大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年07月27日 | 植物

<2401> 大和の花 (568) ハルノタムラソウ (春の田村草)                               シソ科 アキギリ属

                                              

 シソ科に春、夏、秋を冠したタムラソウ(田村草)の名を有する多年草が見られる。ここではそのアキギリ属の多年草と属名になっているアキギリ(秋桐)を見てみたいと思う。まずはハルノタムラソウから。本種はやや湿った谷間の岩上や木陰に生え、断面が四角い茎を直立させ、10センチから20センチの高さになる。葉は1、2回羽状複葉で、長い柄を有し、基部に集まって対生する。小葉は卵形から楕円形で、側小葉より頂小葉の方が大きい。縁には鋸歯があり、表面にはまばらに毛が生える。

 花期は4月から6月ごろで、茎の先の部分に白色の唇形花を数段に輪生する。花冠は長さ8ミリほど。萼は長さ5ミリほど。花が散った後も残る。本州の紀伊半島、四国、九州に分布する日本の固有種で、襲速紀要素系植物の分布域に重なる。大和(奈良県)では分布が南部に限られ、「北限か」と言われ、個体数が少なく、希少種にあげられている。 写真はハルノタムラソウ(十津川村の玉置山)。   人間は感性と知性の存在

<2402> 大和の花 (569) ナツノタムラソウ (夏の田村草)                               シソ科 アキギリ属

                     

  山地の林縁や木陰の草地などに生える多年草で、ハルノタムラソウと同じく、断面が四角形の茎を直立させ、草丈は20センチから50センチほどになる。葉は普通1、2回羽状複葉で、小葉は卵形から楕円形。側小葉より頂小葉が大きく、表面にまばらな毛、縁には鋸歯が見られる。葉柄は3センチから7センチほどで、対生する。

 花期は5月から8月ごろで、茎の先端部に濃青紫色の唇形花をまばらに輪生する。花冠は長さ8ミリから10ミリで、萼は鐘形で2唇形。花はアキノキリンソウに似るが、雌しべが花冠より長く伸び出す特徴がある。日本の固有種で、神奈川県から近畿地方の太平洋側に分布し、大和(奈良県)では暖温帯上部から冷温帯域に見られるという。だが、生育地も個体数も少なく、絶滅危惧種にあげられている。山上ヶ岳から大峯奥駈道を南に向かって歩くと出会える。 写真はナツノタムラソウ(大峰山脈の尾根筋)。                    過去があって 現在はあり 現在があって 未来は開けゆく

<2403> 大和の花 (570) アキノタムラソウ (秋の田村草)                                  シソ科 アキギリ属

                          

 棚田の畦や山足の草むらなどに生える多年草で、断面が四角形の茎が伸びて高さが20センチから80センチほどになる。葉は普通1、2回羽状複葉で、小葉は広卵形から狭卵形。縁には鋸歯が見られ、長い柄を有し、対生する。

  花期は7月から11月ごろで、上部で分枝する枝の先に淡青紫色の唇形花を何段かに輪生する。イヌゴマに似るが、本種の花は青味が強い。本州、四国、九州、沖縄に分布し、東アジアに広く見られるという。大和(奈良県)では各地で普通に見られる。なお、タムラソウ(田村草)の語源は不明。 写真はアキノタムラソウ(矢田丘陵ほか)。   万能でない生に 懐疑はついてまわる

<2404> 大和の花 (571) アキギリ (秋桐)                                          シソ科 アキギリ属

                         

 やや湿り気のある山地の木陰などに生える多年草で、茎が地表を這って群生することが多い。高さは20センチから50センチほどになり、長さが6センチから10センチの三角状鉾形の葉は先が尖り、縁には鋸歯が見られる。葉には長い柄があり、対生する。

 花期は8月から10月ごろで、枝先に紅紫色の唇形花が集まってつく。花冠は長さが2センチから4センチほどで、仲間の中では大きく、上下に口を開けて咲く。下唇は垂れ、直立気味に開く上唇部分から糸状の雌しべが長く外に伸び出し、先端部で⒉分する。雄しべは花冠の内にあり、花冠の内面には長毛が生える。

  本州の秋田県から近畿地方にかけて分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では山足や山道の傍などでときおり見かける。アキギリ(秋桐)の名は秋に咲くキリに似た花に因む。 写真はアキギリ(金剛山)。花はママコナに似るが、花冠より雌しべが長く伸び出すので判別出来る。ママコナは花の内側に白い米粒のような突起が2個見える。   平成のゆく夏毛虫が這ってゐる

 

 


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