大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2013年02月07日 | 創作

<524> 短歌作品  「姫」

       子供でもなく大人でもないような私は十九 姫と呼ばれる

 この間、藤原定家の女性になり切って詠んだ『百人一首』の歌に触れたので、私も十九歳の乙女になって詠んだ歌を紹介したいという気になった。まさしくこれは幻想短歌で、短歌の世界では邪道と言われそうであるけれども、私には楽しんで作った一連である。触発されたモデルがないわけではないが、それはほんの瞬きのような一瞬の光景より膨らんで来たもので、構想は幻想の何ものでもない。このような短歌もあってよいのではないかと思い想を巡らせた次第である。以下はその短歌二十一首。題して「姫」。平成二十二年ころの作である。  写真はイメージ。

                           

     ハムエッグに緑を添えてトーストに牛乳オレンジ 朝のひととき

    朝の雨 レースのカーテン越しに聴く さらさら小川のように降る雨

    変化するものと変化しないもの コーヒーにミルクを入れつつ思う

    さわやかな朝です 窓を開け放つ こころはフィット幸せ気分

    さやさやと自転車漕げばさやさやと灘よりの風髪を靡かす

    カーテンを揺らし緑香を入れている初夏の風 魔法のように

    ほととぎす来鳴いて思う 昔から愛されてみな来ているのです

    「産」という文字が好きです なぜならば 豊かな気分にしてくれるから

    高がジグソーパズルか知らず懸命になる人 あなたの横顔が好き

    湧き上がる雲の白さに照らされて 自転車を漕ぐ私は十九

    夏雲が海の彼方に盛り上がる ブライダルベールのような形に

    遥々と寄せ来る波のその間合い 微妙に違って見える楽しさ

    水溜りをぽいっと越えて 近道をあなたの許へ 行く夢の中

    大人とは二十歳に至ることとして 昨日あり今日そして明日へ

    河口町 私の好きなこの町は 胸が塞いでいても広々

    私(わたくし)というカルチャーに今宵降る 宇宙飛行士の宇宙よりの声

    電柱も並木も犬もまた明日 夕焼け小焼けに染められている

    野の菊を一輪挿して晩秋の部屋に私は美しくいる

    幸せはちょっとでもいい 日常のどこかに触れていてくれるなら

    水鳥も茜の雲も枯れ葦も私も冬とカップルでいる

    電柱にぽっと点っている灯り みんなどこかで繋がっている