Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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駅の階段を下りていくと、途中に男性がひとり立っていた。
白髪の混じった、50代くらいの男性である。
コートを着ており、背が高めで立派に見える。

それにしても、階段の中央で立ち止まっているなんて・・・
邪魔だし危険である。
男性は黙って階段の上を鋭い目で睨んでいる。
その険しい表情と、中途半端な立ち位置に、何だか違和感を覚えた。

階段にいるのは、僕とその男性だけだ。
たまたま他には誰もいなかった。
注意しながら、その男性の横を通り抜けようとした。

すると男性が声を出した。
「待ちなさい!」
驚いて見ると、男性はこちらを見てはいない。
階段の上の方を、相変わらず、つり上がった目で睨んでいる。

そちらをチラリと見たが、誰もいない。
空間に向かって話している。
ああ、その手の人か・・・

恐らく僕に言ったつもりなのだろう。
相手と目を合わせる事が出来ずに、あらぬ方を向いて話す。
それでいて僕の反応を見ているのだろう。

一瞥して、無視して横を通り過ぎた。
あなたと話す気はありません・・という態度である。
すると、待ちなさいと言った男性は、今度はいきなり歌い始めた。

それも「春が来た」のメロディーで・・・
「まーちなさいよ、まーちなさいよ、まぁちーなぁーさいー。まーちなさいよ、まーちなさいよ、ま・ち・な・さいー」
にこりともせず、硬い表情のままで、最後まで歌い切った。

おお・・これは新しいタイプだな。
僕に無視されて、そのまま歌を歌って、ごまかそうとしたのだろうか。
いずれにしても、かかわる気は無いが・・・
確かに、春が来たものな・・・
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