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酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで――2」に感じた日英の教育格差

2025-06-21 22:44:39 | 読書
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 ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」(2021年、新潮文庫)を読了した。著者は福岡生まれで英国在住の保育士だ。19年に発表された第1弾は、渡英中に知り合ったアイルランド人との間にもうけた一人息子(ぼく)のスクールライフに迫っていたが、11章から成る本作は続編にあたる。家族が暮らすブライトンは映画「さらば青春の光」でモッズとロッカーズが抗争を繰り広げた観光地で、緑の党と労働党が支持を集めている。

 初等教育を地域トップのカトリック校で過ごしたぼくは開放的な〝元底辺校〟の中学を選んだ。第1弾で印象的だったのは授業で教えられた<エンパシー>の価値だった。<シンパシー>と近く、邦訳すればともに「共感」だが大きく異なる。著者は<シンパシーは自分と考えの近い人に共鳴する感情の動きで、エンパシーは、賛成できない意見を持っている人の立場を想像する「知的能力」>と語っていた。

 保育士をしながら作家として活動する著者は、リベラルかつアナーキーな立ち位置から、移民、環境、リサイクル、フェミニズム、緊縮財政、貧困、故国日本との違いなど、イングランドの空気や風潮をつぶさに分析していく。ユーモアを添えているのは労働者階級であることに誇りを抱いている配偶者(夫)だ。

 第8章<君たちは社会を信じられるか>は衝撃的だった。ぼくが授業のスピーチに選んだタイトル<社会を信じること>にちなんでいる。著者は夜中、元図書館近くのシャッターにヘイト的落書きをスプレーで書き殴っている3人組に出くわした。ティーンエージャーかと思ったが、正体は旧知の大人の男たちで、彼らは<図書館をホームレスのシェルターに用いる>という案に反対していた。

 右も左も高齢化している日本と同じではないかと思われるかもしれないが、事実は全く異なる。ブライトンでは実際の選挙に合わせて各党の担当者が学校を訪れて質疑応答し、模擬選挙が開催される。13歳の僕も投票し、両親と意見を交換する。自身の考えを持ち、他者と語り合うことが推奨されるのだ。政治に限ったことではなく、ジェンダーについてもノンバイナリーの教師を交えて議論する。音楽や芝居など表現力アップはカリキュラムに組み込まれ、起業への道を教える授業まである。

 独仏ほど顕著ではないが、英国でも排外主義的政党が力を増しつつある。だが、本書を読む限り、多様性、普遍性を志向し民主主義を維持する力が削がれることはないと感じた。教育の力は大きい。あす投開票の都議選の結果は果たして……。
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