大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年11月13日 | 植物

<2146> 大和の花 (368) ツルマメ (蔓豆)                                                     マメ科 ダイズ属

                 

 草地や道端の草叢などに生えるつる性の1年草で、他物に茎を絡めて伸び、全体に細毛が見られる。長い柄を有する葉は3小葉からなり、小葉は狭卵形から披針形で、長さは3センチから6センチほどになる。花期は8月から9月ごろで、直径が1センチに満たない紅紫色の小さな蝶形花を葉腋の総状花序に3、4個つけ、順次開花する。実は豆果で、淡褐色の毛が密生する。

 日本全土に見られ、朝鮮半島から中国、シベリアにも分布し、大和(奈良県)では普通に見られる。醤油や味噌の原料に用いられ、枝豆で知られるダイズ(大豆)の原種と言われ、種小名の「soja」は「しょうゆ」の転訛によるという。別名ノマメ(野マメ)。家畜の飼料にされる。 写真はツルマメ。左から蔓茎の葉腋に咲く花。花のアップ。淡褐色の毛に被われた豆果。  秋深み実りゐるものそこここに

<2147> 大和の花 (369) ヤブマメ (薮豆)                                                   マメ科 ヤブマメ属

                                          

 日当たりのよい林縁や山道の傍などに生えるつる性の1年草で、他物に茎を絡めて伸び上がる。葉は3出複葉で、小葉は長さが3センチから6センチの広卵形乃至は卵状菱形。脈が目立つ。花期は9月から10月ごろで、葉腋の短い花序柄に数個の蝶形の小花をつける。小花は長さ2センチ前後。旗弁は紫色、翼弁と竜骨弁は白色で、長さが2センチから3センチの扁平な豆果を結ぶ。豆果には3個から5個の種子が入る。

 なお、ヤブマメには地中に閉鎖花が出来るのが特徴で、閉鎖花も結実し、閉鎖花の豆果には1個の種子が含まれる。日本全土に分布し、国外では朝鮮半島から中国に見られる。ヤブマメの名は薮に生えるマメの意によるもので、大和(奈良県)でも薮状になった日当たりのよい外面でよく見かける。なお、地中の閉鎖花に出来る豆果は食用にされる。 写真はヤブマメ。左から茎を絡めて花を咲かせる個体、花のアップ、毛が生え淡褐色を帯びた豆果。   どの道も秋は即ち秋の道

<2148> 大和の花 (370) ヤブツルアズキ (薮蔓小豆)                                       マメ科 アズキ属

                           

 日当たりのよい草地に生えるつる性の1年草で、他物に絡んで伸び上がる茎や葉には黄褐色の軟毛が見られる。葉は3小葉からなり、小葉は長さが1.7センチ前後の狭卵形乃至は卵形で、浅く3裂するものもある。花期は8月から10月ごろで、葉腋に花序柄を出し、先端に数個の蝶形花をつける。蝶形花は黄色で、直径2センチ弱、筒状の竜骨弁がくるりとねじれて丸るまり、左方の翼弁がこれに被さり、右方の翼弁が竜骨弁の基部を抱くような形になる。実の豆果は大きいもので長さが9センチほどの線形で毛はない。

 名にアズキとあるように、赤いダイヤとして投資対象にされたこともある作物のアズキ(小豆)の原種として知られ、本州、四国、九州に分布する。アズキは古くに中国から渡来したとされ、中国や朝鮮の南部地方でも栽培され、昔から暗赤色の種子は食用にされ、祝い事などに赤飯として用いて来た。アズキのアは赤い意で、ズキは解ける意のツキから来ているという。これは小豆がほかの豆よりも早く煮られるからからという。ほかにも諸説あるが、この説がもっとも説得力があるように思われる。アズキを小豆というのは実が小さく、大豆との対比によった漢名によるものである。 写真はヤブツルアズキ。花と実が同時に見られる。 冷ゆる夜熱き生姜湯いただきぬ

<2149> 大和の花 (371) ノアズキ (野小豆)                           マメ科 ノアズキ属

             

 山野の日当たりのよいところに生えるつる性の多年草で、全体的に軟毛があり、ヤブツルアズキによく似るが、属を異にする。ノアズキは葉裏と萼に赤褐色の腺点があり、3小葉からなる小葉の形状が長さ2センチから3センチほどの卵状菱形で、この葉の比較によって判別出来る。

 花期は8月から9月ごろで、ヤブツルアズキと同じような黄色の蝶形花をつける。花の中央の竜骨弁がくるりとねじれ、左の翼弁が上に見られ、右の翼弁が竜骨弁の基部に見える。豆果は細い棒状のヤブツルアズキと異なり、ノアズキはより扁平で、この違いでも判別出来る。ノアズキの名はヤブツルアズキに似て野に見えることによる。本州、四国、九州に分布し、大和(奈良県)でも各地で見かける。写真はノアズキ。左から群生して花をつける個体、花のアップ、豆果。  それぞれのそれぞれにある秋の色

<2150> 大和の花 (372) ノササゲ (野豇豆)                                                マメ科 ノササゲ属

                                                   

 山地の林縁や山道の傍などに生えるつる性の多年草で、本州、四国、九州に分布し、ヤブマメほどではないが、大和(奈良県)でも各地で見られる。葉は長い柄のある3小葉からなり、小葉は長卵形で、質は薄く、裏面はまばらな毛があり白っぽい。

  花期は8月から9月ごろで、葉腋に総状花序を出し、数個の蝶形花をつける。蝶形花は長さが2センチ前後、黄色から淡黄色で、筒状の萼を有し、旗弁が紫色のヤブマメとは好対照な花である。豆果は長さ2センチ弱で、熟すと紫色になり、実の部分が膨らみ、数珠状になる。

 本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島から中国に見られるという。ノササゲの名はササゲ属のササゲ(豇豆)に似て、野生であることによる。別名のキツネササゲ(狐豇豆)も野生で役に立たない意。 写真はノササゲ。右は花のアップ。花は黄色から淡黄色で、筒状の萼が斜めにカットされたようになるが特徴として見える。   室の奥に冬日差し入る温さかな

<2151> 大和の花 (373) タンキリマメ (痰切豆) と トキリマメ (吐切豆)                    マメ科 タンキリマメ属

           

 タンキリマメ(痰切豆)は実を食すと痰を止めると言われ、トキリマメ(吐切豆)は吐き気を止めるということか。その名には薬効がにおわされているが、これは俗説で、効き目はないと言う。山野の日当たりのよいところに生えるつる性の多年草で、毛の生える茎は他物に絡んで這い上る。

  葉は3小葉で、この2種はよく似るが、タンキリマメの小葉は卵状菱形で先があまり尖らず、裏面に黄褐色の腺点が見られるのに対し、トキリマメは倒卵形で、タンキリマメより少し大きく、先が細く尖る特徴により判別出来る。トキリマメの別名はオオバタンキリマメ(大葉痰切豆)で、これは葉の形状の比較によってつけられた名である。

 花期はともに7月から9月ごろで、筒状の萼を有する黄色から淡黄色の蝶形花を数個総状につける。豆果は熟すと鞘がともに濃い赤色になり、裂開して黒色で光沢のある球形の種子2個が現われる。この黒色の種子も似るが、トキリマメの種子はタンキリマメのそれよりも少し大きい。

 タンキリマメが関東地方以西、四国、九州、沖縄に分布するのに対し、トキリマメは関東地方以西、四国、九州に分布し、大和(奈良県)ではともに山地の林縁や道端などで見かける。 写真の左3枚はトキリマメ。右端の実の1枚はタンキリマメ。   大和なる初冬ぴーかーんと晴渡る

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿