<3419> 野鳥百態 (20) コサメビタキの子育て
子育てはかくあり 親の細る身の見ゆるに 健やかなる雛の声
五月。繁殖期を迎えたコサメビタキのカップルがエノキの太い枝の股にウメノキゴケなどを材にお椀型の巣を作り、産卵し抱卵に入った。巣のある股の枝は一方が横に張り出し、他の一方が斜めに立ち上がって葉を繁らせ、少しの雨なら凌げるようになっていて四六時中どちらかが巣に蹲って卵を抱いた。
巣の近くにはカラスが二羽陣取って虎視眈々と卵を狙っている様子。コサメビタキはそれを先刻承知。目を光らせ巣を空けることはほとんどなかった。結果、抱卵して一週間ほど後、四羽のヒナが前後して姿を現わした。ヒナの誕生後は、メスが付き切りで、オスがエサの運び屋に徹し、ひっきりなしに青虫などのエサを運んだ。
エサはメスに渡し、メスがヒナに振り分けるというやり方をしていた。メスは常時巣にいてよくわからなかったが、オスは自分の食べ量を我慢して母子五羽にせっせとエサを運び、痩せ細ったスリムな体形になってその涙ぐましい努力を印象づけるところがあった。
巣立ちするまでの間、一度だけ烈しい風雨に見舞われた日があった。巣に蹲るメスは四羽のヒナを羽毛に包んで凌いだようで、風雨に曝された巣にヒナの姿は見えなかった。雨上がりの翌朝、巣を見に行くと、コサメビタキの親子はみな元気にしていた。
それから暫くして、四羽は巣立った。巣立ちには残念ながら立ち会えなかったが、無事に巣立ったと聞いた。数日後、出かけてみると、巣の近くの木々で元気よく飛び交う姿が見られた。写真には撮れなかったが、多分、巣だったコサメビタキに違いと思えた。
写真は大きく口を開けて運ばれて来るエサを待つコサメビタキのヒナたち(左・寄り添うのはメス)、エサの青虫を咥えたオス(中・自分では食べず、巣に運んだ)、痩せ細って枝にとまるオス(右・つかの間の休憩と見えた)。
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