酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

政治という名のショー~米中間選挙に思うこと

2006-11-10 00:29:40 | 社会、政治
 「表現者としてのプロレスラー」が前々稿のテーマだったが、政治家もパフォーマンスを競う時代になってきた。佐高信氏の言葉を借りれば、<メディアのペット化>が背景にある。小泉前首相が憲法前文を根拠にイラク派兵を打ち出した時、牙を剥いたメディアは皆無だった。政治部記者を「糞バエ」を断じたのは辺見庸氏だが、<記者クラブ>の弊害を説く識者は少なくない。

 さて、本題。ここ数日、アメリカ中間選挙の動向に注目していた。メディア(主にCNN)の現政権への論調はかなり厳しく、どん詰まりのイラク、雇用と医療保険、格差拡大が取り上げられていた。共和党大物議員のセックススキャンダルや汚職が明るみに出たことも、民主党圧勝の流れに拍車を掛けた。

 メディアの姿勢を含め、民主主義は十分機能しているかに見えるアメリカだが、根本的な疑問が消えることはない。どうして選択肢が、民主と共和以外にないのだろう。

 先日(5日)衛星第1で放映されたドキュメンタリーは、アメリカの格差拡大の実態を抉り出していた。経験豊富な警備員や看護師でも、時給は10~11㌦程度。3000万人の労働者は給料日直前、余剰金ゼロの綱渡り生活を強いられている。貧困層(4人家族なら年収200万円以下)はブッシュ大統領就任後、30%以上増加したという統計もある。好景気、株価上昇が庶民の生活と結びつかないのは、日本と全く同じ状況だ。

 イギリスでは労働党、フランスでは社会党、ドイツでは社会民主党、イタリアでは左翼民主党が中下流層の支持を得て、政権を争っている。北中欧、オセアニアでも社民系は政治の主流だ。格差社会アメリカで社民政党が認知されたら、多くの支持を集めることは間違いないが、2大政党が前提の制度上、起こりえない夢物語である。

 保守派から「容共的」と批判されたルーズベルト大統領(任期=1933~45年)でさえ、労働運動を厳しく弾圧した。マッカーシズムは特別とはいえ、平等、公平を掲げる者が有形無形の干渉を受けることは、マイケル・ムーアの作品にも描かれている。アメリカはまさしく<資本主義独裁国家>で、決まった枠組み内で展開される政治ショーは、矛盾を隠す目くらましといえるだろう。

 郵政造反組の復党が画策されるなど、日本でも政治ショーの幕が上がっている。来夏参院選は天下分け目の戦いといわれるが、<自民党+創価学会連合軍>に民主党が勝つのは極めて難しい。安倍政権は議席減を最低限にとどめて生き延びるというのが、現時点の幾分悲観的な予想だ。

 格差拡大が社会主義を育むことは、中南米の左翼ドミノを見るまでもなく自明の理だ。下流社会の住民としては、民主党が社民にシフトすることを切に願うが、小沢代表が左に舵を切ることは期待薄だ。「社会主義は時代遅れ」と主張し、<保守2党体制>を強力に推進したのが他ならぬ小沢氏だったからである。来夏の参院選は単なる「政治ショー」ではなく、ここ十数年の政治の流れを総括する「大河ドラマ」といえるだろう。


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