大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年04月24日 | 植物

<1943> 大和の花 (200) ハタザオ (旗竿)                            アブラナ科 ヤマハタザオ属

                       

 今回からはアブラナ科の花を採り上げてみたいと思う。まずはハタザオ(旗竿)と名のつくものたちから。ハタザオは海岸の砂地や山野の草地に生える2年草で、北海道、本州、四国、九州とほぼ全国的に分布し、朝鮮半島、中国、西南アジア、北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカなどに広く見られるという。茎はほとんど分枝することなく直立し、その先端部に総状花序を出して次々に花を咲かせ、実をつけて伸びあがり、大きいものでは高さが1メートル以上に及ぶものもある。

 葉は根生葉と茎葉からなり、根生葉はへら形、茎葉は楕円形乃至披針形で、基部は茎を抱き、上部の葉ほど小さい。花期は4月から6月ごろで、黄色を帯びた白色の小さな4弁花を開く。実は線形の長角果で5センチ前後になり、茎に密着するようにつく。草丈の全体の印象によりこの名がある。 写真はハタザオ(金剛山の水越峠付近)。   旗竿に旗の花咲く五月かな

<1944> 大和の花 (201) ヤマハタザオ (山旗竿)                            アブラナ科 ヤマハタザオ属

                                                    

  ハタザオ(旗竿)に似て、茎はほとんど分枝せず、直立して高さ80センチ前後になる。冬も枯れることのないロゼット状の根生葉によって越冬する越年草で、丘陵や高原、山地の草地や林縁に生え、北海道から本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカに見られるという。大和(奈良県)では曽爾高原でよく見かける。

  ハタザオと同じく、茎葉には柄がなく、葉身の基部が茎を抱く。花期は5月から7月ごろで、茎頂に総状花序を出し、ミリ単位の小さな白い4弁花を咲かせる。実は長角果で、茎に沿って直立する。角果に種子が2列するハタザオに対し、ヤマハタザオは1列になる違いがある。 写真はヤマハタザオ(曽爾高原の周遊道の傍)。 ああ日本みんなのうへに春が来る諍ひなどに巻き込まれるな

<1945> 大和の花(202) ハクサンハタザオ (白山旗竿)               アブラナ科 ヤマハタザオ属

           

  ツルタガラシ(蔓田辛し)の別名もある北海道の西南部から九州の宮崎県まで分布し、国外では朝鮮半島に見られる多年草で、垂直分布でも山間地から山岳の高所まで広範囲に自生する。大和(奈良県)では野迫川村、五條市西吉野町、曽爾村の山間地等の山足や道端から標高1800メートル以上に及ぶ大峰山脈の尾根上まで点在するが、大和(奈良県)での自生地は限定的で、個体数も少なく、レッドリストの希少種にあげられている。別名ツルタガラシ。

  日当たりのよい草地や砂礫地に生え、茎は株状に立ち、草丈は30センチほどになる。茎は軟弱で、花の終わるころには倒れ伏し、節の部分から新芽を出して広がり、ときに群生することもある。葉は根生葉と茎葉が見られ、根生葉は短い柄があって羽状に裂け、頭頂の葉が大きい。茎葉は細く、羽状に中裂するものや鋸歯の見えるものがある。他種と異なり、葉は茎を抱かない。

  花期は4月から6月ごろで、茎頂部の総状花序に柄を有する白い4弁花を咲かせる。花弁は長さが数ミリの倒卵形でかわいらしい。実は線形の長角果である。 写真はハクサンハタザオ。左から西吉野町、野迫川村、弥山で見かけたものと花のアップ。雄しべは6個。

  日本は 四季の国 四季にともない 色とりどりの 花が咲く 概して 春は黄色 夏は白色 秋は青紫色 冬は紅色 これは 私の印象 とにかく 千差万別 色とりどりの 花が咲く はたして これは 如何なるわけによるものか 思えば 日本は 四季の国 四季にともない 色とりどりの 花が咲く

 

<1946> 大和の花 (203) フジハタザオ (富士旗竿)                   アブラナ科 ヤマハタザオ属

               

  富士山に多く見られるのでこの名があるヤマハタザオの仲間の多年草で、深山の岩場や砂礫地に生える。茎は株状にかたまって立ち、草丈は大きいもので30センチほどになる。根生葉は広倒披針形で、茎葉は長楕円形となり、矢じり形の基部が茎を抱く。花期は7月から8月ごろとされ、茎頂部に総状花序を出して直径2センチ弱の白色4弁花を開く。

  写真は5月末に大台ヶ原の標高約1450メートル付近で撮影したもので、フジハタザオに言われる花期より1ヶ月ほど早く、フジハタザオの変種とされるシコクハタザオ(四国旗竿)に同定する向きもうかがえるが、両者はよく似ているので判別が難しく、正確なところはわからない。両者一体と見れば、本州の関東地方南部以西、四国、九州に分布し、韓国の済州島にも見られるという。

  2016年改定版の奈良県のレッドデータブック『大切にしたい奈良県の野生動植物』はシコクハタザオイコールフジハタザオとして、自生地も個体数も少なく、シカの食害が甚大として希少種にあげている。 ここではフジハタザオとしてとりあげた。  写真はフジハタザオ。  花満ちて春たけなはとなりにけり

<1947> 大和の花 (204) キバナハタザオ (黄花旗竿)         アブラナ科 キバナハタザオ属

       

  キバナハタザオ(黄花旗竿)は大峯奥駈道が通る大峰山脈の尾根上の一角、天川村の標高約1400メートルの日当たりのよい石灰岩地に稀産する多年草で、黄色の花を咲かせるのでこの名がある。最初に出会ったときはセイヨウカラシナ(西洋芥子菜)かと思い、こんなところにまで広がって来ているのかと思いながらカメラに収めた。

  後日、確認のため図鑑を見ていたらキバナハタザオが目に入り、セイヨウカラシナは誤認で、これだという気がして調べ直してみた。結果、本州の中部地方と九州の対馬、それに朝鮮半島、中国に分布するとわかった。大和(奈良県)では大峰山脈のこの一箇所のみに自生し、個体数が極めて厳しい状態に置かれ、絶滅寸前種にあげられているとわかった。絶滅危機の要因にはシカの食害、周囲の草木による圧迫、人の持ち去りなどが考えられ、もっとも心配されるシカの食害を防ぐためシカ避けの防護ネットが張りめぐらされ、その中において保護されている。

  高さは大きい個体で子供の背丈ほどになり、茎は直立気味に立ち、わずかに分枝も見られる。葉はごく短い柄があり、葉身は披針形で、茎を抱かず、波状の鋸歯が見られる。花期は6月から7月ごろで、茎頂や枝の先端部に総状花序を出し、長さが1.5センチほどの黄色い4弁花を咲かせる。実は長角果で15センチほどと長い特徴が見られる。 写真は草地から抜きん出て黄色い花を見せるキバナハタザオ(左)、花のアップ(中)、長角果(右)。 時を得て咲き出す花は命なりいづこの小さきわづかな花も

 

 

 

 

 

 


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