弁理士の日々

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感染者数増減の推移 専門家会議議事録

2020-05-30 10:38:07 | 歴史・社会
感染ピーク、緊急事態宣言の前だった 専門家会議が評価 5/29(金) 朝日新聞
『国内の新型コロナウイルスの感染拡大について、政府の専門家会議は29日、これまでの国の対策への評価を公表した。緊急事態宣言は感染の抑制に貢献したとする一方、感染のピークは4月1日ごろで、宣言前だったことも明らかにした。
専門家会議はこの日まとめた提言で、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、クラスターの連鎖による感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。3密(密閉、密集、密接)の条件がそろうと感染者が多く発生していることを指摘し、対策を市民に訴えることができたとした。
4月7日に最初に出され、その後対象が全国に広がった緊急事態宣言については、人々の接触頻度が低いまま保たれ、移動も抑えられたため、地方への感染拡大に歯止めがかけられた、とした。
実際にいつ感染したのかその時点では把握できない。新規感染者の報告から逆算して時期を推定したところ、ピークは4月1日ごろで、緊急事態宣言の前に流行は収まり始めていた。休業要請や営業自粛が都市部で早くから行われていた効果や、3密対策を含めた市民の行動の変化がある程度起きていた、と理由を推察した。
ただ会議のメンバーからは「結果的に宣言のタイミングは遅かった」との声もある。』
全国の感染者の推移

朝日新聞(紙)では、5/30朝刊の一面トップで伝えています。しかしこのデータ、すでに5/1に公表済みのデータではないですか。

私が5/7に、「専門家会議の「状況分析・提言」」で述べたように、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」が5月初めに公表されました。
2020年5月1日版
2020年5月4日版
私は5/7ブログ記事の中で、
『5月1日版には、全国と東京都の例が示され、東京都については、縦軸を陽性者数とし、横軸を「確定日」としたもの(図2の左図)、横軸を「発症日」としたもの(図2の右図)、さらには横軸を「推定感染時刻」としたもの(図4)が掲載されています。
・・・
図4は、非常にきれいな図であり、感染時が3/10から3/25にかけて急速に陽性者数が増大し、(そこで下降に転じ)それ以降4/12に至るまで、急速に陽性者数が減少しています。・・・
3月25日の東京都知事による外出自粛の呼びかけで即座に感染が低減しているかのようです。4月7日の緊急事態宣言発出の時点では、感染者数はピーク時(3月25日頃)の半分以下となっています。・・・』
と論じました。
今回報道されている全国のデータは、同じ2020年5月1日版の3ページに掲載された図3そのもの(4/14以降のデータを追加したもの)です。
2020年5月1日版図3ですでに、
「3月中旬から3月いっぱい、全国で新規感染者数が急拡大した」
「3月末に拡大が減少に転じ、それ以降、全国で新規感染者数が急減少した」
点が明らかです。
5月も末になって、何を今更、といった感想を持ちます。

ところで専門家会議の今回評価において、
「クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、クラスターの連鎖による感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。」
と評価しています。ちょっと待ってください。2月以降、クラスター対策は必死に行っていたはずです。それにもかかわらず、3月中旬から下旬にかけて新規感染者数が急増した、という事実がデータで示されているではないですか。

3月末に、新規感染者数はなぜ急拡大から急減少へと転換したのでしょうか。私には、「国民が生活を変化させたからだ」しか思い当たりません。3月3連休の後、小池都知事が態度を豹変させて危機を煽り、志村けんさんの死亡が報じられました。日々の新規陽性者確認数は、2020年5月1日版の2ページに掲載された図1にあるように、3月下旬から急拡大を示し始めました。「今はニューヨークの2週間前だ」と叫ばれたのもこの時期でしょう。人々はこれら情報に基づき、自発的に外出自粛に本格的に取り組み始めた、その効果が新規感染者数の急減速につながりました。
横軸の日付を「確定日」とした図1の急拡大開始時期が、横軸の日付を「感染日」とした図3の急減速開始時期と一致している、というのは、興味深い発見です。

私は、緊急事態宣言を解除した現時点は、3月初めの時期と同じ状況であると理解しています。抗体保持者比率が増えているわけではなく、対策を取らなかったら、すぐに3月中旬から下旬にかけての新規感染者数急増が起こるでしょう。すでに起きているかもしれません。新規陽性者確認数が上昇に転じていますから。

専門家会議の議事録なぜ作らない? メンバーからも異論 5/29(金) 朝日新聞
『新型コロナウイルス感染症への対応を検討する政府の専門家会議の議事録が残されていないことに、批判が集まっている。
・・・
菅義偉官房長官は29日の閣議後会見で、専門家会議は、公文書管理のガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当すると主張。発言者が特定されない「議事要旨」を作成、公表していることから「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」とし、議事録は残さなくても問題はないとの認識を示した。』

しかし同じ記事の中で、
『加藤勝信厚生労働相も3月2日の参院予算委員会で、専門家会議について「1~3回目は議事概要になるが、4回目以降は速記を入れて、一言一句残す。専門家の了解の範囲で、当面は公表させて頂く」と答弁していた。』
と紹介されています。この答弁がある限り、管長官の言い訳は全く意味を持たないではないですか。「加藤厚労大臣は、3/2に発言した約束に基づいて、4回目以降の議事録を示しなさい」というだけで十分です。
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