<1808> 余聞・余話 「花の模式図」 (勉強ノートより)
花はどんなに苛酷なところに咲いていても
一旦咲き出すと 自然の環境の中で
与えられた命の未来を負ってひたすらに咲く
それは何とも晴れやかに見えるほどである
この草木の花たちを見ていると
私たち人間よりも弱々しい存在ながら
神の授かりものに違いない自然の環境に従順で
それはまさに愚直なほどに見えるが
そのひたすらな愚直さをもって
花は おそらく 私たち人間よりも
神から与えられた地上の自然の環境の中で
強く生き長らえて行くのに違いないと思えてくる
そして その祝福と感謝の光景にして
今も 時を得た草木の花たちは咲いている
「花は植物の生殖器官である」と多くの人が言っている。誰が最初に言い出したものか。植物学者か、それとも詩人か、どちらでもよいがこの認識は当を得ていると思われる。花の定義は難しいが、大方の花が生殖器官の任にあることは確かに言える。まず、一般的な認識では、外側に萼があり、次に花弁があり、その内側に雄しべ(雄ずい)と雌しべ(雌ずい)があるのが花である。この雄しべと雌しべの役割は子孫を次に繋げる役割がある。雌しべには受精して得た果実を育てる仕組みが整えられている。つまり、花は植物が種を保ちゆくための重要な部分で、これを動物に例えれば生殖器官ということになる。これは雌雄からなる生きものの重要な仕組みの一端である。
では、ここに一般的な花の模式図を示し、生殖器官としてうまく出来ている花を見てみたいと思う。まず、花は草木の枝や茎に咲き出し、葉の変形したものとの考えもある。直接咲き出す花も見られるが、枝や茎と花を繋ぐ役目の花梗や花柄の存在がある。その花梗や花柄の先に花托や花盤が出来、花の基盤となる。その花盤の上に花の主要な部分が乗っかってつく。
まず、花にはつぼみのときから花を包んで守る萼が最も外側につき、その内側に重要な内陣を守る花弁(花びら)があるものが多い。言わば、花は外部に向って二重の防御をしていることになる。花にとってもっとも影響が大きいのは風雨で、これへの対策が花弁や萼にはあるが、これについては、花の撮影に出かければすぐに気づく。雨の日に花弁を閉じるものが多いのはその一例である。タンポポやリンドウなど上を向いて咲く花にこの傾向が見られる。
花弁の部分は花によって花冠とか花被とかとも呼ばれ、内陣を守るだけでなく、内陣の環境を整え、生殖の手助けをしてくれる昆虫や鳥たちを誘い導く役目も担っており、美しく装うものが多く見られる。花はその来客をもてなす仕組みを有し、その生殖機能をなるべく有効に働かせるように工夫している。花を守る役目が一番である萼も昆虫や鳥たちを誘うために美しく装うものがある。萼片が美しく彩るアジサイ類がそのよい例である。
花の内陣は雄しべと雌しべからなり、雄しべは花粉を出し、雌しべは花粉を受け取るようになっている。雌しべは受け取った花粉を子房の中に入れ、胚珠に至って受精し、果実を生むことになる。近親相姦は元気な子孫に繋がらないので、自家受粉をなるべく避けることが必要で、花にはそれが求められ、その対策も花はこなしている。
例えば、雄性先孰(雄しべ先孰)のウツボグサがあり、雌性先孰(雌しべ先孰)のオオバコなどがある。これは時間差によって自家受粉を出来なくする方法であるが、雌雄異株のように空間的に自家受粉を避ける植物も見られる。ほかにも、自家受粉を避けるため来訪者を花の側面から誘い入れ、自花の雄しべに触れさせずに雌しべの位置に誘導し、来訪者が花から出るとき雄しべに触れて花粉を別の花へ運ぶように仕組んでいるアヤメ科のような花も見られる。
果実が出来ると、花は役目を終え、枯れて行き、それからは果実の中の種子の扱いに移って行くことになる。花は種子が有効に発芽して命を繋いで行くように最後まで工夫と努力を怠らない。下向きに咲く花が果期になると上向きになり、冠毛に付いた種子がなるべく飛散するような仕組みになっているキセルアザミのような花もある。
花は単に美しく咲いているのではなく、子孫を残すために工夫を重ね、日夜努力しているその工夫と努力の結集による姿が花の美しさに繋がっているのである。 写真上段は左から花の模式図、雄性先孰のウツボグサの花、雌性先孰のオオバコの花。下から上へと咲き上がる。写真下段は左から雨になると花弁を閉じるタンポポの仲間のセイヨウタンポポ、昆虫をうまく誘導する工夫が見られるカキツバタの花、種子がうまく飛散するように最後の最後まで努力するキセルアザミの花。種子の出来るころになるとこの花が真っ直ぐに立って、種子がついた冠毛が飛ぶのを助ける。
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