大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年04月07日 | 写詩・写歌・写俳

<3371>   余聞 余話 「ナワシログミの実に寄せて」

               春日や生きゐるもののそこここに

 秋に褐色の鱗状毛が斑点のように見える白い萼筒の花を咲かせ、先に萼筒の上部が残る楕円形の実をつけ、その実が苗代をつくる五月ごろ赤く熟すナワシログミとう常緑低木がある。山野で普通に見られるグミの仲間で、完熟すると赤くなる。

                       

   このナワシログミの実の熟すのが今年は異常に早く、三月の中ごろから色づき始め、四月に入るとほとんどの実が赤く染まった。サクラの開花も早かったが、ナワシログミは例年より半月も早い。サクラと同じ自然現象と見て取れる。つまり、暖かな気象条件に起因するとみるのだがどうであろうか。赤く熟すということは中身の肝心かなめの種子も成熟し、繁殖先に運ばれる準備が整った証で、その赤いのは運んでくれる野鳥へのアピールに違いない。

   この実の現象が馬見丘陵公園の自然林の縁で見られ、観察していたのであるが、四月に入って間もなくナワシログミの枝からその赤い実が消え失せ、皆無の状態になった。ヒヨドリの多いところで、食欲旺盛なヒヨドリに食べられてしまったのだろう。ほかに理由が考えられない。

 観察している身には、少々衝撃的な光景で、淋しい状態になってしまったが、ヒヨドリの所為であるとするならば、ナワシログミには思惑通りということになろう。食べたヒヨドリが種子を糞とともに拡散してくれたはずだから。言わば、これはナワシログミにとって喜ばしいことと言え、共生の光景の一端とみることが出来る。今年の春の一景ではある。

 写真は赤く熟した実を生らせていたナワシログミ(左・四月一日)、実のアップ(中・同)、実が消えてしまったナワシログミ(右・四月五日)。いずれも、馬見丘陵公園で。