大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年02月05日 | 写詩・写歌・写俳

<886> 三輪山の麓を歩く

        椿咲く 三諸の山の 袖のうち 思ひはなどか 人の訪ひ来る

 今日は万葉の歌碑を訪ねて三輪山の麓に当たる桜井市三輪の大神神社から大美和の杜展望台付近を巡った。この辺りに建てられている万葉歌碑は飛鳥時代以前の詠み人によるものが多く見られるが、これは奈良に遷都するまで、大和の南部に都が展開し、神の山である三輪山をはじめとする青垣の山々が当時の人々に関心が持たれ、親しまれていたからではないかと思われる。

 今日は一段と寒さが増し、ときおり雪が舞う日だった。ウイークデーではあるし、この寒さでは人出もなかろうと思って出かけたが、大神神社は卜定祭(ぼくじょうさい)の日で、何となくあわただしく、山の辺の道も予想以上に歩く人が見られた。寒風荒ぶ展望台でも何人かの人に出会った。

              

  夏に咲く笹百合は冬眠中といったところで、影も形もなかったが、その傍に咲き始めたツバキが見られたので撮影した。赤と白の二品が寒さを突いて咲き出していた。ツバキは木偏に春と書くことでもわかるように、春に花を咲かせる花木であるが、早いものは今の時期に見られる。三輪山は古来よりツバキで名高く、『万葉集』にも三輪山だとされる三諸(みむろ)のツバキが詠まれている。

     三諸は 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲く 末辺は 椿花咲く うらくはし 山ぞ 泣く子守る山

 これがその長歌で、巻十三の3222番に登場を見る。詠み人は未詳で、歌の意は、「三諸は人が大切にする山で、麓の方ではアセビが咲き、頂の方ではツバキの花が咲く。泣く子をあやすように守って来たまことに美しい山である」というものである。この歌の歌碑については既にこのブログで紹介しているので、ここでは省く。写真は大美和の杜の紅白のツバキ。