真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態怪談 し放題され放題」(2019/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督・編集:山内大輔/特殊メイクアップ・造形:土肥良成/撮影監督:中尾正人/録音:大塚学/音楽・音効:project T&K・AKASAKA音効/ラインプロデューサー:江尻大/助監督:小関裕次郎/撮影助手:戸羽正憲・榮穰/特殊メイク・造形:戸塚美早紀/ポスター:本田あきら/エキストラ協力:松井理子・吉原麻貴・河合夕菜・有志エキストラの皆さん/制作部見習ひ:松野宏昭/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:星川凛々花・玉木くるみ・並木塔子・安藤ヒロキオ・森羅万象・ケイチャン・櫻井拓也・佐々木狂介・長谷川千紗)。
 「その客が見たいといつたのは、中古の一戸建てだつた」。後述する三沢の口頭に名前が上るだけで、行きつけのスナックのママに事故物件を紹介した社長の矢木澤は別に登場しない「ハッピー不動産」の江口弘樹(安藤)が、やけに青白い不気味な男(佐々木)を古ぼけた一軒家に内覧させる。江口の適当な説明には耳を貸さず、勝手に家内を見て歩き畳みの間にもスリッパのまゝ上がつた佐々狂は、挙句江口が雨戸を開けてゐる隙に押入れに入つてしまふ。当然そこに誰かゐる訳のない、女の人影に気を取られ一瞬目を切つた江口が開けた押入れの中に、佐々狂の姿はなく。慌てた江口が佐々狂を捜し回つてゐると、長谷川千紗らしいがゴースト通り越してクリーチャーな特殊メイクがキッメキメで、正直華奢なら男でも構ふまい女の幽霊がカット飛ばしてガンッガン肉迫、して来て暗転。数時間後意識を取り戻した逸話を、江口が中途入社の新人・田村(櫻井)に語る。営業車の後部座席にも出現した女幽霊の気配に、田村が身震ひしてタイトル・イン。結局この短い一幕限り、櫻井拓也がアバンを駆け抜けるのには軽く驚いた。
 江口は結婚四年の妻・灯里(並木)と、幸福な夫婦生活を送つてゐた、筈なのに。台所でのアツい裸エプロン戦をキメた翌日、「好きな人ができました。探さないで下さい。灯里」とだけ書いた置手紙に指輪を添へ、灯里は出奔する。完全にスポイルされた江口は無断欠勤の末に解雇、いよいよ尻に火の点いた半年後、寮完備のみに釣られ「三沢解体工業」の門を叩く。江口を面接した、矢木澤とは懇意の社長・三沢剛(森羅)はガッハッハな即決で採用。するや否や作業着一式を持つて来た、タコ部屋もとい社員寮「涼風荘」寮母の藤子(星川)は、江口が仲良くなつた―かどうかは微妙な―同僚で脛は傷だらけな模様のオラついた関西人・岩木要三(ケイチャン)の言によると、博打好きの夫の借金の形に、裏方面の顔も持つ三沢に囲はれた女だつた。
 配役残り、競馬で当てた岩木が江口を連れて行く、売春スナック「スミレ」のママが何故か照明を当てない長谷川千紗の二役で、クラミジアがまだ治つてゐないホステスが吉原麻貴。河合夕菜も兎も角、松井理子が何処に見切れてゐたのかがサッパリ不明。例によつて、一般映画の方を観ないと判らないだとかたはけた次第ならば、最早何もいふことはない、こともない。有志の皆さんは主に三沢解体工業の作業員と、クラミジアを安く買ふ男以下スミレの客。そして玉木くるみが、江口をホテル直交のアフターに誘ふホステス・りん。ポスターより一つ順位の上がつた、ビリングに疑問は残らなくもない。
 予告では「2019年・夏 原点回帰の正統“大蔵怪談”映画」を堂々と謳ふ、山内大輔2019年第二作。山内大輔的には怒涛の四連敗を一旦引き分けで止めた、「女いうれい 美乳の怨み」(2017/主演:佐倉絆)以来二年ぶり、路線復活後初となる一人二本目。当サイト判定の通算成績は、一昨年の佐々木浩久ピンク映画第二作「情欲怪談 呪ひの赤襦袢」(主演:浜崎真緒)までで一勝五敗一分。渡邊元嗣が「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき)で麗しいルネサンスを果たしたのも、改めて振り返ると何だか結構遠い昔。以降後藤大輔加藤義一竹洞哲也、そして荒木太郎が悉く玉と砕けるか敗れ去つた死屍累々の掉尾を飾つた―飾れてない―荒木太郎も、今はもうゐない。
 解体予定の廃病院を下見した、江口が―後々そこにも出没する由来の語られる―女霊に慄きつつ、基本線としては魅惑的な寮母を軸に据ゑた、情欲渦巻くエロドラマ。さうは、いへ。男達を絡め取り、意のまゝに操るファムファタルにしては、如何せんパッとしない主演女優が兎にも角にもな難点。掃き溜めに鶴の高が知れ具合がリアルではあれ、そこは映画ここは小屋、もう少し華やかか艶やかな夢を見させて欲しい。星川凛々花共々ピンク初陣の玉木くるみは、仕出かさなければ上出来といふ程度の出番しか与へられず、何故か本クレでは三番手に下がる並木塔子が、服を着てゐようと脱いでゐようとの総合的に、群を抜いて安定してゐる図式はある意味考へもの。それだけ地力に差があると並木塔子を尊べばそれでいいではないかといふ話にせよ、デビュー僅か二年目にして、これではたとへば林由美香なり風間今日子の仕事ぶりである。一般映画版のタイトル「やさしい男」にも採つた、臆面もなく自ら呆れてのけるほどの江口の“優しさ”とやらも理解に難く共感に遠い。単に、惰弱に燻るか生煮えてゐるばかりにしか映らない。最終的に主を喪つた三沢解体工業が解散し、江口が再び全てを失つた超絶のタイミングで、上手いこと駆け落ちした男に捨てられた灯里が戻つて来る展開は、グルッと一周したファンタジーに徳俵を割る。徒に道程の複雑な、此岸に跨いだ復讐譚は案外纏まつてゐなくもなく、エクストリームな特殊メイクを施された、女幽霊が突進して来るショットは闇雲な迫力に溢れてゐただけに、力技の画でゴリゴリかゴアゴア押す、パワー系幽霊映画に徹する選択肢も寧ろあつたやうにも思へる。それが、大蔵怪談の正調なのか否かはさて措き。結局、とか何とかいふ不足も、R15+ver.を観るか見れば解消される、のかも知れない可能性ないし不安が、そもそもないはずもがな。タス版の方は―商業的にも―得られてゐるのかどうだかに関しては興味もないが、いい加減、ピンクの客を虚仮にしてまで、二兎を追ふのはやめにしたら如何か。
 備忘録< 徒に道程の複雑な復讐譚のこゝろは、佐々狂が藤子を通して岩木か江口に、自身らの仇たる三沢を始末させゆ


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