大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年02月20日 | 写詩・写歌・写俳

<901> マスメディアに関する百の断章 (3)

        真実の欠片を掬ふ耳目あり 汝掬ひ尽くせざれども

 取材相手の虚偽が見抜けず誤報に至ったのは何故か。そこには取材の甘さが指摘されるところであろう。かつて何処かで述べたと思うが、ここで今一度、取り上げたい言葉がある。それは20世紀のドキュメンタリー映画制作者として知られ、記録映画の先駆者とも言われている英国人のジョン・グリーア―ソン(John Grierson)の言葉である。彼は情報を収集し伝える側にいる者がいかにあるべきかについて次のような言葉を掲げた。「Observe and analysis. Know and build. Out of research poetry comes.」 と。意訳すれば、「ものごとはよく観察せよ、そして、よく分析せよ。その分析に基づいてよく知り、よく認識せよ、そして、その認識したものをよく構築せよ。そうすれば、こうした一連の作業(調査)によって美しい詩が生まれて来る」ということになる。

 ここで言われている「詩」とは象徴としてあるもので、新聞で言えば記事であり、放送で言えば番組内容ということが出来る。命令形で発せられているこの言葉は、ドキュメンタリー映画制作者のグリーア―ソン自身に言い聞かせている言葉だと言えるところがあるが、報道に携わる者への教訓とも言える言葉であるのがわかる。この言葉の頭頭に「不十分な」という言葉を冠すれば、なお一層、この言葉を教訓的に捉えることが出来る。つまり、「不十分な観察と不十分な分析、その不十分な観察と分析による不十分な認識とその不十分な認識による不十分な構築からは、決して、美しい詩は生れて来ない」ということになる。ドキュメンタリーにおいて美しいとはその作品に真実が極められていることが基本で、それが叶えられているかどうかにかかっている。

                 

 ここでNHKの偽作曲家を取り上げた番組が思われるわけである。どんなに感動的に表現したとしても、取り上げた主人公である本人が偽物であるということになれば、その番組の感動は成り立たないことになる。これは、グリーア―ソンの言葉に返って言えば、観察の不十分、つまり、取材の甘さが指摘されて然るべきだと言うことになり、美しい詩は生まれないということになる。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、山に登らなければ山の花に出会うことは出来ない。耳而目之(耳で聞いたうえ、なお、目でそれを確かめる)。これは間違いのないようにする最適の方法である。しかし、聞いて聞こえず、見て見えずということがある。意をもって聞き、意をもって見なくては、聞けず、見えずということは大いにあることで、現場に立つことは基本であるが、先入観をもってあったり、上の空であったりすれば、そこに認識の欠落が生じて来る。まさに、この度のNHKの事例はこの点に当てはめて言えるのではなかろうか。

  今、NHKでは会長や経営委員の発言が問題視され、外部からの批判に曝されているが、こういうのを見聞きしていると、彼らが単にお飾りだという認識にあって、自分の置かれた責任ある立場というものを軽く見ているのではないかということが、その発言の端々に感じられるところが思われて来る。もっと責任を自覚し、この度の嘘番組などはきっちりと検証し、報告するくらいの仕事をしてもらいたいと思う。有耶無耶にするようなことはないだろうと思うが、いい加減な番組を作るという点、この嘘番組の問題は他の番組にも通じるわけで、極めて深刻だと言わざるを得ない。では、続けて、なお、以下、百の断章について。 写真はイメージ。アケボノツツジ(大峰山脈・大日岳付近で)とキンレイカ(天川村の大峯奥駈道で)

        記者クラブ・・・・・・・・不安と付和雷同のたまり場。

       レクチャー・・・・・・・・情報の統一。

       文化・・・・・・・・・・・・・精神的土壌に顕れる幻影的華やぎと静まり。気品は大切である。

       国家・・・・・・・・・・・・・主に国土と国民によって構成される支配体制。

       民主主義・・・・・・・・・多数決を基本とする。

       政治・・・・・・・・・・為政者に求められるのは公平無私が原則だが、星と剣。飴と鞭。その手法は昔も今も変わらない。

       外交・・・・・・・・・・・・・常に相手が存在するという認識。

       文芸・・・・・・・・・・・・一編の小説に涙することを思え。短歌も俳句も感銘をもって迎えられる。

       張り込み・・・・・・・・・推理(想像)と忍耐(我慢)。加えるに自負心(気概)。

       資料・・・・・・・・・・・・・救急車のごとし。必要なとき働きとなる。

       広報・・・・・・・・・・・伝える側も伝えられる側も有益と思われるもののみを扱う特質をして行われる公的な情報。

       カラー印刷・・・・・・・・光の三原色を絵の具の三原色に置き換える作業。

       ベタ記事・・・・・・・・・・確かに誰かが読んでいる。疎かには出来ない。

       調査・・・・・・・・・・・・・観察と分析と認識と表現。その不十分は人心を惑わすことになる。

       紙面・・・・・・・・・・・・・記者の矜恃と悲哀によって埋められる限られたスペ-ス。

       締切・・・・・・・・・・・・・新聞人の新聞人たるはこれを守ることに始まる。

       校閲・・・・・・・・・・・・・誤りは誰にも生じる。それへの対応。

       日本国憲法・・・・・・・⋆⋆⋆民主主義、自由主義、平等主義、平和主義、福祉主義、幸福主義。

       法律・・・・・・・・・・・・・国家的乃至は社会的秩序の維持を目的とし、公平を旨とする。

            教育・・・・・・・・・・・・・要請による養成。

       検閲・・・・・・・・・・・・・権力側の不都合を理由に行使する権力側の手段。

       戦争・・・・・・・・・・・・・相手の気持ちを最も理解しようとしない状況。

       芸術・・・・・・・・・・・・・個性と普遍性の一体化。

       スクラップブック・・・・⋆⋆⋆⋆開けば、例えば、潮の香。昔のなつかしさも見える。

       題字・・・・・・・・・・・・・信頼、責任、愛着、共感、威光、矜誇。

       いじめ・・・・・・・・・・・・他人を傷つけて自分の心を癒すやり方。卑怯、卑劣。

       情報・・・・・・・・・・・・・・左右するものと、左右されるものとによって成り立ち、働きとなる。

       ネタ・・・・・・・・・・・・・・水蜜桃にも似た芳しさ。早く賞味しないと誰かに嗅ぎつけられる不安の欠片。

       ルポ・・・・・・・・・・・・・足で書く。

       ドキュメント・・・・・・・⋆⋆体験的取材。

       地方・・・・・・・・・・・・・中央に対する存在の認識。

       人間・・・・・・・・・・・・・喜、怒、哀、楽、苦、悔、恨、愛、憎、疑、妬、信、義、礼、智。いつも笑っている者は狂人で、                いつも怒っている者は病人である。

       辞書・事典類・・天尾         ・・・・頼りになる伴侶。

       真実・・・・・・・・・・・・・事実を知ることは容易でない。だが、これを極めるのはもっと容易ではない。

       編集綱領・・・・・・・・・⋆⋆これを完璧に遵守すれば読者、大衆に愛される。

                                                              ~ 了 ~