<903> 幻想高松塚古墳
貴人らも おんもへ出たくなきか 春
極彩色の壁画で知られる特別史跡の高松塚古墳(奈良県明日香村)で、復元された円墳の墳丘をスクリーンにして壁画に描かれた青竜、朱雀、白虎、玄武の四神を映し出す映像が、二十二日夜、一般公開されるというので、見に出かけた。
墳丘は高さ五メートル、直径二十三メートルで、このスクリーン代わりの芝地に東西南北に設置した四機の映写機によって、三百六十度同時に映像を映し出すというもの。コンピュータグラフィックと映写機による「プロジェクションマッピング」と呼ばれる技法の映像芸術で、日英の映像作家二人が手がけた。 写真は高松塚古墳の墳丘に映し出された映像。左は南の入口から飛び出す朱雀の映像。
暗くなった墳丘に、古墳の入口が東西南北に映し出され、その扉が開いて、南の朱雀(鳳凰)、西の白虎、北の玄武、東の青竜がそれぞれの入口から出て来て、墳丘を巡った。晴の天気で、冷え込む夜だったが、見物に訪れた人たち(延べ約二千人)は幻想的な映像に見入っていた。一般公開は無料で、二十三日(日)と三月一日(土)、二日(日)の両日にも午後五時半から行なわれる。
なお、高松塚古墳は七世紀後半から八世紀前半にかけて造られた終末期古墳で、二段になった円墳である。昭和四十七年(一九七二年)に飛鳥美人と称せられる女性群像の極彩色壁画が発見され、一躍有名になった。被葬者については皇子クラスの人物が複数候補にあげられているが、はっきりしたことはわかっていない。
古墳は復元されたが、壁画は劣化が進み、切り取られて空調を施した別の場所で修理保管されている。壁画発見時に東西南北の守護神である青竜(東壁面)、朱雀(南壁面)、白虎(西壁面)、玄武(北壁面)の四神の壁画も見られたが、これも劣化が進み、保存管理の見直しがなされ、これも別の場所に移されている。