酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

圓生、A級順位戦、河津桜~日本文化をしっとり楽しむ

2016-03-02 23:42:34 | カルチャー
 米大統領選はヒラリー・クリントンとトランプの対決になりそうだ。スパイク・リー、ロバート・ライシュ(ビル・クリントン政権時の労働長官)らがサンダース支持を表明したが、ヒラリーの壁は頑強だ。別稿(2月25日)で記した危惧が現実になった。

 「デモクラシーNOW!」で市民活動家が、サンダースの戦略に疑義を呈している。いわく<南部に来て革命や運動の話をし、北部リベラル向けの選挙運動をしても、拒絶反応を招く>(要旨)……。サウスカロライナ州の黒人地区で、サンダースはクリントンの6分の1の票しか獲得出来なかった。

 新自由主義、拝金主義の総本山で、サンダースは平等という刃を突き付け、ヒラリーの政策を左旋回させた。日本でも生活保護世帯が過去最多を更新するなど、格差と貧困が最大の問題になっている。俺が〝日本のサンダース〟と期待しているのが、反グローバリズム、反資本主義に立脚する山本太郎参院議員だ。昨年4月、統一地方選の応援演説で、若者の貧困、非正規雇用の増大、戦争法、徴兵制、原発再稼働、TPPをリンクさせ、論理的かつ情熱的に訴えていた。

 ようやく本題……。齢を重ねるにつれ、俺は情緒的になっている。先週末から今週にかけ、落語、将棋、桜と日本文化に浸った。

 TBSチャンネルでは週末、国立劇場で収録された高座を「落語研究会」の枠で放映しており、名人の至芸に触れることが出来る。この1年余り、1979年に亡くなった三遊亭圓生(享年79歳)を特集している。先日は召される数カ月前に上演された「お藤松五郎」に聞き惚れ、いや、見惚れた。当時との笑いのツボの違いも興味深かった。

 落語は寄席に行って見るものというのが落語通の声だ。表情、顔の向き、身ぶり手ぶり、扇子や手ぬぐいの使い方と、6歳で義太夫語りとして舞台に上がった圓生の芸は筋金入りだ。松五郎が勘違いの末、刃傷沙汰に及ぶ寸前でサゲる。近々オンエアされる「後家殺し」も悲劇的結末を迎える。圓生は男の嫉妬をテーマにした噺が好みだったのか。

 A級順位戦最終全5局が行われる日は「将棋界の一番長い日」と呼ばれ、ファンの目が集中するイベントだ。かつてNHK・BSプレミアムが中継していたが、囲碁・将棋チャンネルからニコニコ動画と放映体制の〝劣化〟に不満を覚える。日本文化といえば、かなり怪しい大相撲を昼から中継するNHKだが、囲碁や将棋のタイトル戦はラインアップから消えつつある。

 NHKといえば安倍機関の中枢だが、安倍首相が何より推進しているのはアメリカ化で、格差と貧困を進行させ、TPPで日本の伝統や文化が崩壊しても気にしない。小学校からの英語教育、人文系学部の縮小も俎上に載せられている。NHKが囲碁、将棋に冷淡なのも、首相の意向に沿っているからだろうか。

 A級順位戦を勝ち抜いた佐藤天彦8段が、羽生名人への挑戦権を獲得した。行方尚史8段との直接対決は棋譜中継を見る限り、息詰まる大熱戦だった。佐藤は王座戦で羽生を追い詰め、現在は棋王戦で渡辺(竜王)に挑戦中だ。旬の若手で今期のMVP候補だが、タイトルを取らないと誰かに取って代わられる。俊英ひしめく厳しい世界だ。

 28、29日は伊豆稲取に1泊し、河津を訪れた。海に面した宿は眺望も食事も素晴らしかったが、横に並ぶ3軒のホテルが廃業していた。伊豆を訪れる人が減っているのか、他に理由があるのかわからないが、寂れ感は拭えなかった。

 ライトアップされた夜桜を鑑賞した時点では感興を覚えなかったが、翌日昼に桜並木を歩いて河津桜の魅力に圧倒される。ピークを少し過ぎ、葉桜も多かったが、菜の花の黄が目にさやかで、互いを引き立てていた。川、山と野趣に富む光景と桜がマッチし、多くの観光客を引きつけるのだろう。平均年齢を下げていた中国からの若者の集団は、桜に何を感じたのだろう。

 俺は20代の頃、<日本的に価値を置くこと=右派>だったが、最近は<アメリカに隷従すること=右派>である。右派が信奉していた皇室は、今やリベラルのよりどころになっている。この40年に生じた捻れを実感する日々だ。
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