大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年11月18日 | 植物

<2871>  大和の花 (937) アオツヅラフジ (青葛藤)                ツヅラフジ科 アオツヅラフジ属

                

 山野の林縁や道端などに生える落葉つる性の木本で、他物につるを巻きつけて伸びる。枝には淡黄褐色の毛が生え、つるは右巻きになる。葉は長さが3センチから12センチの広卵形であるが、変化があり、ときに浅く3裂するものも見られる。先はやや尖り、縁に鋸歯はなく、両面とも毛が生える。長い柄を有し互生する。

 雌雄異株で、花期は7月から8月ごろ。枝先と葉腋に小さな花序を出し、直径数ミリの小さな黄白色の花をつける。花弁と萼片は6個。雄花では雄しべが6個、雌花では雌しべが6個と仮雄しべが6個ある。核果の実は直径6、7ミリの球形で、粉白を帯びて濃青色になり、房状につくことが多い。核はイモムシが丸まった形になる。

 北海道、本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄に分布し、朝鮮半島、中国南部、フィリピン等に見られるという。大和(奈良県)では道端や林縁などでよく見られる。アルカロイドを含む有毒植物であるが、つるや根を木防已(もくぼうい)と称し、漢方では利尿の薬用とされる。

 また、つるの材は丈夫で、買い物かごや背負い籠を作るのに用いられ、用途が多く、カミエビ(神葡萄)の別称でも知られる。『万葉集』に見える「はまつづら」に本種またはハスノハカズラの説がある。エビはエビヅル(葡萄蔓)に因む。 写真は左から雄花をつけたつるの枝、花にはアリの姿、房状につき、熟した実。       柚子稔る机上に一顆を置いてみる

<2872>  大和の花 (938) ハスノハカズラ (蓮葉葛)                   ツヅラフジ科 ハスノハカズラ属

                   

 海岸沿いの産地に多い常緑つる性の木本で、地表を這ったり、他物に絡んで崖地などを被い尽くして生える。葉は互生し、長さが5センチから12センチほどの三角状卵心形で、先は鈍く尖り、縁に鋸歯はなく、裏面はやや白色を帯びる。長い葉柄を有し、ハスの葉のように葉身へ楯状につく特徴があり、和名に繋がった。

 雌雄異株で、花期は7月から9月ごろ。葉腋の花序に淡緑色の小さな花を多数総状にびっしりつける。花弁は3、4個。雄花の雄しべは6個で、花糸も葯も合着して、円盤状になる。雌花の雌しべは1個。核果の実は直径6ミリほどの球形で、11月ごろ赤く熟す。

 本州の東海地方以西、四国、九州、沖縄に分布し、台湾から東南アジア一帯に見られるという暖地性である。大和(奈良県)は海に面していないが、南端部の十津川村では熊野川水系の北山川の渓谷筋で見受けられる。

『万葉集』に見える「はまつづら」に本種の説があり、万葉植物として捉えられている。「駿河の海磯辺に生ふる浜つづら汝(いまし)をたのみ母に違ひぬ」(巻14-3359)とある。 写真はハスノハカズラ(十津川村の南端部)。雄花の花序が見える雄株のつる(左)、雄花のアップ(中)、熟し始めの核果(右)。    柚子の実の黄に照らされて我が齢