<1007> ブタナの花と蝶
豚菜咲く 蝶の楽園 とはなりて
今ちょうどブタナの咲く時期である。ブタナは西欧原産のキク科の多年草で、昭和初期に渡来し、現在では全国各地に広がりを見せている。いわゆる、帰化植物で、タンポポに似た黄色い頭状花をつけ、群生するので、辺り一面に見られることが多い。フランスで「豚のサラダ」と呼ぶことからこの名がつけられたと言われる。
ブタナはタンポポと同じく根生葉が特徴で、フランスの豚はこの葉を好んで食べるので「豚のサラダ」と呼ぶのだろう。英名はキャッツイアーで、これは毛の生えた葉から猫の耳を連想したのだと思う。因みに、花がよく似ているタンポポの英名はダンディライオンで、これは葉のギザギザの形からライオンの齒を連想したフランスの「ライオンの歯」から来ている名であるという。
これらの名はみな花によらず、葉の印象をしてつけられているのがわかる。これは家畜によって暮らしを立てていた命名当時の西洋人の目が、これらの草花に花ではなく、葉に向けられていたことが思われるところである。この例は、生活実感による命名で、和名にもうかがうことが出来る。
それはさておき、その花群には蝶がやって来て花から花へと飛びまわっているのが見られる。蝶は夢中になって花から花へと移って行くが、それを見ていると、白い蝶は花を巡って蜜を吸っている間に、花の色が染まって羽がだんだん黄色くなって行くような感覚に陥った。
蝶は一匹だけではなく、数匹見られたが、何か分担するように飛び交い、一面に咲いている花を漏らすことなく、次から次へと渡って行くように思われた。蝶には、多分、蜜がよく溜まっている花とそうでない花が見分けられるのだろう。もしかしたら、蜜に何らかの、例えば、匂いのようなものが発せられているのかも知れないと思えたりする。
どちらにしても、花と蝶は持ちつ持たれつの間がらにある。ブタナには新天地に違いない野原であるが、その明るい野原はブタナにとって好適地だったことが言えそうである。その好適地に歓迎する蝶がいた。こうして、また、新しい世界が組み立てられて行くことになる。 写真は一面に咲くブタナ(左)とブタナの花に止まる白蝶(少し黄色がかっている)。