酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ビッフィとリップス~原点とボーダレスを志向する二つのベクトル

2013-05-31 14:32:54 | 音楽
 慰安婦発言の余波は収まる気配がないが、公明党が反対に回ったため、橋下大阪市長に対する問責決議案は否決された。日本の政治家はあまりに国際感覚が欠落している。自民党の思惑通り<国民が権力者に従属する憲法>に改悪されたら、日本は世界からの敬意と信頼を失い、アメリカの51番目の州に転落するだろう。

 韓国からの抗議で「パニック・ステーション」のPVから旭日旗のカットを削除したミューズは、ソウルで開催されるサマーフェスでヘッドライナーを務める。アルバムはここ数作、総合チャートで1位になるなど、韓国におけるミューズの認知度は極めて高い。「アジアで最初にミューズを発見したのは自分たち」と自負するファンは、1月の来日時、韓国を素通りしたことにショックを受けたという。

 ミューズは光復節(8月15日)の2日後に出演する。PVについてメディアに質問されても、彼らは率直に「無知の罪」を認めるだろう。そのミューズは現在、欧州スタジアムツアー(全21公演)の真っただ中だ。一部の会場でサポートアクトに名を連ねているのがビッフィ・クライロである。

 今年1月、Youtubeでビッフィを発見する。初期ブランキー・ジェット・シティを彷彿させるいでたちとパワフルなライブに衝撃を受けた。6th「オポジッツ」(2枚組、13年)とライブアルバム「レヴォリューション」(10年、CD+DVD)を購入し、ビッフィに浸る日々が続いた。「オポジッツ」は良質のアルバムだが、聴くより見るロックの時代、「レヴォリューション」のDVD盤が今もヘビーローテーションになっている。

 上半身裸といえば、モリッシーとイギー・ポップが思い浮かぶ。キッズたちがステージに殺到し、大混乱のうちにジ・エンドが両者の共通点だ。ビッフィはといえば、鍛えている風もなく、アクションも控えめでだ。ナルシスティックとは程遠く、<哲学=ファンと同じ地平に立つ>で裸を晒しているのだろう。

 サイモン・ニールは足踏みするようにギターを弾き、切なげに歌う。ベーシストのジェイムズとドラマーのベンは双子らしいが、外見では気付かない。ルックスと音のミスマッチを覚えるのは俺だけではないだろう。装いはハードコアだが、奏でる音は陰影に富み、メランコリックだ。キングス・オブ・レオンをメロディアスにした感じで、歌詞は内省的だ。

 ロックの原点というべき蒼さとエキセントリズムで勝負するのがビッフィ・クライロなら、実験性と才気を前面に押し出すのがフレーミング・リップスだ。最新作「ザ・テラー」を一聴しリップスのベストと確信する。と同時に、そう感じる自分の危うさに覚えた。

 ウェイン・コインは本作を「遠い未来に作られた宗教音楽」と評していた。言い得て妙である。宗教団体に勧誘され、研修施設で瞑想するとしよう。BGMにピッタリなのが「ザ・テラー」で、開放感と閉塞感、浮揚感と下降感覚のアンビバレンツを内包している。キーになるリズムとメロディーが繰り返され、ウェインの囁きが自分の内側から聴こえているように錯覚する。本作を一言で表現すると、<幽体離脱に至る疑似トリップ>となる。

 タイトルの“TERROR”は絶対的な恐怖という意味だ。恐ろしく謎めいた本作は、バンドの想定通り全く売れなかった。時代はいずれリップスに追いつくだろう。ZEPP東京でのマジカルで祝祭的なライブに度肝を抜かれてから3年、未来の音楽の神髄をこの10月、赤坂BLITZで体感できる。

 最後に、安田記念の予想を。多士済々で目移りするが、スプリントや中距離からの参戦組ではなく、マイル仕様の馬から買うことにした。天気や馬体重など不確定要素は多いが、①カレンブラックヒル、⑦グランプリボス、⑯ダノンシャークのマイラーズC組、⑥グロリアスデイズ、⑪ヘレンスピリットの香港勢の中から軸馬を決めるつもりだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする