牛も臍については基本的には馬と同じだと思います。
お産そのものはとっても時間がかかる動物だということが違いでしょうか。
誰か牛のお産の注意を書いてくれないでしょうか。
子馬→胎盤→母馬→胎盤→子馬 だったのが
子馬→胎盤→子馬 になることで血流が減少するということですか?
ちなみに尿膜管遺残は、
当地のスター種牛がまだ出始めのころ、わりと頻繁に発生してました(開腹して膀胱ぎりぎりで結紮・切除)。
その種牛では、今も臍ヘルニアが多いことを考えると、遺伝的に臍輪がでかいとか、そこを囲う結合組織がお粗末だとか、止血のシステムの発達が遅いとか、なんかあるのかもしれませんね。
うーん。胎児胎盤の血は胎児の血。母親の血と胎児の血は混ざりません。そこのところOKでしょうか。
遺伝はあるかもしれませんね。これからどんどんいろいろな遺伝要素が明らかにされるんでしょう。期待もありますが、怖いし、つまらなくもあります。
こどものとき「お前のかあちゃんで~べそ!」ってけんかしたな~。
そうですよね(´・ェ・`)
てことは・・・
血液が子馬に戻るのは、
子宮が収縮することで胎児胎盤を圧迫するからってことですか?
臍帯の血流が減少するというメカニズム、教科書には載ってないです。。。
教えてください!!
そうですね。私も子宮が収縮することで胎児胎盤の血液も子馬に戻るとしか考えていませんでした。しかし、もっと他のメカニズムもあるのだろうと思います。
今度、調べてみます。
容器は、注射器の大きいのにしてみました。(^^)
お世話にってる
先生も牛で同じような事を
研究発表されてて
その時も、イソジンでは刺激が有るから
なんとかバイオレットっての使ってました。
なんでも消毒と乾燥を促進させるためだったように思います。
仔牛の販売値が高いので
どのお宅も力が入ってます。
へそ、されどヘソですネ。(^^)
トム・ハンクス、良い役者さんですよネ。