<98> 木 守 柿
木守柿 あるは感謝の こころ見ゆ
大和が全国有数のカキの産地であることは以前に触れた。 大和では少し郊外に足を向けるとすぐにカキノキが見られる。花は淡黄緑色の小さな壷型の花で五月ごろ咲く。 花は葉に隠れるように咲くので目立たないが、色づく果実はよく目につき、秋の風情で、日本の原風景の一つとしてあげられている。
大和は山国で、昔から生産目的以外でも、 自給自足用のカキノキが民家の近くに多く見られ、 その風景は今も変わりない。しかし、最近は、冬になってもたわわに実ったまま収穫されず放置されているカキノキが増えている。
これはカキノキの持ち主が収穫をしなくなったからで、その事情は持ち主個々さまざまではあるだろうが、この傾向には社会的状況が関わりを持っているように思われる。所謂、生活様式の変化によって自給自足の必要性が乏しくなり、日々の実生活からカキノキが見放されているからではないか。 また、過疎化などによる持ち主の不在が大きく影響しているということも考えられる。
そんな状況の中で、 木守柿の光景に出会うと、 何かほっとしたような心持ちになる。これは木守柿のカキノキが今も大切にされている証で、その木の持ち主が健在であることを示すものとして、そこには堅実な生活の持続が読み取れ、ほっとしたような心持になる。
木守柿はおいしい果実を提供してくれるカキノキに対し、 全部は収穫せず、少し残して木に感謝の気持ちを示すものとしてあり、持ち主の心情が現われたもので、この呼び方には感謝と来年への願いが込められている。また、これには鳥たちにも残しておくという気持ちの現れが見え、俳句では冬の季語として用いられ、カキだけでなく、ユズやカボスにも木守(きもり)の言葉が冬の季語としてあり、木守柚などとも言われる。写真の鳥はツグミ。 木守柿 TPPを 如何に読む 木守柿悲願と祈願の一個あり
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