<3833> 写俳二百句(149) 子蟷螂(こかまきり)
子蟷螂自力にありて花の上
木の枝に産みつけられた蟷螂の卵。茶褐色の卵嚢が越冬して次の年の夏になるとその卵嚢がほぐれ、幼虫が一斉に孵化し、親とそっくりの子蟷螂が次々に生まれ、枝に連なるのを見ることがある。
その子蟷螂は日が経つにつれて散って行き、中には小鳥の餌にされたりするものもあろう。強運の持ち主だけが多分生き延びる。生まれ立てから親そっくりの不思議。ところが、親の助けや教えなど一切なく、生れ出たその瞬間から自力をもって生きて行かねばならぬ厳しさにある。
月日が過ぎ、散って行った子蟷螂はどのように食を繋いで来たのか、梅雨明けのころ、大きく育った姿を見かけることがある。完全には大人になり切っていない、どこかまだ幼さが残っている。この間は庭のアガパンサスの花のうてなにいるところを目撃した。花にやって来る虫を待っているのに違いない。
前脚の二つ揃った大きな鎌はもう十分に機能を発揮できるように思える。子蟷螂はゆっくりと位置を変え、獲物を待つ態勢になった。食なくしては生きて行けない。子蟷螂の自力とその辛抱が思われた。 写真はアガパンサスの花に見える子蟷螂。