東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

雨漏りを修理しない家主に賃料を半額で提供

2007年06月30日 | 増改築と修繕
 葛飾区内で美容業を営んでいる近藤さんは、1年前より雨漏りの修繕工事を貸主に要求してきた。1階は雨が壁を伝わり、2階はポトリポトリと数箇所において桶をいくつか置く始末。畳は使い物にならず、再三貸主に修繕を要求したが工事は始まらない。

 リフォームの工事業者が見積もりをしても家主と金額で合意できず、一向に工事を実行に移す事はなく畳のカビに悩まされ、2階は使用不能。この間現家賃8万5千円を支払うことに納得できず、再度期日までに雨漏りストップの工事を完了しない場合には賃料を2分の1とする旨を文書で通知した。

 家主はこれに対し無視の態度をとった。近藤さんは貸主代理人に賃料の半額を持参。代理人はしぶしぶ受領した。その後半年家主より何の反応もない。半額の賃料提供については争ってもよいと心に決めた賃借人の実力行使である。



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「民間賃貸住宅実態調査」結果公表/国交省

2007年06月29日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
国土交通省(国交省)は29日、民間賃貸住宅における連帯保証人や各種一時金等の市場慣行の状況、賃貸住宅の管理および維持・修繕に関する状況についての実態調査を実施、その結果を公表した。

 調査時期は2007年3月、調査対象は賃貸住宅管理会社、賃貸住宅経営者(家主)。調査は事業者向けが、配布件数934件、回収率は21.8%。家主向けは、配布件数500件、回収率は36.6%。

 調査結果に「礼金を徴収する主な理由」ついては、賃貸住宅管理会社は、「一時金収入として見込んでいる」が、57.9%で一位となった。一方、家主では、「損耗を補修するための財源」が52.4%で1位、「長年の慣習」が40.2%で2位となった。
 また、「大規模修繕を実施する予定がない主な理由」として、賃貸住宅管理会社は、「大規模修繕に対する知識等が不足」が52.2%で1位となった。一方、家主では、「修繕費用の家賃での回収が難しい」が47.4%で1位となった(詳細は国交省ホームページに掲載)。

 国交省では今後、こうした実態調査の結果を踏まえて、「賃貸住宅標準契約書」における連帯保証人の取り扱い等の見直しについて検討を進めていくとともに、賃貸住宅における適正な管理、計画的な維持・修繕の推進を図るため、必要な施策の検討を行なっていくとしている。
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地代家賃を受領拒否された場合の供託する手続き教えてください

2007年06月29日 | 地代家賃の供託
1 弁済供託について
土地・建物等の借主は,地主・家主等の貸主からの賃料の値上げ要求等を不
当とする場合に,相当と認める額の賃料を提供し,その受領を拒否されたとき
は,相当と認める額の賃料を「受領拒否」を供託原因とする弁済供託をするこ
とにより,賃料債務を消滅させることができます。

2 「受領拒否」の場合の供託原因
弁済供託によって債務を消滅させるためには,供託原因が必要です。供託原
因としての「受領拒否」とは,例えば,債務者である借主が,弁済期日に弁済
の目的物を債権者である貸主の現在の住所地に持参して受領を催告するなど,
債務の本旨に従った適法な弁済の提供をしたにもかかわらず,貸主がこれに応
じなかった場合をいいます。したがって,「受領拒否」を供託原因として供託
する場合には,借主は,供託をする前にまず貸主に対して弁済の提供をする必
要があります。
なお,例えば,貸主が賃貸借契約そのものの存在を否定して明渡訴訟が係属
中である場合等,口頭の提供をしても債権者が弁済の受領をしないことが明ら
かである場合は,弁済の提供をすることなく供託することが可能な場合もあり
ます。
ただし,家賃の値上げを要求されたというだけでは,債権者による「受領拒
否」が明確であるとはいえず,弁済の提供が必要です。
したがって,受領しない意思が明確か否かは,個別の事案により判断するこ
とになります。

3 供託手続
供託をする場合には,地代・家賃弁済供託用の供託書の書式(各供託所に備
え付けられています)に必要事項を記載し,これに供託物を添えて,債務の履
行地の供託所(債務の履行地に供託所がない場合は,その最寄りの供託所)に
おいて供託の手続を行う必要があります(インターネットを利用して供託をす
ることも可能です。詳しくは,法務省ホームページの「オンラインによる供託
手続」( http://www.moj.go.jp/MINJI/minji67.html )を御覧ください。)。
供託金の提出方法等については各供託所にお問い合わせ下さい(供託所一覧表
については,情報番号8051で御案内しています。)。

4 供託書の記載方法
- 2 -
(1) 「申請年月日」欄
供託所に供託書を提出する年月日を記載します。
(2) 「供託所の表示」欄
供託所(法務局・地方法務局若しくはこれらの支局又は法務大臣が指定す
るこれらの出張所)の名称を記載します。
(3) 「供託者の住所氏名」欄
供託者(借主)の住所・氏名を記載します。代理人によって供託する場合
には,供託者の住所・氏名の下に代理人の住所及び資格・氏名を記載します。
(4) 「被供託者の住所氏名」欄
被供託者(地主等の貸主)の住所・氏名を記載します。
(5) 「供託により消滅すべき質権又は抵当権」欄
供託により消滅すべき質権又は抵当権がある場合には,当該質権又は抵当
権を具体的に記載します。
(6) 「反対給付の内容」欄
供託による債務の弁済と同時履行の関係にある被供託者の反対給付がある
場合には,当該反対給付の内容を記載します。
(7) 「供託金額」欄
供託金額を記載します(供託金額の記載の訂正はできません。誤記した場
合は,書き直しをお願いします。)。
(8) 「法令条項」欄
弁済供託の場合には,法令条項として「民法第494条」を記載します。
(9) 「供託の原因たる事実」欄
ア賃借の目的物
土地の場合にはその所在,地番,地目及び地積を,建物の場合にはその
所在地番,家屋番号,種類,構造及び床面積等,土地・建物を特定できる
ように記載します。
なお,土地・建物の一部の場合には,その部分が特定できるように,例
えば「2階部分全部75平方メートル」のように記載します。
イ賃料
契約で定められた賃料を記載します。電気料等,契約によって賃料と一
緒に支払うことになっている場合は,備考欄にその内容を書いて一緒に供
託することができます。
ウ支払日
契約で定められた支払日を記載します。支払日が到来していないときは,
供託することができません。
エ支払場所
- 3 -
契約で定められている支払場所を記載します。
オ供託する賃料
「いつの支払期の分」であるかを記載します。既に支払期の到来してい
る数ヶ月分の賃料をまとめて供託することもできます。
なお,遅延損害金を含めて供託することが必要となる場合があります。
カ供託の事由
供託の事由を記載します。「受領拒否」の場合は弁済の提供をした日を
記載しますが,契約で定められた支払期日より前に提供しても,債務の本
旨に従った提供とは認められないため,この場合には供託はできません。
なお,支払日に提供をしていれば,供託するのは後日でも差し支えあり
ません。
(10) 「備考」欄
該当欄に記載事項の全部を記載することができないときは,備考欄に記載
することができます。

5 供託に必要な提示書面・添付書類
(1) 会社等登記された法人が供託しようとするときは,登記所の作成した代表
者の資格を証する書面を提示してください。それ以外の法人が供託しようと
するときは,関係官庁の作成した代表者の資格を証する書面を供託書に添付
してください。
(2) 法人でない社団又は財団であって代表者又は管理人の定めのあるものが供
託しようとするときは,社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管
理人の資格を証する書面を供託書に添付してください。
(3) 代理人が供託しようとするときは,代理人の権限を証する書面(委任状等)
を提示してください。
(4) 上記(1)から(3)までの書面で登記所その他官公署の作成したものは,作成
後3ヶ月以内のものでなければなりません。
(5) 供託所が,当該法人の登記を取り扱う供託所と同一の法務局(東京,大阪
及び名古屋の各法務局を除く。)又は地方法務局の本局,支局又は出張所の
場合には,上記(1),(3)の書面に代え,「簡易確認」の方法によることがで
きます。「簡易確認」の手続については,情報番号5108の3(1)で御
案内しています。
(6) 被供託者に送付する供託通知書の発送を供託所に依頼する場合には,被供
託者の人数分の通知用封筒(宛名を記載し,郵便切手等をはったもの)の提
出が必要です。



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本日出張のため、相談はお休みします。
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ネットカフェ難民が全国に拡大 若者に住宅扶助を

2007年06月28日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 ネットカフェを生活の拠点とする若者が全国で拡大している。個人加盟の労働組合、首都圏青年ユニオン(伊藤和己委員長)が10都府県のネットカフェで実態調査したところ、全ての都府県でネットカフェ難民がいることが分かった。
 同ユニオンでは、宮城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知、奈良、大阪、兵庫、福岡の10都府県の34店舗の周辺で若年層の客にアンケートをしている。
 利用者からは「家がなく、計2年ぐらい泊まっている。アパートの契約更新をする金がなかった」(東京、24歳男性)、「半年間、ほとんど毎日泊まっている。実家が近くにあるが、自立しなければと思うと居づらい。でも派遣社員なのでアパートを借りるほど収入がない」(同、27歳男性)。また、正社員でありながら、長時間労働で帰宅できないために日常的にネットカフェを宿泊として利用している若者が相当数いることも分かった。
 長時間労働や非正規雇用の増加など若者をとりまく労働環境や貧困問題が深刻化しているのが現実だ。トヨタ自動車など大企業が史上空前の儲けを上げる一方で、人件費抑制のため「偽装請負」など非正規雇用を増やし、青年たちを機械の部品のように使い捨てにする世の中はどう考えてもおかしい。せめて、家賃など住宅への手当てを国や自治体は考えるべきだ。


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民間デベロッパー優先の規制改革会議の第1次答申 

2007年06月27日 | 政治経済
5月30日、政府の規制改革会議は、「規制改革推進のための第一次答申」(以下「答申」)を行いました。
 「答申」によると、住宅・土地分野では、「都市空間の有効利用や市街地環境整備のための制度の見直し、都心集積を促進することにより、活力に満ちた経済効率性の高い都市を創造する」そのために「さらなる改革が求められる事項について、精力的に調査・審議を進めてきた」と問題意識を示しました。
 そして、11項目の具体的施策をあげています。その中で、区分所有の住宅の建替が確定した場合、その住宅の賃借人(借家人)は借地借家法の「正当事由」を適用せず、土地収用法の損失補償(二年程度の家賃差額補償と移転費補償)で明け渡しを求めることができる制度を平成20年度までに創設することが検討されています。これによって、建替が確定した区分所有の住宅の借家人は立ち退き料と引換えに解約されることになります。
 また、公営住宅では、収入超過者に対する家賃を近傍同種の市場家賃の水準にすることを措置するとしています。同時に許容規模を超え居住者へは、住み替えを誘導するとともに割増家賃制度を義務付けるとしています。
 さらに、不動産業界の取引を円滑にすることを口実に「宅地建物取引業法」や「不動産登記法」を「改正」することも検討しています。
「答申」は、定期借家制度の見直しについて、従来の改悪項目をあげ、「平成19年以降逐次実施」することを提言しました。
 これらの提言は、住宅土地政策が民間デベロッパー優先の施策を強める方向を明らかにしたものです。



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供託とはどのような場合にしなければならないのですか

2007年06月26日 | 地代家賃の供託
 供託とは,供託者が供託物(金銭,有価証券振替国債等)を国家機関である供
託所に提出してその管理を委ね,供託所を通じて,被供託者に受領させることに
より,一定の法律上の目的を達成しようとする制度です。
供託は,法令に供託を義務付けまたは許容する規定がなければすることはでき
ません。これを定めた法令の条文(供託根拠法令)は,民法,民事訴訟法,民事
執行法等,非常に多くのものがあります。
供託は,供託物の種類により,金銭供託,有価証券供託,その他の物の供託及
び振替国債供託に大別されます。また,供託によって達成しようとする目的,す
なわち供託原因により大別すると,次のとおりです。
1 弁済供託(根拠規定民法第494条)
金銭その他の財産の給付を目的とする債務を負担している債務者が,その債
務を履行しようとしても,債権者が受領を拒んだり,債権者の住所不明により
その受領ができなかったり,あるいは債権者が死亡し,その相続人が不明であ
る等債務者の過失によらないで債権者を確知できない等の理由により,その債
務の履行ができないときに,債務の目的物を供託所に供託することによって,
債務を免れることができます。
2 保証供託
(1) 営業保証供託(根拠規定宅地建物取引業法第25条,割賦販売法第16
条,旅行業法第7条等)
営業保証供託は,営業者がその営業活動により生ずる債務ないし損害を担
保するためにする供託です。
宅地建物取引業,割賦販売業,旅行業等取引の相手方が不特定多数で取引
活動も広範かつ煩雑であって,取引の相手方に対し,取引上の損害を与える
おそれのある営業については,その業務開始に際して,それぞれの法令に定
められた一定の金銭等の供託が義務付けられています。これは,その営業活
動に伴って債権を取得する債権者や損害を被る被害者を保護するために設け
られている制度といえます。
(2) 裁判上の保証供託(根拠規定民事訴訟法第75条第1項,民事執行法第
10条第6項,民事保全法第14条第1項等)
訴えの提起,強制執行の停止若しくは続行,仮差押え,仮処分の執行又は
取消し等当事者の訴訟行為又は裁判上の処分に関連して,当事者は,自己の
- 2 -
負担とされる訴訟費用の支払を担保し,又は自己の訴訟行為により相手方に
生ずる損害等を担保するため,担保の提供を要求されることがあります。
3 執行供託(根拠規定民事執行法第156条第1項,第2項等)
従業員の給与が差し押さえられた場合等のように,金銭債権について裁判所
から差押命令の送達を受けた場合,当該金銭債権の債務者(以下「第三債務者」
といいます。)は,その金銭債権の全額に相当する金銭を供託することができ
ます。
また,同一の金銭債権について重複して差押命令の送達を受けた場合には,
第三債務者は金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければなりません。
これらの供託を執行供託といいますが,これらの供託がされると,裁判所に
よる配当手続が開始され,配当表が作成されて各債権者に配当額の支払が行わ
れることとなります。
4 没取供託
法の目的を実現するために,一定の金銭等を供託させ,一定の事由が生じた
ときは,供託物に対する供託者の所有権を取り上げて,これを国家に帰属させ
ることとする供託をいいます。
例えば,公職選挙法第92条による公職の立候補のためにする供託がありま
すが,これは,立候補の濫用防止のため,候補者が一定の得票数に満たなかっ
た場合や,途中で立候補を辞退した場合に,国又は地方公共団体がその供託金
を没取するとするものです。
5 保管供託
目的物の散逸を防止するため,供託物そのものの保全を目的としてされる供
託をいいます。
例えば,銀行,保険会社等の業績が悪化して,資産状態が不良となった場合
に,その財産の散逸を防止するため,監督官庁が当該銀行等に財産の供託を命
ずる場合の供託がこれに当たります(銀行法第26条等)。
供託された供託物は,供託者である銀行等が破産すれば,破産管財人によっ
て供託物の取戻しがされ,破産財団に組み入れられ,銀行等の債権者の債権へ
の弁済に充当されることになりますから,前記の弁済供託又は保証供託の機能
を有するものといえます。


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アパートの契約期限がもうすぐ切れる、大家から立退きを請求されたが

2007年06月25日 | 明渡しと地上げ問題
Q もうじきアパートの契約期限が切れます。私は更新して住み続けたいのですが、 大家さんからは立ち退くように言われています。大家さんには別に家があります。これまで7年の間、 家賃の支払いが3回くらい遅れたことはありますが、今は特に滞納はありません。引き続き住むことはできますか。

A 借地借家法によれば、通常の借家契約では、大家さんが更新を拒絶しようとする場合は、正当事由が必要とされ、 「賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情」、「賃貸借に関する従前の経過」、 「建物の利用状況」など具体的な判断基準が明示されています。詳しい事情はわかりませんが、大家さんには別に家があり、 自ら入居しようということではなさそうですので、ひどく老朽化したので建て替えざるを得ないなど、ほかに特段の事情がなければ、 正当事由はないと思われます。
 また、過去7年間に3回程度の家賃の滞納があっても、現在滞納がなければ、契約の解除事由には当たりませんので、今後もアパートに住み続けることは可能と思われます。



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土地賃借権の時効取得が認められた事例

2007年06月23日 | 最高裁と判例集
土地賃貸借権の時効取得が認められるとされた事例 (最高裁昭和62年6月5日判決)

 (事実)
 賃借人は昭和25年5月に平野善徳から建物を買い所有権移転登記受け、土地は地代年1600円の約束で賃借して地代を平野善徳に支払っていたが、昭和55年になると、磯野吉太郎という人から、土地の所有者は自分であるから建物を収去して土地を明渡して貰いたいと要求された。

 登記簿上の所有名義は磯野吉太郎になっていた。賃借人は、所有者でない人から借地したわけであるが、土地所有者からの土地明渡請求に対して賃借権を時効取得したので明渡す義務はないと争った。

 1・2審とも賃借人の時効取得の主張が認められ、最高裁判所も賃借人の主張を認めた。

 (判決要旨)
 他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときには、民法163条により、土地の賃借権を時効取得するものと解すべきことは、当裁判所の判例(*)とする所であり、他人の土地の所有者と称する者の間で締結された賃貸借契約に基づいて、賃借人が平穏公然に土地の継続的な用益をし、かつ、賃料の支払いを継続しているときは、前記の要件を満たすものとして、賃借人は、民法163条所定の時効期間の経過により、土地の所有者に対する関係において右土地の賃借権を時効取得するに至ると解するのが相当である。

 これを本件についてみると、本件土地は、磯野泉蔵の所有であったが磯野吉太郎が相続したこと、昭和3年に磯野泉蔵から土地の提供を受けて平野定次が建物を建てて居住していたところ平野善徳が建物を相続したこと、賃借人は昭和25年5月12日平野善徳から建物を買受け、土地については賃貸借契約を結び、平野善徳に賃料を支払って居住してきたこと、昭和55年まで磯野吉太郎から土地の明渡しを求められたことがなかったこと、以上の事実関係のもとにおいては、賃借人の本件土地の継続的な用益が賃借に基づくものであることが客観的に表現されているものと認めるのが相当であるから、20年を経過した昭和45年5月12日に土地賃貸借権を時効取得したものということができる。

 (解説)
 賃借権も時効取得できるということが最高裁判所の判例になっている。時効というのは、既成事実が長期間続くと無権利者も権利者に変えてしまう効力がある。それだけに、裁判の実際では、時効を認めてもらうのは簡単ではない。    1988.4.


(弁護士 川名 照美)


東京借地借家人新聞より

  
(*)最高裁昭和43(1968)年10月8日判決がある。


(所有権の取得時効)
第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
(所有権以外の財産権の取得時効)

第163条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。


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借地借家問題市民セミナー 明日吉祥寺で開催

2007年06月22日 | 借地借家問題セミナーと相談会
東京多摩借地借家人組合は、下記の日程で「借地借家問題市民セミナー」を開催します。

日時 6月23日(土)午後1時30分開会

会場 武蔵野公会堂・第4会議室〈JR吉祥寺下車徒歩3分〉

講師 東京多摩借地借家人組合 事務局長 細谷 紫朗

講演 「借主の知って得する借地借家の法律知識」

参加無料 会場に直接おいで下さい。

 講演終了後、質問・相談を受付けます。

問合せ 東京多摩借地借家人組合
  
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賃貸借契約する前にキャンセルしたら違約金を取られたが

2007年06月21日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
Q 今度1人暮らしを始めようと思い、気に入ったアパートが見つかり来週契約することにしました。詳しい説明は受けていませんが、不動産屋から事前に敷金等を振込むように言われて振込みました。しかし、親が急に入院することになり、不動産屋に契約できないと連絡したら「違約金として家賃の1か月分を差し引きます」と言われました。違約金は払わなければならないものでしょうか。

A 契約が成立しているかどうかで、返還される金額は変わってきます。重要事項説明も受けて、借主が契約書に押印し、貸主も契約締結を承諾している状況で、敷金等を振込んでいれば、契約は成立していると思われます。その場合には、契約に従い、敷金等の清算が行われます。ご相談の内容ですと、重要事項説明も未実施であり、契約締結前の申込みの段階と考えられます。宅建業法では、宅建業者は取引の相手方が申込みの撤回を行った場合は、受領した預り金を返還しなければならないと規定しています(宅建業法47条の2第3項)ので、今回のように申込みの段階であれば自己都合で撤回しても、違約金は発生しませんし、不動産業者は、預かった敷金等を全額返還する必要があります。



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仲介手数料は家賃の0・5が月分が原則

2007年06月20日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
不動産業者は居住用建物の賃貸借の仲介料として家賃の1か月分相当の報酬を借主に充分な説明もせずに当然のように要求する。しかしこれは宅建業法に違反する不当行為である。
 建設省は、昭和48年5月28日付で宅地建物取引業法により禁止されている不当行為を行わないよう都道府県へ業界の指導監督を強めるように通達した。

  〈建設省通達〉
  賃貸借の媒介に関する報酬の遵守について

 宅地建物取引業者が宅地建物の売買、交換又は貸借の代理、または媒介に関して受けることのできる報酬の額については、宅地建物取引法第46条第1項の規定に基づき、昭和45年10月23日建設省告示第1552号で定められ、同年12月1日から施行され数年を経過したところであるが、これが必ずしも遵守されていない。

 特に同告示第3の居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関する報酬の額については、依頼者である借主の1カ月に相当する金銭を報酬として当然に要求、受領する事例が多く見受けられる。また借主から媒介の報酬として借賃の1カ月相当分を支払うことにつき承諾を得た場合であっても、その取引経過から見て必ずしも貸主の自由な意思に基づく承諾がなされたと認められない取引もある。特に媒介者が契約の締結に際し、媒介の報酬として借賃の1カ月分に相当する金銭を支払う旨の特約を一方的に定め、物件説明書等に記載してる場合には、正規の報酬が原則として1カ月の借賃の2分の1であることを説明しないこととあいまって承諾が借主の無知に乗じてなされる結果となっている。 

 したがって報酬額の制限を超過して受領し束愛、及び承諾を得て借賃の1カ月相当分を報酬として受領した場合であっても、当該承諾が借主の無知に乗じ不当になされたと認められる場合には、宅地建物取引法第46条第2項、違反又は第65条第2項第5号の規定に該当するものとして厳重な監督処分を行うので当該告示の遵守について留意されたい。

  賃貸借物件の管理について

 最近、賃貸借物件の仲介あっせんの延長として、賃料の集金をはじめ賃料値上げの手続きその他貸主の代理としての賃借人との交渉事項を含めた賃貸借物件の総合管理を貸主より受託している業者が増加している傾向があり、そのために賃貸借物件の管理、特に賃料の値上げ交渉を中心とするトラブルに宅地建物取引業者が介在することについての苦情相談が増加している。

 もとより賃貸借物件の管理そのものは、宅地建物取引法の適用外のことであり、基本的に民事上のことと判断できるが、その管理に際して対応する賃借人は、宅地建物取引業者としての仲介あっせんにより、入居されている顧客であることを考えると、専門的な知識を有する宅地建物取引業者が一方的に代理として貸主の側に立って賃料値上げ等の交渉を行ってトラブルを生ずることは、宅地建物取引業法第31条に規定している業務処理の原則に背くものであるといわざるを得ない。

 したがって、賃貸借物件の管理については、一方に偏することのないよう十分留意の上業務に当られたい。

    以上が昭和45年建設省(国土交通省)告示第1552号のいわゆる報酬規定である。
 消費税の総額表示実施に伴い、平成16年2月18日に改正され、4月1日から施行された。
 それに伴い消費税5%が加算され上記の「1か月分に相当する金額」が「1か月分の1.05倍に相当する金額」、「1か月分の2分の1に相当する金額」が「1か月分の0.525倍に相当する金額」に改定された(平成16年2月18日国土交通省告示第100号)。



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返還されない敷金を少額訴訟で取り戻したい

2007年06月19日 | 裁判と調停
Q 東京23区内のアパートを最近出て、今は他県に住んでいます。敷金は28万円でした。特に汚していないのに、敷金返還額は5万円と原状回復のガイドラインとはかけ離れた内容でした。弁護士に頼らなくても、少額訴訟は可能と聞きましたが、具体的にどこへどう起こせばいいのでしょうか。

A 少額訴訟は、原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に起こすことになります(敷金返還請求のように、不動産に関する請求の場合にはその不動産の所在地を管轄する簡易裁判所にも訴えることができます)。ご質問のケースでは、「東京簡易裁判所」でよいと思われますが、詳しくは最寄りの簡易裁判所にご確認ください。また、訴訟を起こすには、訴状や申立手数料、郵便切手などが必要ですが、訴状の書式やその記入例などは裁判所のホームページでも入手できますので参考にしてみてはいかがでしょうか。少額訴訟の書式の書き方や手続きについては借地借家人組合にご相談下さい。



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消費者団体訴訟制度が6月からスタート

2007年06月18日 | 消費者トラブルと消費者契約法
5月17日、全国消費者団体連絡会二〇〇七年度第1回全体会議が開かれました。
学習講演では佐々木幸孝弁護士と中村雅人弁護士が、消費契約法とPL法の改正における課題について講演しました。
 消費者契約法は、2001年4月から施行されている比較的新しい法律です。
消費者被害は、消費者契約法が議論されていた1998年度42万件から2005年度127万件と増加しています。消費者被害が増え、消費者契約法は消費者団体訴訟制度を盛り込んだ一部改正がされ、2007年6月施行されました。
 2005年4月作成の消費者基本計画により、消費者契約法施行後の状況について分析・検討するとともに消費者契約に関する情報提供、不招請勧誘の規制、適合性原則等について、あり方も含め幅広く検討し、インターネント取引の普及に対応するため、平成19年までに一定の結論を得るため、消費契約法の見直しが始まりました。
 

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借地上の建物の滅失による掲示と借地権の対抗力

2007年06月17日 | 借地借家の法律知識
(問) 隣家からの類焼で借地上の建物が全焼してしまった。再築計画はあるが、現在は更地状態になっている。こんな状態の中、地主が土地を売却すると買主に借地権を主張出来ないと聴いたが、それは本当なのか。借地権を守る手段があったら教えてもらいたい。

(答) 建物が火災で焼失しても、地震で倒潰しても、建替えのために取壊しても原因は何であれ、建物が無くなることを「滅失」という。

 借地借家法第10条1項に「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と規定している。

 従って、借地権者が借地上の建物を登記しておけば、土地の所有者が代わっても新所有者に対し、自分の借地権を主張出来、借地の明渡を求められることはない。しかし登記した建物が滅失した場合は、原則として第三者に対抗出来ない。

 なお、10条1項で要求される登記は、移転登記、保存登記、表示の登記(最高裁1975年2月13日判決 民集29巻2号83頁)のいずれかである。仮登記では不十分である(最高裁1967年8月24日判決 民集21巻7号1689頁)

 借地借家法は例外規定として10条2項を新設し、借地権を保護している。同法10条2項に「前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。」と規定している。

 従って、借地上の建物が火災で滅失した場合、登記事項を記載した掲示物を設置し、借地上の見やすい場所に掲示しておけば借地権は守られる。その場合は、借地権は登記済み建物が存在していた時と同様に第三者に2年間は対抗出来ることになる。滅失した日から2年以内に建物を再築し、新たに登記済ませておけば、第三者に対して2年経過後も借地権の対抗力を維持することが出来る。

 なお、滅失建物が未登記の場合は10条2項の適用は認められない。あくまでも登記済み建物が滅失した場合にしか適用されない。

また設置掲示物が何者かに持ち去られた場合、その後に土地を取得した第三者には対抗出来ないので注意が必要である。即ち、「第三者に対して借地権の対抗力を主張するためには、掲示を一旦施してたというだけでは不十分であり、その第三者が権利を取得する当時にも掲示が存在する必要がある」(東京地裁2000年4月14日判決)。掲示という明認方法により暫定的に対抗力を維持しているので掲示が消滅すれば対抗力は消滅するというのが原則である。

  下記は掲示物の見本


                      掲      示
 この土地には下記の者が借地権を有し、下記の建物を所有していましたが、*年*月*日滅失しました。
 借地権者は、滅失日から2年以内に新たに建物を築造する計画がありますので借地借家法第10条2項の規定に基づき掲示します。
 この掲示を移動、毀損、破棄 、落書等の行為を禁止します。もしそのようなことがあった場合は刑事罰を受けることになるので警告します。

  *年*月*日 
住所
借地権者氏名
連絡先

滅失した建物の表示
所在
家屋番号
種類
構造
床面積
建物滅失日    *年*月*日



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相談は毎週 月曜日から金曜日の午前10時から 組合員募集中

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賃貸借更新料返還請求訴訟:家主側「適法」と答弁書 弁護団結成、全面対決 /京都

2007年06月16日 | 契約更新と更新料
左京区のマンションを借りていた男性(52)が、賃貸借契約で年1回家主に払ってきた更新料は違法だとして、5回分計50万円の返還を家主に求めた訴訟で5日、家主側が「更新料は賃料の補充や(契約を)更新できる地位確保の対価などであって適法」として棄却を求める答弁書を京都簡裁に提出した。家主のために、これまで同種の訴訟で貸主側の代理人を務めてきた京都弁護士会の弁護士10人が「この家主1人の問題ではなく、首都圏などにも影響を及ぼす」と「貸主更新料弁護団」(田中伸代表)を結成。借り手側の「京都敷金・保証金弁護団」(野々山宏団長)と全面的に争う展開となった。【太田裕之】

 訴状などによると、借り手の男性は00年8月、賃料月4万5000円で毎年10万円の更新料を支払う契約を家主と結び、06年11月の退去までに6回更新した。男性は5回払った更新料について「消費者の利益を一方的に害するもので消費者契約法に違反するか、暴利行為で公序良俗に反して無効」と訴えている。

 家主側は答弁書で「更新料は消費者契約法にも公序良俗にも違反しない。借り手が納得了解して契約を結び、異議なく支払ってきたのを、退去後に返還請求することは信義に反する」と反論。さらに「日本全国の建物賃貸借に重大な影響を与える訴訟で、詳細・厳密に審理されるべきだ」として京都地裁への移送も申し立てた。

 会見した家主側弁護団の田中代表は「借り手の権利のみが過大主張されている。契約で明記して受領し、税務申告もしている更新料の返還請求を認められれば、家主側は経営が成り立たない。メニューを見て注文し飲食代を払った後でサービス料を返せと言うのと同じで不当だ」と述べた。

毎日新聞 2007年6月6日


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