大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年04月25日 | 創作

<3388> 写俳百句 (52)  ツボスミレ

                つぼすみれ控へ目な花庭の隅

                     

 新緑の候。ツツジとカキツバタを目的に天理市の長岳寺に出かけ、その後、近くの山の辺の道を歩いた。ツツジもカキツバタも少し早い感じだったが、よく知られるオオデマリは花盛りだった。本堂に立ち寄り、本堂正面の池の周りを歩くと、スミレの中では花期の遅いニョイスミレのツボスミレが片隅の祠の周辺に見られ、白い控え目な花を咲かせていた。

 ツボスミレは華やかな表舞台のツツジやカキツバタとその姿を異にする境内地の隅っこの花で、気づかない参拝者も多いと思うが、自然を取り込んだこの時期の野生の花としてその存在が思われたことではあった。で、今回はこのツボスミレに登場を願った。 写真は境内の片隅に咲くニョイスミレのツボスミレ(天理市の長岳寺)。

 因みに、『万葉集』の二首に登場のツボスミレ(都保須美礼)はこのニョイスミレのツボスミレではなく、淡紫色の花を咲かせるタチツボスミレ(立坪菫)であると植物学者の牧野富太郎は言っている。


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2021年04月24日 | 写詩・写歌・写俳

<3387>  余聞 余話 「新型コロナウイルスの感染拡大に思う」

     何が正何が負なのかただしかし命あっての物種といふ

 猛威が止められない新型コロナウイルス感染症について、発生以来の感染者(陽性者)数の日々の増減を表したグラフの変化からその波を読み、三月十八日の本ブログで予想した通り、ここに至って感染拡大が起きて来た。専門家は第四波と認め、危機的状況にあるとして、国は東京、大阪、兵庫、京都の四都府県に対し、二十五日(日)よりゴールデンウイーク明けの五月十一日(火)まで人流を止めて感染を抑える狙いによる緊急事態宣言を発令した。

   感染状況の波は第一波から徐々に、しかし、確実に高く大きくなっている。そして、グラフは季節に関わりなく波の状況があり、感染者を増やしている特徴を示している。これに加え変異株への変化が見られ、脅威になっているという。このグラフからなお予測するに、いままで通りの対策手法に止まれば、波のピークはより高く、より大きくなって第五波がやって来るということになる。グラフはこのように想定してかかった方がよいと見て取れる。その意味でも、今回の緊急事態宣言はよいと思えるが、これは一時凌ぎであって、宣言解除後が問題になると思われる。

   この度の第四波では、強力になった変異ウイルスが強調されているが、全く新しウイルスが出現しているわけではく、従来のウイルスが変異したもの。変異して弱くなったのではなく、強くなり、感染力を増したというまでのことで、直接、間接を問わず、人から人へ感染することに変わりはない。強くなろうが、弱くなろうが、この基本的な認識において今一度このウイルスへの対処を考えた方がよい。

                               

 この問題はウイルス学もさることながら社会学的考察が必要であると言ってもよかろうと思う。人と人が幾ら大勢集まって接触しても、そこにウイルスが存在しなければ、感染はなく、問題は起きない。このことを踏まえて考えれば、見えないウイルスの見える化に努めること、これが肝心だということになる。これには検査を増やし、なるべく満遍なく検査して、陽性者を洗い出し、隔離することである。

   殊にウイルス保有者(陽性者)の中に無症状者や軽症者が多いという報告がある。感染拡大にこの無症状者の問題は実に大きい。この新型コロナウイルスの特性状況を捉えるには全体的な検査を実施するほかない。ほかによい知恵があるならそれでもよいが、とにかく、新型コロナウイルスの特性であるこうした無症状や軽症の陽性者を洗い出し、対策すること。これが見えないウイルスには欠かせないと言える。遅まきながら徹底した検査をやるべきである。

   そうすれば社会活動を止めることなく新型コロナウイルスの対策が出来る。もちろん、検査が万全であるとは言えない。だが、検査を実施するとしないとでは随分様相を異にする。感染を抑えるため、人流を止めるというのも一つの方法であるが、この人流を止める手法は大変難しい。何故ならその手段は陽性者も陰性者もひっくるめて行う無暗なやり方だからで、納得されないケースが現れ、利害の認識、或いは対立が生じ、宣言に従わない向きも現れることになるからである。また、根本的解決策ではないから宣言の解除後に感染者を増やすことに繋がりかねない点が指摘出来る。

   緊急事態宣言はコロナ禍において三回目であるが、グラフを見るに、前二回はそれなりに効果を見せた。だが、短期的な効果であって抜本的なものではない。それは何故か。それはウイルスが潜んでいる状況が私たちには見えず、わからないからである。わからないが、ウイルスは人に関わって潜んでいる。宣言を解除して人が接触可能になると、ウイルスはまたたちまち勢いを吹き返し、猛威を振るうということになる。言わば、今回の新型コロナウイルスによる感染症の難儀は、この繰り返しがよく示している。そこで、「人流」が強調されて、宣言の発令になったのだが、十分であるとは言えない。

 で、こういう展開状況にあって思われるのが今一つの懸念である。政府にはGoToキャンペーンの実施にも言えることであるが、人流を止めるとのキャッチフレーズはよいとして、さし迫った東京五輪とこの新型コロナウイルスの感染拡大の悩ましい問題をどのように考えているのかということである。オリンピックを実施するには人流を止めてはその盛り上げを図ることは出来ない。つまり、この点においてコロナ対策と整合性が取れるか、と問うてみると、なかなか難しく、矛盾が生じて来る。否、既に矛盾が露呈している。

   奈良県では今月十一日と十二日に聖火リレーが実施され、法隆寺で行われた点火セレモニーに出かけてみたのであったが、大変な人出だった。マスクをしていない人はさすが見かけなかったが、感染に注意を払いながら聖火リレーを見送った。無観客で聖火を走らせている自治体もあるが、人流を止めると言いながら一方では人が集まるようなやり方をしている。

 奈良県では聖火リレーで盛り上がった後、感染者が激増し、二十一日には過去最高の百十二人、二十二日には百二十五人、二十三日には九十一人に及んだ。聖火リレーが直接関係したとは言わないが、自粛している県民の行動変容を促す雰囲気をもたらしたことは確かな気がする。聖火リレーだけではない。これからオリンピックを盛り上げるには人の動き、接触の人流がなくてはならない。それも世界の人々を迎えて。どのように新型コロナウイルスとの都合をつけ、開催するのか、そこが問われる。開催するなら、選手や関係者だけでなく、ワクチンとともに検査の徹底が必要だと言える。

   人流を止めると言われても、そこに顕ち現れる矛盾と不公平さに政治は果たして答えが出せるのだろうか。殊に医療の逼迫はどんなに言ってみても現実の事情による。宣言は妥当だと言えるが、このままではあたふたの状況は繰り返される。そして、他力本願のワクチン待ちということになる。ワクチンが間に合い、集団免疫の効果が発揮されれば、道は開けると思うが、果たして新型コロナウイルスの感染症はどのように展開し、どのように影響し、そして、収束出来るのだろうか。その見通しは甘くない。

 写真は四月十二日午後行われた法隆寺における聖火リレーの点火セレモニーに集まった人出。セレモニーが終わって解散する見物の人たち。

 


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2021年04月23日 | 植物

<3386> 奈良県のレッドデータブックの花たち(43) オオバヤドリギ(大葉宿木)      ヤドリギ科

                       

[学名] Taxillus yadoriki

[奈良県のカテゴリー]    絶滅危惧種

[特徴] アラカシ、ウバメガシなどの常緑樹やイロハモミジ、イヌシデなどの落葉樹に半寄生する常緑小低木乃至低木で、ややつる性になり、大きいもので高さ1メートルほど。樹皮は灰白色で、茶褐色の縦縞と赤褐色の皮目が目立つ。葉は長さ2~6センチの卵形または広楕円形で、鋸歯はなく、先は尖らない。質は革質で、厚く、裏面には赤褐色の星状毛が密生する。花期は9~12月で、葉腋に長さが3センチほどの筒状の花を2~5個つける。花被の外側には赤褐色の星状毛が密生する。内側は緑色がかり、先が4裂し、反り返る。液果の実は長さが7ミリほどの広楕円形で、赤褐色の星状毛に被われる。

[分布] 本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄。国外では中国。

[県内分布] 北部の奈良市と南部の十津川村。ほかは確認されていない。

[記事] 『大切にしたい奈良県の野生動植物』(奈良県版レッドデータブック2016改訂版)によると、「産地は奈良公園とその周辺、および十津川村でしか確認されていない。個体数も少ない。奈良ではイロハモミジ、イヌシデに寄生、十津川村ではアラカシ、ウバメガシに寄生する。危険要因は寄主の伐採」という。 写真はイロハモミジに寄生するオオバヤドリギ(左)とその実(右)。

   生きものは何かに寄り添うか

   何かを頼りにして生きている


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2021年04月22日 | 写詩・写歌・写俳

<3385>野鳥百態(13)  カワラヒワとサルスベリの実、イカルとエノキの実

            ものを食べるということについて

        その機能である口や嘴を思うに

                        人間の口は雑食に適っている

        ウシやシカやヤギのそれは草食に適っている

        イヌやネコや猛獣のものは肉食に適っている

        水辺に暮らすサギやカワセミはどうか

                        小魚を捕食するのに適った嘴を持っている

        猛禽類のワシやタカやフクロウはどうか

                        これらも肉食 小動物を食うに適った嘴である

        太く丈夫な嘴を有するアトリの仲間は

        イカルにしてもシメやヒワにしても

        その嘴は堅い実を食べるのに持って来いである

        つまり口や嘴は食物に適応して働いている

               

 よく訪れる奈良県営馬見丘陵公園にはときおりアトリ科のカワラヒワやイカルが姿を見せる。一羽でなく、いつも十数羽の群で現れる。ともに太くて丈夫な嘴を持ち、熟し切った堅い実を割って食べている。イカルの好物はエノキやムクノキの核果で、この堅い核果を割って食べる。カワラヒワはヒマワリの実が好きなようであるが、サルスベリの実が熟し切るとやって来て、広い翼のついた種子を含む蒴果に取りついているのが見られる。

   生きものは食を第一とし、口や嘴はその食を叶える機能としてあり、その機能を働かせながら生きている。生きものにはそれぞれに好物があり、その好物(主食)を食べるに適した口や嘴を有している。そのそれぞれに見られる口や嘴の機能的特徴は食するものに由来しているということが言える。 写真はサルスベリの実を啄むカワラヒワ(左)とエノキの実を啄むイカル(右)。


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2021年04月21日 | 植物

<3384> 奈良県のレッドデータブックの花たち(42) オオハナウド(大花独活)                   セリ科

         

[別名] ウラゲハナウド(葉の裏に毛が多いことによる)

[学名] Heracleum lanatum

[奈良県のカテゴリー]  情報不足種(旧絶滅寸前種)

[特徴] 深山の草地に生える大形の多年草で、草丈は1~2メートルになる。茎は太く、中空で、上部において枝分かれする。葉は大きく、3出複葉で、小葉は先が尖り、欠刻状に裂け、裏面に毛が多い。茎の節にも毛が密生する。花期は6~8月。枝先に複散形花序を出し、白い小さな花を多数つける。花序の縁の花は外側の花弁が大きい特徴が見られる。

[分布] 本州の近畿地方以北(西限は兵庫県の氷ノ山)、北海道。千島、サハリン、カムチャッカ、アリューシャン、アラスカ。

[県内分布] 天川村(大峯奥駈道)。

[記事] 奈良県版レッドデータブックの旧カテゴリー(2008年版)では絶滅寸前種だったが、2016年版の新カテゴリーでは情報不足種に変更された。その理由について、レッドデータブックは「オオハナウドと同定されてきた植物は大峰山系で採取記録されている。ハナウドとオオハナウドの関係は別種、変種、亜種として取り扱われてきて研究者により見解が異なる。奈良県のものがオオハナウドであるのかは今後再検討していく必要がある」としている。大峰の尾根筋の石灰岩地に見える個体群はシカによる被食が見られ、シカ避けの防護ネットに守られ、ネット内では旺盛である。 写真はネット内の個体。

           生に悩みは尽きない

     それは 何故か

         生きているからである

     悩み避けられないならば

     悩みに慣れるか

         悩みを軽減する方法を

           見出すほかはない