弁理士の日々

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トムラウシ山での大惨事

2009-07-18 21:19:38 | 歴史・社会
大雪山系遭難:前例ない10人死亡 夏の大雪山系で惨事 /北海道
7月18日11時0分配信 毎日新聞
「◇日程やガイドなど慎重に捜査--道警
 大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で10人が亡くなった山岳遭難事故は、夏山では前例のない惨事となった。過去の山岳遭難を巡っては、ガイドが業務上過失致死罪に問われて有罪になったケースもあり、道警はツアーの日程が過密でなかったか、ガイドのツアー客引率が適切だったか--など慎重に調べる。」

団体である程度の山に登る場合、大事なことは「リーダーがきちんと決まっているか」ということです。
「天候の急変をどう捉えるか」「進むか退くか」この決断に、リーダーが責任と権限を有していることが大事です。リーダーが決めたら、メンバーはその決断に従わなくてはなりません。
リーダーがきちんと決まっていなかったり、メンバーがリーダーの決定に従わないようだと、惨事は起こりえます。

私も社会人になってから、北アルプス界隈の登山を何回か企画し、初心者を連れて登った経験があるので、このあたりの事情についてはとても気になります。

今回の事故について、報道を注視しているのですが、詳しい状況は全くわからないというのが実情です。
旅行社が企画し、全国から集まった客を連れてのツアー登山ですから、いろいろと難しい事情があり得ます。

18人のメンバーで「ガイド」が3人ついていたということですが、この「ガイド」の実態が不明確です。札幌在住者が一人、後の二人は本州在住のようですから、この山系の専門家ではなさそうです。
又、「ガイド」といっても、旅行社の添乗員に毛が生えた程度の技量なのか、それとも「プロの登山ガイド」と呼べるようなベテランだったのか、わかりません。
報道では「リーダー」「リーダー格のガイド」という言葉が出てきません。誰かをリーダーと決めていたのかいなかったのか。3人のガイドが同列の単なる引率者であったら、「あの人の決定には従おう」という共通認識は、客の間に生まれていなかったでしょう。ガイド達も、客の「空気」でずるずると行動した可能性があります。

客の中に声が大きくて強引な人がいたら、引率者はその声に引きずられる危険が大きくなります。

ヨーロッパアルプスであれば、職業ガイドの地位が確立しています。世界ではじめて制覇された八千メートル級の山はヒマラヤのアンナプルナです。この山を制覇したフランス隊を構成していたのは、著名な山岳ガイドであるモーリス・エルゾーグ、ガストン・レビファ、リオネル・テレイなどでした。

日本にも山岳ガイドは存在します。30年以上前、日本の職業ガイド団体が主催する冬山教室に参加したことがあります。そのときの印象では、日本では山岳ガイドが職業として成立するか、きわめて危うい状況でした。
いずれにしろ、今回ツアーを引率した「ガイド」が、プロを自任する「ガイド」だったのか、それとも単なる添乗員だったのかは不明なままです。

旅行社の社長の記者会見映像では、記者の誰かが「行動マニュアルは無かったのか」と質問したらしい応答がありました。
登山でのリーダーの決断について、「マニュアルに準じて決定」などできるはずがありません。経験・知識と責任感と決断力で、状況に応じて決心するだけです。
ここでも「マニュアルがなければ糾弾」というスタイルが報道陣にあるのでしょうか。
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