東京多摩借地借家人組合

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全借連第1回オンライン学習会 借家の相談事例から民法改正を学ぶ

2022年04月12日 | 法律知識
 全借連は第1回オンライン学習会を3月12日に開催し、7組合から21名が参加し、多摩借組から役員と組合員7名が参加しました。講師は東借連常任弁護団の瀬川宏貴弁護士で、借家の相談事例から民法改正問題について学習しました。

借家の相談事例から①修繕、②保証人、③更新料について、東借連常任弁護団の瀬川宏貴弁護士より具体的な相談事例に基づいて民法の改正のポイントを講演してもらいました。

 借家の修繕では、家主に督促してもやってくれない

 賃借人が修繕できる場合の要件として、『⑴賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、叉は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、⑵急迫の事情があったとき』に修繕ができます。

修繕費の請求と家賃減額は慎重に

 賃借人が立替えて行った修繕費は費用償還請求ができることになっていますが、修繕費の金額について争いがある場合には慎重な対応が必要です。また、賃借物の一部が滅失した場合などで、従前は賃料の減額を請求できるから民法改正で「使用収益ができなくなった部分の割合に応じて減額できる」となりました。しかし、どの程度の金額まで減額ができるのか、判断が難しく勝手に賃借人が家賃を減額したり、賃料を支払わないという対応については慎重な対応が必要です。裁判所の調停を申し立てるなどの対応が必要になるのではないかとの説明がありました。

 勝手に減額すると、賃貸人から賃料不払いで明渡しを請求されることもあるので、やはり組合の弁護士との相談をお勧めします。保証人の問題では、2020年4月1日以降に賃貸借契約や保証人との契約を結ぶ場合には、極度額を定めないと根保証契約は無効となります。組合員の皆さんからも管理している不動産会社から極度額について規定が設けられたとの相談はよくあります。日野市の組合員は、家賃の10カ月分の極度額を定めた「連帯保証人引受承諾書」に署名捺印を求められたケースがあります。不動産業者からは家賃の2年分の極度額を要求する事例が多いようですが、裁判所の判決における連帯保証人の負担額の調査では平均家賃の13・2カ月とされ、一応の目安とされています。日野市の組合員の家賃の10カ月はこの範囲内で妥当な額と考えられます。

法定更新でも更新料支払う特約

 相談事例の最後に更新料の事例を学習しました。

最近組合で相談を受けた更新料の事例では、借地の契約書に「期間満了による更新(法定更新を含む)の場合、乙は甲に対し、甲乙間の協議により取り決めた更新料を支払うものとする。但し、甲乙間で協議ができない時は、不動産鑑定士の鑑定価格をもって、更新料額とする。鑑定費用は甲乙折半とする」と明記されていました。最近の借地借家の契約書では、「合意更新・法定更新に関わらず更新料として○○○円を支払う」が多くなっています。

 契約の更新について、賃貸人が更新を拒絶するには正当な事由がない場合には、法律上契約は更新がされ、賃借人が更新料を支払わないからとの理由で更新を拒否することはできません。更新料を支払うことを契約の更新に義務付けることはあってはならいことです。ましては、法定更新を選択しても更新料を支払うなど、とんでもない話です。お金を払えない借主は更新させないことになってしまいます。地主や賃貸人にそんな権限ないはずです。

 更新料について裁判所の判断は、契約書に「一義的で具体的な更新料を支払う特約」は有効とされ、更新料の支払い義務を残念ながら認めています。

 先の例のように、「協議により取り決めた更新料を支払う」などいくら支払うのか明確でない特約については支払い義務を認めていません。更新の際には、契約書に更新料をいくら支払うか明確な特約を結ばないよう注意しましょう。ぜひ、契約書を結ぶ前に組合にご相談ください。(東京多摩借地借家人組合ニュース4月号より)

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