大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年11月20日 | 植物

<2873>  大和の花 (939) クワガタソウ (鍬形草)                    ゴマノハグサ科 クワガタソウ属

             

 山地の半日蔭になるところに生える多年草で、草丈は15センチから30センチほどになる。葉は上部のものが大きい特徴があり、大きいもので5センチ前後の卵形または長卵形で、先が鈍く尖り、基部はくさび形になる。縁には鋸歯が見られ、葉面にはわずかな毛があり、有柄で、対生する。

 花期は5月から6月ごろで、上部の葉腋から花序を出し、1個から5個の花をつける。花冠は4裂し、基部が合着して開花すると直径1センチ前後になる。淡紅紫色に紅紫色の条がはいるものが普通であるが、個体によって微妙な濃淡の差が見られる。蒴果の実は扁平な三角状扇形で、クワガタソウ(鍬形草)の名はこの実と萼片による形が兜の鍬形に似ることによるという。

 本州の太平洋側に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では金剛山をはじめ紀伊山地で見かけるが、標高1500メートル以上では大台ヶ原山がある。クワガタソウに似るコクワガタ(小鍬形)は全体に小さく、葉の鋸歯が低い違いが見られ、大和(奈良県)でも見られるが、判別が難しい。三峰山で出会った個体は全体に小さく、鋸歯の形などからコクワガタと見た。コクワガタも日本固有種である。 写真はクワガタソウ(左・金剛山、中・大台ヶ原山)とコクワガタ(右・三峰山)。  欠礼の葉書が届く百舌鳴けり

<2874>  大和の花 (940) カワヂシャ (川萵苣)                       ゴマノハグサ科 クワガタソウ属

            

 田の畦や川筋、溝などの湿地に生える2年草で、草丈は10センチから50センチほどになる。茎や葉は無毛で軟らかい。葉は長さが4センチから8センチの披針形乃至は長楕円状披針形で、葉面が波打ち、縁には尖った鋸歯が見られ、茎を抱いて対生する。

 花期は4月から6月ごろで、葉腋に長さが5センチから15センチの総状花序を出し、直径3、4ミリの小さな花を多数つける。花は白色で、淡紅紫色の条が入り、4裂して皿状に開く。蒴果の実は長さが3ミリほどの球形で、先がわずかに凹む。

 本州、四国、九州、沖縄に分布し、朝鮮半島、中国、インド、ネパール、タイ、パキスタン、ラオス、べトナムなどに見られるという。日本国内では帰化植物のオオカワヂシャ(大川萵苣)の繁殖が著しく、在来のカワヂシャが減少し、大和(奈良県)でもその傾向にあり、レッドリストには希少種として名を連ねている。カワヂシャ(川萵苣)の名は川べりに生えるチシャ(レタス)の意で、若葉は食用にされる。 写真はカワヂシャ(大和民俗公園の湿田)。   撮り貯めし花の写真と冬の室

<2875>  大和の花 (941) オオカワヂシャ (大川萵苣)     ゴマノハグサ科 クワガタソウ属

             

 ヨーロッパからアジアにかけて、広い範囲が原産地とされている多年草で、日本では関東地方以西に帰化している。カワヂシャと同じく、川筋や溝、池辺などの湿地に生え、繁殖している。大和(奈良県)でもそこここの湿地に生え出し、在来のカワヂシャを圧倒しているのが見られる。この勢いは害を及ぼすとして特定外来生物にあげられ、駆除の対象になっている。

   カワヂシャよりも全体に大きく、高さは大きいもので1メートルほどになり、茎や葉はカワヂシャと同じく軟らかい。葉は長楕円形から披針形までさまざまで、縁には細かい鋸歯が見られ、無柄で対生する。花期は4月から7月ごろで、葉腋に穂状の花序を出し、直径数ミリの淡紫色から白色の小さな花を多数つける。花冠には濃い紫色の条が入り、4深裂し、皿状に開く。蒴果の実は直径3ミリほどの球形で、先がやや凹み、花柱が残る。写真はオオカワヂシャ(吉野町の吉野川河川敷ほか)。 時雨るるか友の恋歌ありし日の