下請け


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知人の会社に、大手のメーカーから、下請けで製品の加工をしてくれないかという話が来た。
長年資材を買っている商社の人が、知人の会社なら対応出来るはずだ・・と、紹介してくれたのだという。
大手ならある程度安定して注文をもらえるだろうし、成功すれば新しい柱にもなり得る。
ぜひ挑戦してみよう・・ということになった。

知人は社内の各部署の責任者を集め、どうしたらその要求に応えられるかを話し合った。
通常とは別に新しい製造ラインを作らなければならない。
またその仕事に必要な人員も確保する必要がある。
そういったことを考慮し、どのくらいのコストで仕事を請けることが出来るか、大まかな額を算出しておいた。

話が進み、大手メーカーの人たちが、知人の工場に見学に来ることになった。
あちらにしても、紹介されたが、果たして要求する品質の製品を作る能力のある会社なのか、見ておかなければならない。
知人の会社は、それなりの技術力と設備を持っており、見学に来たメーカーの人たちも、ここなら申し分ないと喜んでいたという。
何でもテレビ通販で販売するものだそうで、発注もけっこうな数が見込めるという。

その後、どのくらいの工賃を考えているのか、想定している金額をメーカーに出してもらうことになった。
知人としても、新しい分野の仕事で、相場がまったく分からなかったのだという。
とはいえ、恐らくこちらの希望通りにはいかないだろうから、多少は譲歩することも考えていた。
その日はそこまでで、金額は後から連絡する・・という事になった。

数日後、紹介してくれた商社の人から電話がかかってきた。
あちらの提示した金額を聞いて、呆れてしまったという。
加工に必要な材料はすべてこちら持ちで、仕様書通りに加工・製造して渡して、金額はほんの数百円だという。
知人の算出した金額の、10分の1以下の金額であった。

これでは人件費はおろか、材料費にもならない。
一体どういう計算をすればこの金額になるのか・・・
時給いくらの人達に作らせる気なのだろう。
よくこんな額を恥ずかしくも無く提示できるものだ・・と驚いてしまったという。

間に入った商社の人は、長年の付き合いで紹介してくれただけで、マージンを取る気はなかった。
しかしその額を聞いて、自分に恥をかかせないでほしいと憤慨し、自分からメーカーに話を断ってしまったという。

その後もそのメーカーの担当者は、下請けを探して数社回ったそうだが、さすがにすべて断られ、協力してくれる会社はみつかっていないという。
加工に必要な資材の額にも満たないのだから、どう計算しても、やればやるほど赤字になる仕事である。
逆にこんな合わない仕事を請けたら、ちゃんと原材料費を計算しているのか・・と疑われてしまう。

それにしても、大手のメーカーだと言うのに、まるで奴隷にでもやらせるような感覚である。
フェアトレードなんて、とても恥ずかしくて言えない・・と知人は憤慨していた。
これで胸に例のカラフルな輪っかのバッチでも付けていたら、笑ってしまうところだ。
もしかすると、時代遅れの古い体質から、もっとも抜け出せないでいるのは、大手のメーカーなのかもしれない。
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