弁理士の日々

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郵政民営化見直しはどこへ行く

2009-09-18 20:58:38 | 歴史・社会
民主党新政権は、「郵政民営化を見直す」との政策を挙げていますが、どのように見直すのか、その具体的な対策がどうもよくわかりません。
・現在進めている民営化の方向で、具体的にどのような問題が生じているのか。
・その問題を解決するために、どのような方策を考えているのか。

今回、見えてきました。
具体的な方針が見えてきたのではなく、“民主党連立政権内に種々の考え方が対立し、方針が固まっていない。”ということが見えてきたのです。

<鳩山内閣>原口総務相VS亀井担当相 郵政巡り、もう不協和音
9月18日15時41分配信 毎日新聞
『日本郵政の経営形態の見直しを巡り、亀井静香金融・郵政担当相が18日の閣議後会見で、原口一博総務相が17日夜に出演したテレビ番組で示した見直し案に対し「担当大臣は私。あの方の個人的な意見だ」と不満を漏らす一幕があった。原口総務相はこれまで「新しい郵政事業の改革法案を(亀井担当相と)協力しながら出す」と話してきたが、連立政権発足3日目にして早くも不協和音が響いた。
 原口総務相は17日夜のテレビ朝日の報道番組で、郵便局の全国網を維持するため「持ち株会社と郵便局会社、郵便事業会社を一緒にする」との見直し案を明らかにした。
しかし、国民新党内では、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の2社も含めて一つの会社に統合する考えも根強く、亀井担当相は「(郵政民営化見直しは、原口総務相の)主管事業ではなく、絵を描く立場でもない。もちろん相談はするが、責任は私にある。そういう意味では白紙」と反発。一方、原口総務相は18日の閣議後会見で「一つの例です」と繰り返し、火消しに追われた。』

ゆうちょ銀行とかんぽ生命の2社をそれぞれの会社として存続させるのか、それともこれら2社についても他の会社と一緒に合体させてしまうのか、という大きなポイントでまだ方針が振れているのですね。

少なくともゆうちょ銀行については民営化が必須で、それも郵便貯金のみで単独の会社でなければならない、という点を高橋洋一氏が解説しています(こちら)。

90年代後半の財投改革で、郵便貯金は国から離されてすでに自主運用になっていました。自主運用といいながら、郵政公社のままでは、原則として金利が一番安い国債しか運用できません。公社ではリスクを取れないからです。しかし、国債以外の運用手段を与えて、リスクを多少採らせないと経営は成り立たないわけで、自主運用となると民営化するしか道がなかったのです。

郵政民営化の4分社化のアイデアも高橋氏によるものです。4分社化の方針はロジカルに考えた末に出てきた結論です。郵便、郵貯、簡保と業務別にまず分けます。金融の場合、地域分割するとスケールデメリットが生じるので採用しません。「特に郵貯は資産運用能力のない『不完全金融機関』ですから、ほんの少しでも制約があると、経営が危うくなります。」
一方、全国に25000もある郵便局については、「スコープメリット」という考え方を応用しました。これは、小売部門はまとめた方がメリットがあるという経済分析です。これによると、郵便、保険、郵貯の窓口業務は一つの会社にまとめ、郵便局会社を作った方が良いということになります。その結果、4分社化という結論が出ました。

高橋洋一氏は、現在の郵政民営化の4分社化案をこのように説明しています。
それに対し民主党政権は、4分社化のどの部分が原因でどのような問題が発生しているというのか、その点をロジカルに説明してもらう必要があります。

上の高橋氏の考え方によると、ゆうちょ銀行を郵便などと合体して一つの会社にするなど、もってのほかということになります。「郵便の赤字を、銀行の黒字で補填する」などと考えているのだとしたら、郵貯は郵便と共倒れになり、そのツケは結局国民が払わされることになるでしょう。

それに、ゆうちょ銀行と郵便会社が合体して一つの会社となったら、おそらくゆうちょ銀行には銀行法が適用されなくなります。世界最大規模の銀行であるゆうちょ銀行を、そのようなかたわな金融機関にしておくのは、弊害のみが大きくなるというべきでしょうか。

次に、ゆうちょ銀行が独立の会社であることは維持されるとしても、株式を民間に放出せず、国のみが所有、あるいは国が50%以上の筆頭株主となるということはどうでしょうか。
私はそれを考えると、すぐに“新銀行東京”を思い浮かべます。
新銀行東京は、独立した株式会社であり、委員会設置会社です。しかしその新銀行東京が、企業統治が全く機能せず、代表執行役の独走を許して膨大な赤字を垂れ流したことは記憶に新しいです。
この間、執行役の業務を監視すべき取締役会は、茶話会に堕していました。
株主の大多数が東京都であり、民の統治が効いていなかった、というべきでしょう。
国有の金融機関では、民の統治と官の統治がいずれも中途半端になり、統治の真空地帯が生まれ、でたらめな経営に陥る危険性が高くなるといえます。

亀井静香大臣は金融担当大臣でもあるわけです。ゆうちょ銀行をどのような金融機関として認めるのか、よくよく考慮して欲しいものです。


ところで亀井静香大臣は、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済に一定の猶予期間(モラトリアム)を設ける制度の導入について、15日に語りました。
“こりゃ大変なことになった。明日は銀行株が軒並み値下がりするだろう”と心配になりました。案の定、銀行株が下げ、それにつられてほかの銘柄も下げているようです。

亀井大臣がこれから何をしでかすか、目が離せません。
鳩山総理は、亀井大臣の暴走を止められるのでしょうか。
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