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キオクシアとWDの半導体生産を国が支援

2022-07-27 16:22:25 | 歴史・社会
政府、キオクシアとWDの半導体生産支援 上限929億円
7/26(火) ロイター
『萩生田光一経産相は26日の閣議後会見で、5G促進法に基づき、キオクシア(旧東芝メモリ)とキオクシアと米半導体大手ウエスタンデジタル(WD) の合弁会社から共同で申請があった先端半導体の生産設備整備計画を認定したと発表した。
最大で約929億円の助成金を交付する。
萩生田光一経産相が26日の閣議後会見で「日本におけるメモリー先端半導体の安定的な生産に資するものと判断した」と説明。足元の半導体供給網(サプライチェーン)強靭化や半導体産業の発展が期待できるとし「半導体に関する日米連携の強化にも資する」との見方を示した。

萩生田経産相は26日から米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合に出席、29日に米国・ワシントンD.C.で日米経済政策協議委員会(経済版2+2)に参加する。
IPEFは、バイデン米大統領が5月の来日時に発足を表明。・・・26日の初会合には日米のほか、オーストラリアやインド、ニュージーランドなど参加表明した全14カ国が出席する。今回の会議では、貿易やサプライチェーン(供給網)、クリーンエネルギー、インフラ、税・汚職対策などが議題となる。』

最近において、日本国内での半導体生産に対する政府の支援は、これが2件目です。
1件目は、TSMCが熊本に20nmクラスの半導体工場を新設し、それに日本政府が4千億円の補助をする、というものです。

日本国内立地の半導体工場(台湾、米国企業を含む)、あるいは日本の半導体産業(海外立地を含む)を、国はどのように援助すべきか、という点について、日本の半導体産業 2022-02-26で話題にしました。
半導体を4つに分類するとしたら以下のようでしょうか。
1.DRAMメモリー
2.フラッシュメモリー
3.ロジック
4.撮像素子
ロジックは、ロジック汎用品(線幅20nm以下程度)とロジック先端品(4nm以下)に分けられます。TSMC熊本は汎用品であり、TSMC台湾、および新規米国工場は先端品です。

日本政府は、まずはTSMCのロジック汎用品工場を日本の熊本に新設する計画に補助を出しました。
「日本が得意とする半導体装置産業、半導体材料産業の育成に寄与する」とアナウンスされましたが、これは間違いです。TSMCの新設工場が日本国内だろうが台湾だろうが、日本の半導体装置産業、半導体材料産業からの出荷先が台湾か日本か、という違いだけであり、育成の程度に差は出ないはずです。
熊本の新設工場が先端品でない点について。現時点での主要な消費先は汎用品です。台湾が中国に攻め込まれる経済安保問題を考えれば、主要な用途の製品を日本で作れるようにすることには意味があり、私はそれだけだと思っています。

そして、日本政府からの支援の2例目が、キオクシアと米半導体大手ウエスタンデジタル(WD) の合弁会社による先端半導体(フラッシュメモリー)の生産設備整備計画になりました。
これはこれでよろしいのですが、その他の分野はどうなるでしょうか。

DRAMメモリーについては、マイクロンジャパン(旧エルピーダメモリー)が、米国資本の日本国内工場です。キオクシアとWDに支援をするのなら、マイクロンジャパン(旧エルピーダメモリー)にも支援が欲しいところです。
本当なら、エルピーダが破綻する前に支援して欲しかったです。

ロジックについて、日本にはルネサスエレクトロニクス(以下「ルネサス」)という会社があります。ルネサスは、自動車用のロジック半導体では世界有数のシェアを有しており、重要な会社だと思います。しかし、買い主である自動車メーカーに買いたたかれ、収益性が悪かったようです。その危機を乗り切ったのは、ものすごいリストラを行うと共に、「40nmよりも微細の半導体は自前では開発・製造しない」という「ファブレス」の選択によるものでした。そして生産は台湾のTSMCに委託していました。
ロジック半導体について、日本の産業をどのように育成するのか、その点についての明確な見識が必要と考えます。国内産業であるルネサスについて、今のように40nm以下が製造できない会社のままでいいのか、それとももっと微細なものを生産できる技術を保有させるのか。保有させないとしたら、TSMCの1社に全面的によりかかるままとなります。
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