酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

希望病患者が夢想していること~参院選後に日本地図を描くのは誰?

2013-07-22 23:04:05 | 社会、政治
 <わたしたちは税金をはらって、エテ公や卑しい道化たちを飼うだけ飼って、飽食させ、なにもしつけなかったから、見てみろ、このざまだ。主と奴(つぶね)、主従が逆転して、いまやこちらが飼われているじゃないか>……。日本で今、起きていることを、辺見庸は「青い花」で穿っていた。

 参院選直前の世論調査の数字が、何とも奇妙だった。「アベノミクスの恩恵を受けていますか」という問いに、「いいえ」が過半数を占めている。多くの国民は憲法改正(改悪)を望まず、与党の原発政策に疑義を呈していた。<政策によって投票先を決める>が前提なら起こりえない自民圧勝劇が、なぜ現実になったのだろう。

 自民党が政権を奪回した昨暮れから、先進国で例を見ない政府とメディアの談合が公然と行われてきた。政権トップが大手メディア幹部と頻繁に会合を持っている。自民党が野に下った08年夏、〝A級戦犯〟と名指しされた安倍氏と麻生氏は、保守派の「週刊文春」にも辛辣な記事が掲載されるなど、メディアで悪役を演じてきた。

 その両者を2トップに頂く自民党は、万全の対策を用意していた。飯島内閣官房参与、世耕官房副長官らの仕切り(恫喝)で政権に取り込まれたメディアは、<政策>と<投票先>を巧みに分離する。ちなみに鳩山元首相は在任時、一度もメディア関係者と会わなかったという。

 選挙は一票を投じた側が勝つと気分がいい。昨夜も今夜も乾杯している人は多いはずだが、喉越しの良さは一瞬で、いずれ悪酔いと嘔吐に苦しむ日が来る。<権力が国民を縛る改憲>が現実になり、<倫理と良心を嘲笑う原発推進>、<99%が1%に尽くす奴隷制>にも弾みがつくだろう。エーリヒ・フロムではないが、日本人は<自由からの逃走>のスタート台に立ったようだ。

 投票率(52・61%)に国民の意識の低さを重ねるのは誤りだ。自民に効率的にブレーキを掛ける党が見当たらない以上、棄権も一つの選択である。民主党は5年前、〝自民と真逆のベクトル〟を掲げた。俺も閉塞感の払拭、社会の活性化に期待したが、民主党の変節はご覧の通りである。

 野田政権はいわばプレ安倍政権で、<民主党=リベラル>の構図(ポーズ)をぶち壊した。原発政策では首相を筆頭に、枝野、仙谷、海江田、細野ら各氏が再稼働に舵を切り、脱原発のデモ隊は「野田政権を倒せ」とシュプレヒコールを叫んだ。参院選で<脱原発>を謳うなんて二枚舌もいいところで、今回の参院選で最初に当確が出た民主党候補は、電力総連(原発推進派の牙城)の代表だった。

 <希望とは、人間が罹る最後のそして不治の病である>……。これは寺山修司が繰り返し引用したアンドレ・マルローの言葉だ。既成政党は馬脚を現している。躍進した共産党にしても、唯我独尊的な体質は変わらない。俺が今回の参院選で光明を見いだしたのは、山本太郎氏の当選とメディアから無視された中での緑の党の健闘だった。

 宇都宮健児氏(反貧困ネットワーク)が都知事選で獲得した約97万票の多くは、両者の近い関係もあり、山本氏に流れたはずだ。〝希望病〟を患う俺が切に願うのは脱原発、反貧困、護憲、反基地、反差別を闘う運動体が緩やかに合流し、理念と生活実感に根差した集団を結成することである。日本に今、求められているのは、斬新でインパクトのある地図を描けるオルガナイザーだ。
コメント (6)
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