<900> マスメディアに関する百の断章 (2)
頼りなき 耳目の頼りなさゆゑに 理解力とか 審美眼とか
報道の根本義は真実を伝えることにある。真実に近づくことは至難のことであるが、なるべくそれに沿うよう努力することでなくてはならない。知る権利、報道の自由の標榜、行使はこれが前提であり、これなくしては出来ない。然るに、最近、偽装の話があまりにも多く、報道がその偽装に巻き込まれ、偽装を助長するような事例が目につくところがうかがえる。
二〇一二年十月に起きたips細胞の心筋への臨床的応用の成功記事が偽の発表によるものであった誤報騒動などはもう忘れられてしまったのだろうか。その後も、人をたぶらかす偽装はあいも変わらずで、食についての偽装などがそこここに露見し、クローズアップされて来た。それが今度は、己自身が自らを偽装してかかるというに及ぶ偽装が露見した。この一件は偽装もここまで来たかと思わせるが、これは偽装の根深さと深刻さを物語る象徴的事例と見てよさそうである。言わば、この世の中は偽装だらけで、平気で人を騙すことがまかり通っていると言ってよく、何かうすら寒いような気分にさせられる。
こうした偽装の横行を食い止めるには、暴くのが効果的で、報道の役目もそこにあるはずであるが、それが出来ずにいるばかりでなく、NHKのごとくマスメディア自身が率先してその偽装を助長し、広めて行く結果をもたらしている。このマスメディアの体たらくは問われて然るべきであるが、この問題の解決には何よりメディア人自身の引き締めが必要であると言える。で、メディア人への鞭撻の意味も込めて、この断章の掲載に及んだ次第である。 写真は誤報の記事(左)とそれを伝える記事(右)。では、以下、断章の続きを。
インタビュー・・・・取材の基本。相手の持つ情報、心情を如何に探り得るか。
社説・・・・・・・・・・陣は常に民衆のために張られなければならない。
デスク・・・・・・・・・記事完成への非情の営み。
外電・・・・・・・・・・異国の素材による料理。
裁判・・・・・・・・・・その限界は神的存在の顕現を願望させる。
風俗・・・・・・・・・・例えば、六波羅風。例えば、竹の子族。
世相・・・・・・・・・・社会が作り出す風潮。
大衆・・・・・・・・・・混濁。掴みどころのない従順。従順はときに反逆的に現れることもある。
マスメディア・・・・老若男女を問わず、すべての人に同じシャツを着させるという発想によって成り立っている。
経済・・・・・・・・・・私たちは私たちの収入のうちでやり繰りしている。これが原則にある。
社会・・・・・・・・・・個々の長所と短所がある秩序において流動するところの総体。
海外・・・・・・・・・・日本は海に囲まれた島国である。
犯人・・・・・・・・・・本人に問う。不安はないか。悔恨はないか。
死亡記事・・・・・・墓碑銘の無料公開。
反骨精神・・・・・・逆光の花。
差別・・・・・・・・・・心の中の自尊が外界に抵触するとき、その落差によって生じる意識。
速報・・・・・・・・・・・誰よりも早く知っておきたいという欲求への対応。
知る権利・・・・・・・知られたくない権利との衝突。
人権・・・・・・・・・・・誰にも公平にある人間としての尊厳。
娯楽・・・・・・・・・・・人生はある種の辛苦なくしては営めないということへの逆説的意味。
名刺・・・・・・・・・・・矜持と処世の申し子。王様と乞食は持ち合わさない。
投稿・・・・・・・・・・・新聞のバロメーターNO.1。
広告・・・・・・・・・・・新聞のバロメーターNO.2。
部数・視聴率・・・・一人でも多くの人に読み(聞き)してもらいたいという理念、あるいは欲望の現われ。
天気予報・・・・・・・日々刻々を支配する自然の移り気を読み取り伝える作業。
取材・・・・・・・・・・・五官の働き。
ノート・・・・・・・・・・・行間の微妙は誰にも分からない自分ひとりのもの。
メモ・・・・・・・・・・・・健忘症の知恵。
言葉・・・・・・・・・・・・おもしろくもあれば、恐ろしくもある比喩的存在。もしくは、象徴的存在。
民意・・・・・・・・・・・・民主主義が行き届いた世の中では、政治に反映される。
活字・・・・・・・・・・・・宝玉と思えば宝玉。宝玉と思いたい。
電話・携帯電話・・・⋆⋆人を近づけた功。人を遠ざけた罪。その影響力は大きい。
パソコン・・・・・・・・・・デジタルで機能する万能の箱。手足はカーソルとキーボード。
インターネット・・・・・量と速さ、双方向性。それらを有する情報社会の革命的な機能。
ジャーナリスト・・・・⋆門外漢。出来事によって論を展開する宿命。その仕事は慈愛をしてあらねばならない。
~次回に続く~