弁理士の日々

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民主党政権の公務員制度改革

2009-10-06 20:47:24 | 歴史・社会
民主党政権の政策には、まだかけ声だけで具体的な施策がよくわからない政策があります。
「天下り禁止」を中心とする公務員制度改革もその一つです。

公務員の天下りは、天下りに付随して「お土産」としての補助金が天下り先に交付されることが問題なのであって、「お土産」さえなければ、公務員といえども自由に転職してもらって良いはずです。

また、公務員制度の問題は、「天下り」に限りません。高級官僚の人事権は、大臣が握っているといっても実質的には次官が握っています。高橋洋一「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」(4)でも紹介したように、竹中さんが総務大臣になったときも、事務次官がもってくる人事リストを何度つきかえしても、同じ幹部候補のメンバーを担当だけ入れ替えてもってくるから、なかなか手こずったそうです。

安倍政権のときに渡辺行革相と高橋洋一氏が一緒に取り組んだ『国家公務員制度改革』は、以下の5本柱でした(上記)。
1.年功序列の廃止
2.天下りの斡旋禁止
3.キャリア制度の廃止
4.内閣人事庁の創設
5.国会議員と公務員の接触制限

《年功序列の廃止》
現在の省庁では、役人の「年次主義」が極めて強固らしいです。おそらく、入省年次が下の局長は、年次が上の自分の部下に命令できないぐらいに強固ではないかと思います。ですから、年功序列を廃止しない限り、天下りを禁止して課長補佐も課長も定年まで勤めるとすると、省内の指揮命令が崩れてしまうでしょう。局長職を後任にバトンタッチして局長でなくなった役人が、後任の局長の部下になり得るか、という点も同じです。
また給与についても、次官と同年時の役人が例えば課長止まりだったとして、その課長に次官と同じ給与を支払うのはバカげていますし、税金のムダ遣いです。

《天下りの斡旋禁止》
民間企業でも、年齢構成をある程度のピラミッド型にすることは必要であり、出向や転籍が日常的に行われています。役人についてはこれを一切廃止し、すべての役人が原則定年まで役所勤め、というのは効率が悪すぎます。
ここは、お土産を伴わない再就職をスムーズに行う人事制度は継続すべきです。一切の天下りを廃止すべきではありません。
渡辺行革における人材バンク(官民人材交流センター)はそのような趣旨で設立されたものです。私は、この組織をうまく運用すれば目的を達成すると思うのですが、民主党政権はこの組織を廃止してしまうのですね。

民主党政権は、天下りを原則禁止、とした上で、一体どのような公務員制度を描いているのでしょうか。

《内閣人事庁の創設》
渡辺行革でめざしていた内閣人事庁がもしできていれば、大臣が幹部を決めるときには、今までの事務次官がつくったリストに加えて、内閣人事庁が推薦するリストも参照できるようになったはずでした。官僚にとっては、痛いところを突かれたと言ったところでしょう。自分たちが一手に握っていた人事権が弱まり、外部から人材が流入してくれば、営々と築き上げた昇進ピラミッドがぶっ壊れるに決まっている。

民主党政権は、官僚の人事権を大臣のものとするために、一体どのような人事制度を構築しようとしているのでしょうか。

《国会議員と公務員の接触制限》
国会議員と公務員の接触制限については、大臣の意向を無視して官僚が勝手に族議員と結託する弊害を防ぐことが目的でした。民主党政権でも、少なくとも“事務次官の記者会見廃止”という点では同じ趣旨で動いています。それ以外でどのような施策を行おうとしているのか。


新聞報道で見えている民主党の公務員制度改革では、公務員全体の怒りを買い、公務員全体を敵に回すのではないかとハラハラします。公務員全体を敵に回したら、行政は空転状態に陥るでしょう。
何とか、“少なくとも良質な公務員を味方に付ける”ような公務員制度改革を実現して欲しいものです。
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