酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

億万長者はロックンロールを殺す?

2007-12-11 01:34:13 | 音楽
 勤め人時代の後輩M君(ミクシー名ジロー)は、マイミクの一人でもある。彼の先日の日記に、俺のかつての口癖が紹介されていた。即ち<ロックは最新のものを聴かなければ意味がない>……。ロックは時代の空気をビビッドに反映して進化してきたが、世紀を越えて雲行きが怪しくなってきた。

 ロックンロールは俺と同じ頃に産声を上げた。1950年代まではジャズが変革の担い手だったが、60年代に状況が一変する。ジョン・レノンが「ジャズは死んだ」と公言し、自らの言葉を実証してみせた。ビートルズは「サージェント・ペパーズ」(66年12月録音開始)から、「アビイ・ロード」(69年9月録音完了)まで、たった3年弱で7枚のアルバムを制作した。

 ロックは他の音楽ジャンル、文学、思想、文化を食い漁り、瞬く間に怪物に成長した。パンク、ニューウェーヴ、ヒップホップ、オルタナ、グランジ、ミクスチャーと立て続けに潮流が生起し、世界中で氾濫する洪水になった。

 10年前(97年)、2日目が台風で中止になった第1回フジロックには、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、フー・ファイターズ、グリーン・デイ、ベックなど錚々たる面々が結集した。上記バンドに加え、当時からヘッドライナー格の現役アーティストを挙げると、キュアー、U2、メタリカ、ナイン・インチ・ネイルズ、オアシス、レディオヘッド、ビョーク、マニック・ストリート・プリーチャーズといった辺りか。

 名前を挙げて愕然とした。十年一日の如くの番付に横綱、大関が居座り、新しいムーヴメントが起きた気配も感じない。ロックは既に博物館入りの危機に瀕しているのではないか。音楽誌で最近目立つのは<名盤100選>みたいな企画だ。ロックはクラシックやジャズに続き、既に考古学の対象かもしれない。

 停滞の最大の理由は、ハイパー資本主義に取り込まれたことだ。トップバンドは膨大な資金を投じて<売れる音>を作り、ツアーやビッグフェスのスケジュールを織り込んだ上でアルバムを発表する。<レーベル=プロモーター=代理店=メディア>が相互補完するシステムに従属し、ロックは魂を失いつつある。

 21世紀に名を上げたコールドプレイ、キラーズ、アークティック・モンキーズ、フランツ・フェルディナンド、ストロークスらは、メディアが持てはやすほど新鮮とは思わない。その中で俺がミューズに肩入れするのは、内包させた矛盾を変化の糧にするという方法論を感じるからである。

 ロックに進化をもたらすものは何か。あるいはロックの次に来るべきものは何か……。フジロック'07の映像(WOWOW)を見て閃いた。フェルミン・ムグルザ、グルーヴ・アルマダ、ジュノ・リアクターらは、反グローバリズムに立脚し、民族音楽とデジタルとの融合を追求するユニットだ。ジジイの俺に追いかける元気はないが、彼らの試みが浸透し、ロックを資本主義から解放する日を心待ちにしている。

 夢が現実になった頃、俺はとっくに地獄に落ち、悪行と無為の罰を受けているに違いない。

コメント (6)
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