東京多摩借地借家人組合

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管理委託会社に支払っていた賃料を賃貸人に直接請求され、債権者不確知を理由とした供託の効力

2008年09月30日 | 地代家賃の供託
 賃貸用建物の管理委託会社に賃料を支払っていた賃借人が賃貸人から直接賃料の支払いを求められた場合に債権者不確知を理由として行った弁済供託の効力 (東京地裁平成15年2月19日判決、判例タイムズ1136号)

 (事案の概要)
 ①Xは平成10年2月、本件建物(賃貸用)を競売により取得し、従前からの賃借人Yに対する賃貸人の地位を継承した。

 ②同時にXはZに対し全面的に本件建物の管理を委託した。ZはYとの間で賃料を月額21万円に増額する旨合意した。

 ③XとZは管理をめぐって争いになり、Yは平成14年1月Zから、XがZを差し置いて賃料を請求してもXには支払わないでもらいたい旨要請され、他方、Xから直接Xに支払うよう要請されたため、債権者を確知できないとしてXZ両者を被供託者として同年2月3月分を供託した。

 ④これに対しXは、右は債権者を確知し得ない場合に当たらないから供託は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料の支払いを求めた。

 (判決要旨)
 ①Zは本件建物の管理を全面的に委託され、その管理権限に基づいてYに明渡を求める調停を申立てたことがあること。

 ②調停を申立てる権限があることについてはXも了解済みであったと窺われること。

 ③Yが前賃貸人と取交わしていた賃貸借契約がXを賃貸人、Yを賃借人とする契約書に差し替えられていること。

 ④ZはYとの間賃料改定を行っている等をあわせ考えると、Yにおいて、Zを本件建物の賃貸人であるか、賃貸人でないとしても、自ら固有の権限で、訴訟上でも、その取り立てが可能な権限を有する立場にあると判断してしまうことは無理からないところというべきである。

 Zの立場が現に賃料の固有の取立権者であったとすれば、債権者不確知を理由とする弁済供託にいう「債権者」と同視して差支えなく、実際に固有の取立権限がなかったとしても、YがZを取立権者であると判断したことに過失はないといわなければならないから、本件供託は、少なくとも債権者であるYにおいて過失なく債権者である本件建物賃料の賃貸人ないしその取立権者を確知することができない場合であったとして、有効なものであったと認めるのが相当である。本訴請求は理由がない。

 (寸感)
 マンション・アパートや貸地を何件も持っている地主の管理人がどこまで権限を持っているのか、賃借人には分かりにくい。本件の事実関係のもとでは判決は妥当である。

 一般的には、どちらに賃料を支払ってよいか分からないとき、管理会社が賃貸人の代理である場合には、債権者不確知を理由とする供託は無効とされている。だれを相手に供託すべきか迷ったらちょっと慎重になった方がよい。 (2004.02.)


(東借連常任弁護団)

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裁判事例補修を怠った家主に対する敷金返還請求

2008年09月29日 | 最高裁と判例集
東京簡裁判決 平成16年7月5日
(判例集未登載)

《要旨》
 貸主が約定の補修義務を果たさず、賃借人から契約を手付放棄により解除した際の敷金等返還請求が認められた事例


(1) 事案の概要
 賃借人Xは、平成15年6月28日、貸主Yとの間でアパートの一室の賃貸借契約を締結した。Xは当該契約に先行して6月18日に手付金5万円を支払ったほか、敷金等21万円余を支払った。上記契約に際して、Xは、畳の交換などの補修を求めたが、Yは畳の交換費用の半分はXが負担するように言ったが、むしろXはYから現状のままで本件アパートに入居してほしいと言われていた。Xは、本件契約後も現状のまま入居するか迷っていたところ、Yから契約をやめてもよいと言われたので本件契約を解除し、上記預入金26万円余の返還を求めた。
 これに対してYは、アパートの襖については、同年7月10日ころに張り替えることを予定しており、畳については交換することにしていたと主張。さらに、本件契約において、賃借人の都合により本件契約を解約するときは、解約日の3カ月前に書面により賃貸人に提出しなければならず、これに従った解約をしない場合には、賃借人は賃貸人に対し、賃料と共益費の合計額の6カ月分を保証する旨の合意がなされており、Xはこれに沿った解約をしていないので、本件契約解除の効果は認められないこと、賃借人が賃貸人に一旦払った礼金や家賃または共益費は一切返還しないとする合意があるので、Yにこれらを返還する義務はない等として、争った。

(2) 判決の要旨
 ①YはXの入居までに風呂場の壁修理その他を補修すべき義務を負ったとはいえない。
 ②Yは事業者として、Xは消費者として本件契約を締結しているが、本件契約の解約にあたり賃料と共益費の合計額の6か月分を保証する旨の合意等は、著しくXの権利を制限し、又はXの義務を加重するので、消費者契約法10条に照らして無効である。
 ③Yは、Xに対し解約権を付与したものと解され、本件手付は民法557条に定める解約手付の性質も有していると解すべきである。本件契約の賃貸借期間は平成15年7月1日からであるが、Yは少なくとも襖の張替えや畳の交換などの義務は負っており、貸主としての履行着手しない段階である平成15年7月8日には、Xは、Yに対し本件契約の解約申入れをしていることが認められる。
 ④以上によれば、Xは、Yに対し、平成15年7月8日に、本件手付を放棄して契約を解約したことが認められるから、XのYに対する21万円余の請求を認容する。


(3) まとめ
 契約に先立って借主が媒介業者に支払う金銭で、順位確保の性格を持つ預り金についてのトラブルは多い。本件は直接契約当事者である家主に支払っていること等から、「手付金」として認定された。

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賃貸借契約を結ぶ前のテェックポンイント

2008年09月28日 | 賃貸借契約
賃貸借契約には、契約期間が終了するとき「原則として更新される普通借家契約」と「更新がなく、契約期間満了により終了する定期借家契約」とがあります。
 いずれの賃貸住宅に入居するにも、契約金(敷金、礼金、前家賃、仲介手数料など)や引っ越し費用など多額の費用が必要となります。

 また、入居後にこんなはずではなかったと思っても転居は容易ではありません。契約にあたっては、契約内容の確認、借りようとする部屋とその周辺の環境などを事前に確認して、納得したうえで契約を締結することが必要です。
賃貸住宅におけるトラブルとは
 賃貸借契約に伴う多くのトラブルは、入居時と退去時です。これらのトラブルの多くは契約前に注意をすれば防げるものです。
入居時のトラブル
(1)申込金や預かり金とは
 契約前に、業者から物件を押さえておく必要があるとして、家賃の1カ月分相当の支払いを要求されることがあります。このような支払いをした後に申込者が契約の申込みを断ると、仲介業者の中には「貸主の承諾を得たので手付金に変わった」として、返還しない例が非常に多く見受けられます。
 このような申込金や預かり金は、契約が成立していない限り返還されるものです。

(2)部屋は必ず内見をしましょう
 部屋の間取りや設備などに関するトラブルの中には、事業者が「部屋の鍵を預かっていない」とか「契約者が入居中」との理由や借り主の都合によって部屋の確認が行われなかったケースがみられます。いずれにしても、入居後の生活に支障をきたすことのないよう、契約前に、事業者の発行した広告と借りようとする室内の広さ・設備状況などの事前チェックが必要です。その際、物件の平日と週末の周辺環境と生活環境、また、交通機関などの確認も大切です。

(3)退去時のトラブル回避について
 住宅を退去した後に、原状回復に要した費用として、家主から多額の支払いを請求されることがあります。それらのトラブルを回避するためには、申込金などを渡したときに、重要事項説明書と賃貸借契約書(写)をもらい、部屋の退去時にどのような負担が伴うことになるのか、契約前に確認する必要があります。また、契約書のなかには、貸主が費用負担すべきとされているような内容も借り主の負担となっているものが多く見受けられますので注意が必要です。
 入居した場合には室内の写真などをとっておき、退去時のトラブルを防ぎましょう。
重要事項説明は業者の義務
 仲介業者は契約の締結までに、重要事項説明書により、敷金・礼金などの契約条件、物件の設備(風呂、台所、トイレなど)の整備状況や、契約の解除時における金銭の清算などについて説明する義務があります。事業者の説明で疑問点があれば、確認することが大切です。
 もしも、賃貸借条件について納得のいかない場合には、契約しないという判断も必要です。



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坪10万円の更新料の支払わないとどうなるのか

2008年09月27日 | 借地借家の法律知識
(問)今年の7月で20年間の借地契約期間が満了する。地主は近所の不動産屋を通じて更新料を坪10万円、34坪で総額340万円請求してきた。更新料を支払わない場合、借地契約はどうなるのか。

(答) 借地契約の更新は、(1)地主と借地人が更新契約条件に合意して、新しい契約書に署名捺印する「合意更新」があり、(2)これに対して地主と借地人との間で契約条件の合意が得られない場合でも、借地人が土地の使用を継続する場合、契約期間が満了すると法律の定めで、新しい契約書を作らなくても従前の借地の契約条件で自動的に更新してしまう「継続使用による更新」がある。また、(3)期間満了に際して地主に契約更新を拒否する正当な理由がない場合、借地人の一方的な更新請求だけで借地更新が認められる「請求による更新」との3通りの更新がある。
 (2)と(3)の更新の場合は、借地上の建物が鉄骨建などの堅固建物ならば契約期間は30年、それ以外の建物ならば20年に存続期間が法定されている。その他の契約条件は従前の契約と同一で自動に法定更新される(借地法4条1項、6条1項)。
 「借地借家法」は平成4年8月1日から施行されているが、「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」(借地借家法附則6条)とされ、借地契約を今後何度更新しても、旧「借地法」が引き続き適用される。
 更新は地主との契約の合意がなくても法律の規定で自動的に出来るものであり、更新料を支払う根拠はない。また地主は更新料を請求する根拠として「更新料の授受は世間の慣習だ」と主張したが、最高裁判所で慣習説は否定され、借地更新料は支払義務なしとされた(最高裁判所昭和51年10月1日及び同昭和53年1月24日判決)。
 更新料を支払わなくても借地人が後に不利益を蒙ることはない。既に更新料不払の借地人は大勢おり、今も従前通り借地を続けている。更新料不払は着実に増え続けている。
 実践する場合は組合に相談し、内容証明郵便で借地の更新請求と更新料の支払請求を拒否する旨の文章を地主に送る。以上を組合の仲介で行えば一層効果的
(東京借地借家人新聞より)


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敷金を上回る原状回復費用 組合の請求で取り戻す

2008年09月26日 | 敷金と原状回復
 豊島区内のマンションに住んでいた後藤さんは3月末に退去した。管理している不動産会社から5月に入り、17万円の原状回復費用の請求があった。家賃の2ヵ月分の敷金14万円を預託しているので3万円を支払えといってきた。僅か2年の居住で、しかもきれいに生活していた後藤さんにとっては納得いかない請求であった。



 インターネットで組合事務所の電話を調べ相談しにきた。国土交通省や東京都の原状回復のガイドラインや、昨年の最高裁判決(2005年12月16日判決)も説明し「不動産会社にもう一度ガイドラインに基づいて請求をしなおしてください。話合いに応じない場合は東京都に通告し、法的手続きをします」と通告するよう指導した。



 不動産会社はしぶしぶガイドラインについては知っていること。貸主にそのように説明し、敷金は全額返却するが、貸主を説得するために3万円くらい支払ってくれないかと提案してきた。



 「組合のおかげで敷金は返ってきましたが、納得のいかないお金は支払えない、最後まで頑張る」と後藤さんは話していた。




東京借地借家人新聞より



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延滞賃料保証会社のリプラスが破産

2008年09月25日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 賃貸住宅の滞納家賃保証サービス事業などを行うリプラスは9月24日、東京地方裁判所に破産手続き開始の申し立てを行った。負債総額は325億7,057万992円。

 同社は、02年9月の設立。賃貸住宅に関する滞納家賃の保証サービス事業のほか、不動産私募ファンドのアセットマネジメント事業(不動産私募ファンド事業)、REIT事業(不動産投資法人の運用事業)を中核に据え、事業を行っていた。

 しかし、米国におけるサブプライムローン問題により、ファンドの活動が不活性化し、想定していたフィーが大幅に低下。9月に入り、運転資金の確保が不可能となり、支払不能に陥ったため、事業継続を断念した。


      賃貸保証会社トラブル110番



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当世借家事情 ゼロゼロ物件の貧困ビジネス

2008年09月24日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 「大家といえば親も同然、店子といえば子も同然」は落語の世界だが、昔は面倒見のよい大家さんがいたものだが、昨今賃貸借の関係は完全にビジネスの世界になってしまった。投資目的に賃貸マンションをいくつも購入する大家さんも多くなり、オーナーとよばれ、管理会社が貸主になっているため大家さんが店子には分らない仕組みになっている。

 そんな中で、「ゼロ・ゼロ物件」、「敷金・礼金・仲介手数料無料・保証人不要」をセールスポイントにしたスマイルサービスという不動産会社は、家賃の支払いがたった1日遅れただけで玄関の鍵を交換し、ロックアウトを解除するには賃料プラス10%の違約金と再利用料を請求、支払わないでいると部屋の中の家財道具を全て処分されるというトラブルがマスコミでも報道され、組合にも被害を受けた借家人から相談を受けた。

 不動産会社の契約は「鍵施設利用契約」で彼らの言い分はホテルと同じなので居住権は認められないという。完全な借地借家法逃れの脱法契約である。また、保証人の代行会社の賃貸保証会社の契約も悪質で、勝手に部屋に入られ荷物を勝手に処分されたという被害も急増している。

それにしてもアパートを借りる初期費用も払えない、保証人を立てられない等ワーキングプアーの弱い立場の借家人を餌食にした「貧困ビジネス」が横行している。「家賃を払わない借家人が悪い」と自己責任を強調する前に、本来救済すべき公共が責任を果していないことを
私たちは追及すべきではないだろうか。
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賃貸住宅を退去するときの豆知識

2008年09月24日 | 敷金と原状回復
 借り主が賃貸住宅を退去するときには、あらかじめ契約書で定めた期間を設けて退去日を貸主に通知する必要があります。また、退去に際しては、住宅の通常の使用に伴って生じた損耗を除いて、原状回復しなければなりません。

賃貸借契約の解約
 契約期間中の契約については、貸主から解約を申し入れる場合は6カ月前の通知とそれに伴う正当な理由が必要とされています。
 また、借り主からの場合は30日前に通知をし、その期間の経過した時点で契約が終了するとされています。やむを得ない事情により即時に契約を終了させる場合には、解約通知日から起算して30日分の賃料を支払うことにより、解約できるとされています(国土交通省「賃貸住宅標準契約書」による)。

原状回復とは
 賃貸住宅における原状回復義務とは、その住宅を入居時の状態に完全に戻すまでの必要はなく、借り主の故意・過失により生じた、住宅の汚損、破損、もしくは無断で原状を変更したときに負う責任をいいます。
 したがって、通常の使用によって生じた、襖、障子、畳(こすれ)、クロス(ポスターや絵画の跡)などの損耗、家具の設置によるカーペットのへこみ跡、テレビや冷蔵庫の後部壁面の黒ずみなどについては、入居当時の状態よりも悪くなっていたとしても、そのまま貸主に返還すればよいとされています。これは、自然損耗分の原状回復費用は、減価償却費として賃料に含まれていると考えられるからです。

費用負担の伴う原状回復とは
 物件を改造したような場合、例えば、建物に取り付けた棚や不注意による破損、また、部屋に生じた結露を放置したことにより拡大したカビやシミ、クーラーからの水漏れを放置したことによる壁の腐食などは、その程度にもよりますが、責任を問われ費用負担を求められるケースもあります。
それでもトラブルが起こったら
 まず、家主との話し合いが大切なことですが、中には家主の代行として、アパートを管理している管理会社が話し合いの場に出てくることもあります。そのときは、後述の「住宅賃貸借(借家)契約の手引」を参考に話し合いをすることが解決の早道になります。しかしながら、話し合いができないのであれば、少額訴訟制度(*1)や民事調停を利用するとよいでしょう。

原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
 (財)不動産適正取引推進機構(*2)が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(’04年2月改訂)は、賃貸住宅標準契約書(*3)、民法や判例などの考え方を踏まえ、原状回復をめぐるトラブルの未然防止と円滑な解決のために、契約や退去の際に貸主・借り主双方があらかじめ理解しておくべき一般的なルールなどを示したものです。また、小冊子「住宅賃貸借(借家)契約の手引」を紛争の未然防止と円滑な解決のために発行しており、賃貸借契約における紛争解決の参考になります。(国民生活センター)


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裁判事例 水漏れ事故の損害賠償債務と連帯保証契約

2008年09月23日 | 最高裁と判例集
甲府地裁判決 平成17年9月16日
(ホームページ下級裁主要判決情報)

《要旨》
 階下の事務所を水浸しにした加害者である賃借人の損害賠償責任とその父親及び賃貸人が被害者と締結した損害に対する連帯保証契約の効力が認められた事例


(1) 事案の概要
 Y3の所有するビルの3階居室を借り受けている賃借人Y1は、平成14年2月、ユニットバスの洗面台の蛇口を閉め忘れたため、床に水がたまり、同じくY3から借り受けている賃借人Xの2階事務所に水漏れによる損害を与えた。
 XのA社長は、現場に来ていたY1の父親Y2に対し、「私は下記の件に付損害を与えそれに対して保証、弁済することを確約いたします。」と書かれた連帯保証契約書面に、Y1とY2に署名を求めた。Y2はなかなか署名に応じなかったが、A社長のしつこい求めに根負けし、署名に応じた。また、A社長は、水漏れ事故が2回目であることから、本件ビルには構造上の問題があることを疑い、所有者・賃貸人Y3にも本件書面への署名を求めた。Y3も署名に躊躇したが、最後には署名に応じた。
 Xは、Y1、Y2、Y3に対して、連帯保証契約等に基づき損害賠償金3,940万円余を請求した。

(2) 判決の要旨
 ①Y1のXに対する過失不法行為責任の成立には争いがない。
 ②Y2は、具体的な保証意思はなかったと主張するが、Y2は、本件書面を読んだ上で署名したと認めざるをえない。また、25歳のひとり暮らしの息子が不始末をしでかした場合、被害者がその父親に対して賠償を求めるのは、法律上はともかく、社会通念上それほどおかしいとはいえないのが実情であるから、A社長の意図を、Y2は十分理解していたと認められる。また、警察への提出書類と認識したとの錯誤の事実は認められない。
 ③Y3は、冷静に考慮し、署名しており、被害現場の状態も自分自身で見ていたのであるから、Xに相当大きな被害が発生することも予想できたはずである。Y3は、十分承知したうえで署名したのだといわざるをえないから、保証意思があったのは明らかである。心裡留保の事実は認められない。「家主としての管理責任があると誤解した」としても、動機の錯誤に過ぎず、これが表示された事実はないから、錯誤無効は成立しない。脅迫の事実も認定することができない。
 ④Xは、Y1に対しては不法行為に基づき、Y2とY3に対してはいずれもその連帯保証契約に基づき、3,940万円余を支払うよう請求することができる。原告の主張は全部正当である。


(3) まとめ
 本件では、保管されていた商品が被害にあったことから損害額が大きなものとなった。裁判所は、原告の損害額を4,110万円と認定したが、請求額が3,940万円余であることから、原告の請求を全部認容するにとどめている。


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管理委託会社に支払っていた賃料を賃貸人に直接請求され、債権者不確知を理由とした供託の効力

2008年09月22日 | 最高裁と判例集
 賃貸用建物の管理委託会社に賃料を支払っていた賃借人が賃貸人から直接賃料の支払いを求められた場合に債権者不確知を理由として行った弁済供託の効力 (東京地裁平成15年2月19日判決、判例タイムズ1136号)

 (事案の概要)
 ①Xは平成10年2月、本件建物(賃貸用)を競売により取得し、従前からの賃借人Yに対売る賃貸人の地位を継承した。

 ②同時にXはZに対し全面的に本件建物の管理を委託した。ZはYとの間で賃料を月額21万円に増額する旨合意した。

 ③XとZは管理をめぐって争いになり、Yは平成14年1月Zから、XがZを差し置いて賃料を請求してもXには支払わないでもらいたい旨要請され、他方、Xから直接Xに支払うよう要請されたため、債権者を確知できないとしてXZ両者を被供託者として同年2月3月分を供託した。

 ④これに対しXは、右は債権者を確知し得ない場合に当たらないから供託は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料は無効であるとして、Yに対し右2か月分の賃料の支払いを求めた。

 (判決要旨)
 ①Zは本件建物の管理を全面的に委託され、その管理権限に基づいてYに明渡を求める調停を申立てたことがあること。

 ②調停を申立てる権限があることについてはXも了解済みであったと窺われること。

 ③Yが前賃貸人と取交わしていた賃貸借契約がXを賃貸人、Yを賃借人とする契約書に差し替えられていること。

 ④ZはYとの間賃料改定を行っている等をあわせ考えると、Yにおいて、Zを本件建物の賃貸人であるか、賃貸人でないとしても、自ら固有の権限で、訴訟上でも、その取り立てが可能な権限を有する立場にあると判断してしまうことは無理からないところというべきである。

 Zの立場が現に賃料の固有の取立権者であったとすれば、債権者不確知を理由とする弁済供託にいう「債権者」と同視して差支えなく、実際に固有の取立権限がなかったとしても、YがZを取立権者であると判断したことに過失はないといわなければならないから、本件供託は、少なくとも債権者であるYにおいて過失なく債権者である本件建物賃料の賃貸人ないしその取立権者を確知することができない場合であったとして、有効なものであったと認めるのが相当である。本訴請求は理由がない。

 (寸感)
 マンション・アパートや貸地を何件も持っている地主の管理人がどこまで権限を持っているのか、賃借人には分かりにくい。本件の事実関係のもとでは判決は妥当である。

 一般的には、どちらに賃料を支払ってよいか分からないとき、管理会社が賃貸人の代理である場合には、債権者不確知を理由とする供託は無効とされている。だれを相手に供託すべきか迷ったらちょっと慎重になった方がよい。 (2004.02.)


(東借連常任弁護団)

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基準地価 ファンド撤退、下落一気

2008年09月20日 | 最新情報
「バブル崩壊時より速い」
 都心の一部では「ミニバブル」とさえ言われた地価の上昇基調に、はっきりと潮目の変化が表れた。

 国土交通省が18日発表した2008年の基準地価は、都心部で下落に転じる地点が増え、地方では下落に歯止めがかからない。投資ファンドが演出した都心部での不動産活況が地域的な広がりを十分に見せないまま、上昇局面は「ファンドで始まりファンドで終わる」(大手不動産会社)気配が濃厚となってきた。(香取直武)

◆都心

 高級ブランド店やマンションが立ち並ぶ、東京・原宿の表参道。裏通りに回ると、空き地が点在する。近くに店を構える不動産会社の社員は嘆く。

 「取引地価は昨年から2~3割落ち込んでいる。悪くなるスピードは、バブル崩壊時の数倍という感じだ」

 東京圏の商業地では、下落に転じた地点が目立つ。07年に上昇率1位(36・8%)だったJR原宿駅前の商業ビルは今年、1・1%下落した。2位(36・5%)だった渋谷区渋谷3丁目のオフィスビルは、JR渋谷駅新南口に隣接する立地にもかかわらず2・3%下落し、一気に下落率のワースト9位だ。

 都心部の地価変調の背景には、欧米の不動産ファンドなどが、サブプライムローン問題の影響で資金調達が困難となり相次いで撤退したことが大きい。

 国土交通省が08年の公示地価(1月1日時点)との共通地点で比較したところ、東京都心8区では、住宅地15地点のうち12地点が、商業地は29地点のうち13地点が下落に転じた。「サブプライム問題の深刻さが顕在化した昨秋から潮目が変わった」と見る関係者は多い。

 東証に上場している不動産投資信託(Jリート)の値動きを示す指数は現在、07年5月の最高値の半値以下に落ち込んでいる。

◆影響
 関連業種への影響も大きい。

 今年7月以降、アーバンコーポレイションやゼファーなど、東証1部上場の新興不動産会社が相次いで破綻(はたん)した。

 取得した不動産物件がファンドに売却できないうえ、国内の金融機関は不動産への融資を厳格化した。ビジネスの「出口」と「入り口」を締め付けられ、行き詰まったのだ。

 東京・青山のある不動産会社は、米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻後の連休明けから、マンションの解約を告げる電話対応に追われた。月額家賃が50万~70万円という高級賃貸マンションだ。解約の電話のほとんどがリーマン日本法人の関係者とみられる。

 「上顧客」だった外資系企業の低迷が、不動産市況にも影を落とす。

 サブプライムに端を発した世界経済の動揺が収まらない限り、今後もさまざまな形で日本の地価への影響が表れそうだ。

(2008年9月19日 読売新聞)
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スマイルサービスの違法脱法行為をやめさせよう!

2008年09月19日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
ゼロゼロ物件による被害が増えています!

スマイルサービスが扱っている物件は、敷金ゼロ礼金ゼロのいわゆる「ゼロゼロ物件」と呼ばれるもので、通常であれば、敷金礼金や仲介手数料を取られるのに比べ、入居時の初期費用を格段に安く設定しているのです。そのため入居するのは、主にフリーターや外国人、仕事を失った人などが多いようです。

しかし、その一方で、この会社は、入居時のハードルを下げることで、あえて消費者に不利な条件の契約を結ばせ、脱法行為、違法行為を行っています。

お気軽にご相談ください!
スマイルサービスによる被害は、都内を中心に拡がっています。スマイルサービスなどによる貧困層をターゲットにした営業行為は「貧困ビジネス」とも呼ばれ、「ネットカフェ難民」「ホームレス」など安定した住居を持たない人たちを増加させる要因の一つともなっています。

・不当に高額な違約金を払わされた

・家賃を数日滞納しただけで突然鍵を交換されてしまった

・部屋に勝手に入り込まれた

などの被害に対しては法的な救済が可能です。

ご相談はこちらまでどうぞ。

スマイルサービス闘争を支援する会 http://ameblo.jp/knockout-smile/

〈報道〉敷・礼金ゼロでも…家賃滞納で勝手にカギ交換 近く提訴(朝日新聞)

http://d.hatena.ne.jp/hanhinkon/20080717/1220185941
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敷・礼なし「ゼロゼロ物件」トラブル続出、若者ら提訴へ

2008年09月18日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 敷金・礼金なしでマンションやアパートが借りられるとして低所得者にも人気の「ゼロゼロ物件」。だが、「家賃の支払いが数日遅れただけで、部屋の鍵を交換された」といった苦情も多く、入居者への強引な措置が問題となっている。

 こうした中、同物件の入居者が10月、不動産会社に慰謝料など1人あたり数百万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす。非正規雇用の拡大など収入の不安定な人が増える中、被害対策弁護団は「行き過ぎた『貧困ビジネス』は見過ごせない」と話している。

 提訴するのは、不動産会社「スマイルサービス」(東京)のゼロゼロ物件に入居する都内の男性ら20~30歳代の3人。弁護団によると、同社の物件では、敷金・礼金を払わなくていい代わりに、家賃の支払いが1日でも遅れると、家賃約6万円に「違約金」などの名目で約2万円が上積みされる決まりで、無断で部屋の鍵を換えられたり、留守中に荷物を処分されたりしたケースもあった。

 マンションに入居する場合、借地借家法に基づく賃貸借契約を結ぶのが一般的で、通常は正当な理由なく一方的に解約されない。しかし、同社は「鍵の一時使用」という特殊な契約形態を採り、契約書に「居住権は認められない」と記載していたため、いつでも解約できる内容になっていた。

 スマイルサービスから相談を受けている宮岡孝之弁護士によると、約4000件のゼロゼロ物件を展開する同社は現在、違約金徴収をやめ、契約も8月から賃貸借契約に順次切り替えを進めているという。宮岡弁護士は、「契約に望ましくない部分があったのは事実。提訴されれば、相応の賠償に応じる用意はある」と話している。

 一方、被害対策弁護団の宇都宮健児弁護士は「鍵の利用契約とするのは脱法行為で、低所得者の弱みにつけ込んだビジネスだ。他の業者に警告する意味でも、法的責任を明らかにしたい」と話している。

 今回、提訴を予定している30歳代の男性は、日雇い派遣として働いていた2年前、インターネットで同社の物件を見つけ、家賃5万8000円で、ロフト付きワンルーム(6畳)の部屋に入居した。しかし、仕事が少ない月には支払いが滞ることもあり、これまでに鍵を5回ほど勝手に交換され、違約金も10回以上支払った。「就寝中いきなり部屋に入ってきた業者に追い出され、ネットカフェで過ごしたこともある」という。

 「家賃滞納で住居侵入はやりすぎ」と提訴に踏み切ることにしたが、それでも、「ネットカフェや路上で暮らすのは絶対に避けたいので、ここに住み続けるしかない」と声を落とす。

 ゼロゼロ物件は東京の賃貸アパート大手が約20年前に始め、各地に広がった。初期費用が少なくて済むため、低所得の若者に人気だが、家賃滞納者への対応は厳しく、数か月の滞納で立ち退き訴訟を起こされることも多い。

 大手業者などは、強引な取り立てを行わないようにするなど、運用を改善しているとするが、弁護団が今年7月に実施した電話相談には計65件の相談が寄せられ、スマイルサービス以外の業者への苦情や相談も、42件に上った。

(2008年9月18日14時36分 読売新聞)
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消費者金融の借金があるが住宅ローンを借りられるか

2008年09月18日 | 借地借家の法律知識
(Q) 消費者金融に借金、融資審査が心配
愛知県 30歳代 会社員 男性


 はじめまして。このたび住宅の購入を検討しているのですが、1つ頭から離れない心配事がありますので、思い切ってご相談させていただきます。

 お恥ずかしい話ですが、消費者金融から、現在約100万円を借りています。クレジットカードやローンなどは他にないのですが、この状態で住宅金融公庫、銀行のローンなどの融資審査は通るのでしょうか?




(A) 返済状況と返済率によります
(住宅ねっと相談室カウンセラー 不動産コンサルタント・ファイナンシャルプランナー 平賀 功一)


 まず初めに基本的なことですが、融資に関する審査をするのは銀行ではありません。系列の保証会社が審査をして、最終的に銀行が決定を下します。その審査方法は、専門の信用情報会社に照会するのが一般的で、この信用情報会社には、デパートなどの流通系の会社や信販系の会社、そして銀行などの金融機関の情報が集められています。

 膨大な情報量ですから、時として同じ人でも一部の情報が信用会社には届いておらず、実際は借入れをしているにも関わらず、情報として引っかからないケースもあります。

 しかし、ご相談内容を拝見すると100万円とのことで、事前審査をすればほぼ信用情報に引っかかると思われます。

 保証会社が審査をする際、借金があること自体より「利用目的は何なのか」「滞納はないか」「予定通りに返済ができるか」といった点を重視します。ですから、消費者金融から借入れがあることは、事前審査の段階できちんと自己申告を忘れずにしてください。

 次に、審査の判断基準として保証会社が注目するのは「返済率」です。収入に対する支払の割合のことを指します。ローン返済がスタートしても、消費者金融のローンが残っているとダブルの返済となり家計への負担も大きくなり、滞納率が上がる可能性もあるので、住宅ローンの融資条件として「借金がある場合は完済する」ように指導されると思います。

 新築であれば、建物が完成するまでに1年近い期間がありますので、頑張って完済してください。

 正直に自己申告することと、できることなら、ご両親などからの援助を受けて一時的にでも借金をゼロにできると返済率も下がり借入れも有利であると考えます。



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定額保障分担金は消費者契約法違反! 2件目

2008年09月17日 | 最高裁と判例集
定額補修分担金が消費者契約法10条に違反し無効であるとした2件目の地裁判決(京都地裁平成20年7月24日判決)が京都消費者契約ネットワークにアップされていました。



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