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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

子馬の頚椎骨折

2007-06-19 | その他外科

P6110433 P6110435 子馬が牧柵を飛び越えて転倒していたらしい。

しばらく立てないで、即死かと思ったらしいが、立って歩けるようにはなった。

鼻血の痕もある。

歩きは心もとない。

そして・・・・頚がヘンに屈曲したままだ。単に腫れているのではない。

5 x線撮影してみると、

第四頚椎前関節突起骨折。

第四頚椎仙尾骨折。

第四・五頚椎関節脱臼。

第五頚椎椎弓骨折。

第五・六頚椎関節脱臼。

第五頚椎仙尾骨折。

                              -

剖検時に頚椎の屈曲、変位を整復しようと試みたが、できなかった。

第四・五頚椎の椎弓、関節突起が圧迫骨折してしまっているからだろう。

いつか助けられる、助けるべき症例に遭ったときのために、準備はしておきたい。

                              -

学生の頃、頚椎が折れたポニーの子馬をもらってきて、数日看護したことがあった。全身麻痺だったが、哺乳ビンからミルクは飲めた。講義の間に何度もミルクを飲ませている間は元気だったが、私が介護できなかった日に死んでしまった。

生かしておくことさえ可哀想だったのかもしれなかった。

今回の子馬から、何も知らず、知らないから先のことも考えなかった頃のことを思い出した。

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P6190449


10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>今回の子馬から、何も知らず、知らないから先... (sutemaru)
2007-06-19 20:24:24
>今回の子馬から、何も知らず、知らないから先のことも考えなかった頃のことを思い出した。
この言葉の意味すごく良く判ります。
この時代を通って今の自分があるのですね。
でも判らない時代も好きでした。
未だにそれが残っているような、、、残していたい様な、、、残してはいけないような、、、
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>sutemaruさん (hig)
2007-06-19 20:54:47
>sutemaruさん
 判っていただいて嬉しいです。
 周りに止めならながらでも、可能性を信じられたころに戻りたいような、戻ってはいけないような・・・・・戻れはしないのですが。
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自分が出会うことのできる症例に「限りがある」と... (豆作)
2007-06-20 07:07:16
自分が出会うことのできる症例に「限りがある」と知った時から、私も簡単に症例を流せなくなりました。
>いつか助けられる、助けるべき症例に遭ったときのために
若い獣医師は、がんばっているhig先生の背中を見て健全に育っていると思います。
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ただひたすら、純粋に向き合っていた頃、青春の真... (ただのおばさんです)
2007-06-20 08:10:57
ただひたすら、純粋に向き合っていた頃、青春の真っ只中にいたのでしょうね。でも先生のブログからは、今も変わらない純粋さが伝わって
きます。頑張ってくださいとは、いえません頑張りましたねと。
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hig先生、 (連合会お座敷獣医師H)
2007-06-20 12:29:47
hig先生、
最後の夕日の写真、象徴的ですね。
私も、仕事がうまく進まないとき、「明日の来ない今日はない、no rain,no rainbow」と自分を納得させていたことを思い出しました。

たぶん、一生続くのだと思います。
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>豆作先生 (hig)
2007-06-20 23:29:29
>豆作先生
 私たちの年になるともう新たな大きな可能性はなくなりますね。あとはこのままもう少しだけこの道を行くのみです。
 その道の途中で、頚椎の固定手術をする機会があるかどうかはわかりません。
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>ただのおばさんですさん (hig)
2007-06-20 23:33:35
>ただのおばさんですさん
 コメントありがとうございます。
 頚の折れたポニーが死んだことを、ポニーを私にくれた獣医さんに報告したら、
「飼っておくのがまちがえてる」と言われました。
 私も、今ならそう言うかも知れません。
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>連合会お座敷獣医師Hさん (hig)
2007-06-20 23:36:43
>連合会お座敷獣医師Hさん
 雨が降らなければ、虹もでない。ですか。良いですね。
no pain, no gain. より良いじゃないですか。
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再び頚損の話題ですね。 (nemobaba)
2007-06-21 18:12:47
再び頚損の話題ですね。
この子馬にどんな衝撃が加わったのでしょうか。馬はヒトの頚部と比べて、長い分だけ衝撃に弱いんでしょうか。キリンもそうですが、どうして馬の首は長くできているのでしょか。昔のまたその昔・・・馬も高いところの植物を食べなければならなかったのでしょうか。
そういえばNHKの「ためしてガッテン」で首の痛みと首のトゲについて”扱ってた番組で、キリンの頚椎の数も7つである・・・と言うことでした。もっと多くの頚椎を持った動物もあるということですが、あのなが~い首の動物がなぜ7つなんでしょう。ふしぎなこと、わからないことがいっぱいありますね。

 以前、前回の頚損の話題のとき、当院に2名の患者が前後して搬入された話をいたしました。1名はC3/4の完全損傷でした。その男性はまだ、厳しい状態が続いています。もう一人の女性の患者さんは、中心性脊髄損傷で、現在は右上肢の知覚運動不全麻痺がありますが、歩行できるようになりました。今日の昼はバイキング方式の昼食でしたが、明るい良い表情で食事をされていました。
 Hig先生のこの子馬もこの2人の患者さんも、(受傷機転、受傷の程度など)どこか運命に操やつられているかもしれません。
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>nemobabaさん (hig)
2007-06-21 20:50:29
>nemobabaさん
 頚は肢に比例して長くなるもののようですね。速く走る肢の長い馬を残してきたのがサラブレッドで、その結果頚も長いのでしょう。
 長い頚には支えるために強い力が加わっていることも、整形外科的に考える時にはポイントでしょう。人のような固定用のカラー(頚への装具)は馬では役に立ちそうにありません。
 それでも、いつか腰フラの馬や、頚椎損傷の馬を治せる日が来るのではないかと考えています。
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