現役競走馬が側頭骨舌骨関節症のようだ、という診断で戻ってきた。
来院すると、たしかに右耳が低く、鼻面が右側が不全麻痺している。
右眼瞼の反射はすこし弱い。
舌が右へ露出することがある。
X線撮影すると、側頭骨舌骨関節が大きく見える。しかし、これでは確定診断できない。
喉嚢に内視鏡を入れる。左は異常なし。右は、茎状舌骨が側頭骨との関節近くでかなり太くなっている。
間違いないだろう。側頭骨舌骨関節症だ。
この病気を知っていて、手術のために帰す判断をした関係者はたいしたものだ。
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日をあらためて手術。
しかし、病気の性質から言って、放置すれば悪化する。
症状が出たときには、すでに側頭骨は骨折しているのだ。
舌骨が動かないようにして、側頭骨が骨折を繰り返さないようにしなければ、脳神経はさらに大きな障害を受ける。
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どういうわけか、喉から顎にかけて浮腫があった。
直腸粘膜も浮腫を起こしていた。
角舌骨を摘出するには正中ではなく患側を切開した方が良い。
ただし、そうすると底舌骨、角舌骨を見つけにくい。
この馬の舌骨は、少し太くなり、関節はかなり大きくなっていた。
なんとか、大出血させずに角舌骨を摘出することができた。
この手術方法はDucharme先生が考案された。
骨を1本抜き取ろう、なんて普通は考えられない。
つくづくすごい馬外科医であり、研究者だ。
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増田 俊也 | |
宝島社 |
飛行機での時間つぶしに空港の本屋で買った。
時間つぶしには良かった。
劇画のような小説。
しかし、本当の怖さは、「熊嵐」にとおく及ばない。
ただ、自然や森については良い記述もあったかな。
少しじゃなくかなりいい感じにみえるのですが。
タイムリーにはとぽっけも今、中枢性、末梢性の瞬目反射などを合併する疾患復習中。
今のところは天気予報は大外れにピカッ晴れ。
これってhig 先生ご自身もそうです。
どんな症状の馬を連れて行っても「いやあ、こういうのは専門外なんですよ。他を当たってみて下さい」なんて絶対言われない。大切な馬の飼育者にとっては凄い安心感です。
今日は雨降りでしたが、午後は雪は降りませんでした。
私はそれにしたがって手術するだけですが、なかなか。
広く知られて治療までこぎつけるようになるにも時間がかかるものですよね。
札幌の雪はすごかったようで。
雨後の冷え込みは雪より足元に悪そう。
というわけでこの手術のあと競走年齢になった馬はいません。
北海道日本海側はすごい雪のようですね。
こちらは雪のないクリスマスになりそうです。
この病気だということになって、手術できないならステロイドで症状を抑えることができるかもしれません。しかし、症状が出たときには側頭骨と舌骨の関節は癒合しているので、一時的に症状を抑えられても、いずれまた側頭骨が骨折し、脳神経が障害されると考えています。平衡感覚障害が転倒するほどひどくなる、採食できなくなるほど舌や唇の麻痺がひどくなる、片目を失明するほど乾燥性角膜炎がひどくなる、髄膜炎を起こす、などが重篤化のシナリオです。
私は厩務員のようなもので、詳しいところは分からないのですが、獣医さんがこちらの病名を疑っているようで、レントゲンは撮ったようです。側頭骨の骨折はまだ?みられないとのことでした。これから調べていくようです。
数日前お世話中、下唇が曲がっていて報告しました。歩様等は問題なく、現在訓練にも使用しているようです。
発見時は耳の動きの差はさほど気になりませんでしたが、今日みた感じでは、少し鈍ってきているように感じます…
側頭骨舌骨関節症なら、いずれ麻痺側がまばたきできなくなり乾燥性角膜炎が悪化します。唇に続いて舌の麻痺も出てくる可能性があります。
内科的治療は時間と経費がかかりますので、結果的には馬を救うためには早めの診断と手術をお勧めします。