弁理士の日々

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知床遊覧船の無線局

2022-06-26 09:51:10 | 歴史・社会
「知床遊覧船」業務用無線の免許なし 電波法違反で告発
06月21日 NHK
『知床半島沖で観光船が沈没した事故をめぐり、運航会社「知床遊覧船」が必要な業務用無線の免許を取っていなかったことがわかりました。このため総務省は、電波法違反の疑いで会社と社長を21日付けで海上保安署に告発しました。
総務省によりますと、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に行った聞き取りなどの結果、本来必要な業務用無線の免許を取っていなかったことがわかりました。
そして会社は業務用無線ではなく免許を取らずにアマチュア無線を使っていたということです。
このため総務省は21日付けで北海道総合通信局を通じて会社と桂田社長を電波法違反の疑いで管轄する網走海上保安署に告発しました。
またこの無線局とは別に会社が免許を受けたうえで保有する8つの簡易無線局について総務省は運用を停止する行政処分を今月24日付けで出すことにしています。』

記事中には、3種類の無線局が記載されています。

《業務用無線》
よくわからないのですが、「国際VHF」のことかもしれません。知床遊覧船の通信手段 2022-04-30にも書いたように、超短波を用いた無線通信で、船上に船舶局、会社に海岸局を設置します。船舶局の運用には3級海上特殊無線技士の資格が必要で、海岸局の運用には2級海上特殊無線技士の資格が必要です。
ただし、国際VHFが、「遊覧船業務を行う上で必要な業務用無線の免許」であったとの情報を、私は持ち合わせていません。

《アマチュア無線》
アマチュア無線は、アマチュア無線従事者免許を有する者が、登録によりアマチュア無線局を開局して運営するものです。たとえ免許を持っていても、業務用に使用することは違法です。
知床観光船は、免許も持たずにアマチュア無線の設備を設置し、違法に業務用に用いていた、ということですね。

《簡易無線局》
これは今回はじめて知りました。総務省のホームページで調べて見ると、「簡易無線局とは、無線従事者資格が不要で、簡易(人命や財産に影響する通信は除く。)な業務又は個人的用務を目的とした無線局です。」「登録の対象となる簡易無線局を運用する場合には登録の手続が必要です。」とあります。
知床観光船は8つの簡易無線局を登録していたところ、今回の事故を受けての行政処分で、運用停止処分を受けたのですね。

《衛星電話》
今回の記事には、衛星電話が登場しません。現在では、漁船をはじめとして、衛星電話(イリジウム)の使用が常識になっているようです。知床遊覧船でも、衛星電話を所有していたところ、事故当時は故障で使用不能であった、との報道でした。
「必要な業務用無線」において、衛星電話がどのような位置づけなのか、今回の総務省の処分になぜ登場しないのか、わかりません。

以前、知床遊覧船の通信手段 2022-04-30で以下の記事を紹介しました。
航路の大半が通信圏外の携帯 船長が通信手段と申請 観光船の事故前検査で 4/30(土) 北海道新聞
『海事局によると、日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が20日、船舶安全法に基づく年1回の中間検査を行った際、豊田船長が通信手段を衛星電話から携帯電話に変更すると申請した。JCI側が「海上でつながるか」と確認すると、船長は「つながる」と答え、その場で変更を認めた。
船舶安全法は20トン未満の小型船舶の通信手段として携帯電話の使用を認めている。ただ、通信事業者の公式サイトによると、豊田船長が申請した携帯は航路の大半がエリア外だった。
これとは別にカズワンを運航する知床遊覧船は海上運送法に基づき、緊急時の連絡手段として衛星電話と無線を届け出ていた。だが関係者によると、衛星電話は少なくとも1年前から故障し、無線も数カ月前から同社事務所のアンテナが壊れ、自社では受信不能だった。』
この記事によると、海上運送法に基づく届け出では、「衛星電話と無線」を届けています。ここでいう「無線」は何でしょうか。「本来の業務用無線」(おそらく国際VHF)は免許を取得していないので、届け出で用いることはできません。アマチュア無線も違法ですから不可です。そうすると、海上運送法で届け出た「無線」は、簡易無線局だったのでしょうか。
壊れていた事務所のアンテナは、アマチュア無線用だったのか簡易無線局用だったのか、そこが不明です。
少なくともカズワンは、船内にアマチュア無線機器を備えていました。事故当時、事務所同士が隣接する同業者とカズワンとの間で、アマチュア無線で連絡を取れていることが明らかです。

断片的な情報はボツボツと出てくるものの、なかなか全体像をつかむことができません。
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