東京多摩借地借家人組合

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ICTでお年寄りを遠隔見守り365日…AIとの会話やポットの使用状況で異変を察知

2024年05月27日 | 居住支援
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240526-OYTNT50009/

 ICT(情報通信技術)を活用し、一人暮らしのお年寄り向けに見守りサービスを提供する動きが広がってきた。今後、65歳以上の単
身高齢者の増加が見込まれる一方、見守りを担う民生委員などの人材不足は深刻化している。識者からは「ICTなどを使った効率的な
支援がますます求められる」との声が上がる。(山本光慶)

安心感「友得たり」

 今月上旬、福岡県大野城市内のアパート。一人暮らしの女性(83)方の居間に、見守り機器を友に見立てた一句が飾られていた。
「薫風や 八十路ひとり身 友得たり」
 女性は昨年7月から市の見守り事業を利用している。人感センサーで24時間動きを感知できなければ、事前に配布されるキッズ携帯
にコールセンターが連絡。電話に出なかった場合、警備会社のスタッフが駆けつける仕組みだ。
 過去に胃腸炎で緊急入院したこともある女性。身内は近くにおらず、孤独死などへの不安を抱えており、「何かあればすぐ対応して
くれるので、すごく安心感がある」とほほ笑んだ。
 市は昨年度、見守りや緊急通報事業などを行う「あんしんサポート」(福岡市)に委託し、事業を始めた。一人暮らしの高齢者らが
介護保険料に応じ、月500円以内で利用できる。今月21日時点の利用申請は500件に上る。コールセンターを通じて救急車が駆けつけた
事例もあるという。
 市すこやか長寿課の藤木大介係長は「高齢化で民生委員らの負担が増えている。24時間365日対応可能なICT機器は有事にも速やかに
対応でき、人手を補ってくれる」と述べた。

民生委員はなり手不足

 高齢化や核家族化の影響で、今後、単身高齢者は急増する見通しだ。
 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が4月に公表した推計によると、65歳以上の単身世帯は2020年に738万だが、50年には1・5
倍の1084万に増え、世帯総数の2割に達する。
 その一方、自宅を訪問するなどして単身高齢者を支える民生委員は、なり手不足に陥っている。国の統計では、全国の定数24万548
人に対し、23年3月時点で1万3122人の欠員が生じている。この10年で定数は約6600人増加した反面、実際の委員数は約2700人減少し
た。

大手企業も参入

 こうした中、大手企業も見守りサービスに参入している。
 日本郵便(東京都)は22年からディスプレー付きAI(人工知能)スピーカーを使った自治体向けサービスを始めた。1日に数回、食
事や服薬、睡眠の状況を、高齢者宅に設置したAIスピーカーが音声や文字で問いかける。回答は自治体が管理画面で確認。訪問しなく
ても生活状況を把握できる。今月1日までに16市町村で利用実績があるという。
 象印マホービン(大阪府)は電気ポットを活用した見守り事業を23年にリニューアル。24時間以上、ポットの使用が確認できなけれ
ばすぐにメールを送る機能などを追加した。担当者は「普段使っている家電を利用するだけなので、ストレスが少ない」と話す。
 高齢者福祉に詳しい岩手県立大の小川晃子名誉教授(地域福祉)は「民生委員らによる見守りだけでは限界がある。今後、ICT機器
の活用がますます必要となる」と指摘。「機器による見守りを『監視』と感じる人もいる。利用法を理解してもらうことも求められ
る」としている。

「居住サポート住宅」認定制度新設へ

 単身高齢者の見守りを支援するため、国も対策強化に乗り出す。国土交通省は、見守り機能が付いた「居住サポート住宅」の認定制
度の新設を目指している。今国会で審議中の住宅セーフティネット法などの改正案の成立後、補助制度などの整備を進める。
 賃貸物件では孤独死や遺品の処理への対応を懸念する大家が、高齢者の入居を断るケースがある。国交省の2021年度のアンケート調
査では全国の大家や不動産管理会社など187団体のうち、高齢者の入居に拒否感があるとの回答が66%に上った。
 新設する制度では、福祉事務所を設置している自治体が、賃貸アパートなどをサポート住宅に認定。都道府県が指定する「居住支援
法人」が高齢者宅を訪問し、入居後の日常的な見守りを行う仕組みだ。人感センサーといったICT機器の活用も検討されている。
 35年までに10万戸の確保を目標に掲げる。国交省安心居住推進課の担当者は「サポート住宅を増やすことで、大家の不安感を軽減
し、高齢者の支援につなげたい」としている。
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住宅確保要配慮者に対する居住支援あり方検討会の「中間とりまとめ」要配慮者の家賃の過重負担言及せず

2024年02月27日 | 居住支援
 高齢者や低額所得者、障害者など住宅確保に配慮が必要な方々(住宅確保要配慮者)が安心して生活を送るための住まいの支援が大きな課題となっています。国交省、厚労省、法務省の三省の連携による住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会が昨年7月から開催され、12月5日に「住宅確保要配慮者のあり方に関する中間とりまとめ案」を発表し、パブコメの募集を行い、全借連として1月18日付で同案について事務局長名で意見を提出しました。

 同案では、現状と課題について高齢単身者の増加、50歳代以下の世帯の持ち家率の減少、高齢者の居室内の死亡事故等に対する賃貸人の不安、住宅確保要配慮者に対する民間賃貸住宅の入居制限、居住支援事業の赤字、セーフティネット登録住宅の低家賃の住宅が少ない等の課題を挙げていますが、要配慮者の家賃負担について全く言及されていません。今後の取組みについては、家賃補助(住宅手当)等家賃負担の軽減に対する支援がなければ要配慮者の安定した住まいの確保することができないと主張しました。また、単身世帯の増加や民法改正で家賃債務保証会社の利用が増加し、保証会社が厳格な信用調査を行う場合があり、保証会社の審査に通らず要配慮者が入居できないと説明しています。保証会社はそもそも連帯保証人を立てられない賃借人のための事業だったはずが、連帯保証人を立てていても保証会社との契約を強要されています。賃借人の保護をせずに入居拒否など止めさせ、保証会社の法律による規制を強く求めます。

賃貸人が住宅を提供しやすい市場環境の整備という視点ではなく、賃借人が安心して住み続けられる政策の視点こそ必要です。

(全国借地借家人新聞より)


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居住支援少ない男性にもシェルターを。犯罪歴ある人の身元引受けなど、金沢市の不動産会社エリンクが支援つづける理由とは

2023年09月05日 | 居住支援
https://suumo.jp/journal/2023/08/31/197628/

金沢のまちは、観光地としても名高く、冬は雪深い土地。この石川県金沢市で居住支援を行っている不動産会社、エリンク代表の谷村
麻奈美さんは、生活保護受給者や障がいのある人に住まいの斡旋だけでなく、一時的な避難シェルターや入居した後の継続的な支援、
見守りを提供しています。エリンクの不動産会社としての活動のほか、NPOの設立や金沢における居住支援の課題などについて聞きま
した。

住まい確保に困っている人たちを断るのが辛かった

金沢市にある不動産会社エリンク。子育て世帯・ひとり親世帯・高齢者・生活保護受給者・障がい者・犯罪歴のある人などを中心に、
賃貸物件の仲介や管理を行っている(画像提供/エリンク)
石川県金沢市。北陸新幹線が通り、県庁所在地でもあるこの地に、エリンクという不動産会社があります。従業員4人という規模なが
ら、子育て世帯・ひとり親世帯・高齢者・生活保護受給者・障がい者・犯罪歴のある人など、賃貸住宅への入居に困難を抱えている人
たちに物件を紹介し、2022年には住まい探しをサポートする居住支援法人として登録されました。
住まい探しが困難な人たちは、さまざまな事情を抱えています。生活保護を受給するために自治体の定めた家賃以下でなければ入居で
きなかったり、生活支援や見守りといった入居後の暮らしに継続的な配慮やサポートが必要な場合があります。また、家賃の滞納や孤
独死などを懸念するオーナーや管理会社が、入居を敬遠することも。居住支援では、それらの課題を一つひとつ乗り越えていかなけれ
ばなりません。
代表の谷村さんがエリンクを立ち上げたのは、2017年のこと。
それまでは会社員として別の不動産会社に勤めていましたが、会社の収益を上げるため、効率の良い仕事が優先されることに違和感を
感じていたと言います。
「通常よりも手間がかかる案件に時間をかけることについて十分理解されていませんでした。個人の思いとは裏腹に、住まい探しに
困っている人が来ても断らざるを得なかったのです。相談に来た人が残念そうに店を後にする姿を見るのは、とても辛いものでした」
(エリンク 谷村さん、以下同)
組織の中にいては思い通りにできない。どんな人でも受け入れられる不動産会社をつくろう、と立ち上げたのがエリンクでした。

「時間をかけて入居者との関係を築いていく」エリンクの居住支援

現在、谷村さんを含むスタッフ4名のうち、普段から住宅の確保に配慮が必要な人たちの居住支援を行っているのは、谷村さんと従業
員2人の3名。この記事のインタビューの最中も、ひっきりなしに電話がかかってくる忙しさです。
賃貸物件の紹介だけでなく、入居後、連絡が取れなくなったときには様子を確認しに行ったり、「体調が悪くて家賃の振り込みに行け
ない」と連絡があれば谷村さんたちが部屋まで集金に行ったりします。時には「給付金の申請をするのに書き方がわからない」と電話
がきて書き方を教えに行くなど、頼まれれば入居者を訪ねることも日常なのだそう。
また、ある時は上の階に住む人とけんかをした入居者が警察に連れて行かれ、ほかに身寄りがないため、谷村さんが身元の引き受けに
行ったこともあります。「なんでお前が来たんだ」と怒鳴られ、すかさず谷村さんも「オーナーさんの迷惑になることを考えて!」
と大声で言い返したのだとか。谷村さんは「『なんでも相談所』のようでしょう?」と笑いながら話します。
「大事なのは入居者と信頼関係を築くこと。大げんかしたその入居者とも、1年以上の時間をかけて、時には人生相談にも乗り、関係
をつくり上げてきました。だからこそ、本音でぶつかり合えるのだと思います」

経営的にはギリギリ。それでも達成感を感じている

それでも経営は赤字ギリギリの状態です。居住支援法人に登録した理由の一つには、助成金がないと居住支援事業を継続するのが難し
いという背景もありました。
「会社や事業には、それぞれの客層やターゲットというものがあります。低所得者など住まい探しに困っている人に重点を置いている
不動産会社がなかったので、私は逆にそこに事業としてのチャンスがあるのではないかと思ったのです。何より、さまざまな問題を解
決していかなければならないことは、むしろ楽しそうだと感じました。
私自身が、そういう性分なんです。普段の仕事はもちろん大変ですけど、達成感があるので忘れちゃう。嫌なことも楽しいことも波が
あることを楽しんでいます。経営は厳しくても、私がやりたかったことを実行できているという点では『成功』だと思っています」
現在、エリンクのホームページに掲載している物件の中で、生活保護受給者が入居できる家賃のものは1200件以上。それ以外の物件数
は600件ほどなので、住まいに困っている人の支援にいかに力を入れているかがわかります。しかしそれぞれの物件で入居に必要な条
件が異なるため、どうしても入居できない場合は、谷村さんが保有している3室を含め、160室ほどのエリンクの管理物件から紹介して
いるそう。
これらのエリンクが管理する部屋は、長年空室で悩むオーナーさんが、エリンクの取り組みをメディアを通して知ったり、別のオー
ナーさんからの紹介で「空室にしておくよりは、困っている人に貸してほしい」と託されたもの。オーナーさんの理解も得て、エリン
クでは2022年中に住まい探しに困難をかかえる人から相談があった約95件のうち、67件が入居に至っているのだそうです。

緊急で住まいを必要とする人には男性が多い!? 石川県・金沢市の事情とは

エリンクを訪れる相談者の特徴は、30~60代の男性が圧倒的に多いということ。
その理由は、ちょうど一般的に「働き盛り」とされるこの年代で、行政には住まいに困っている男性を受け入れる受け皿がないためだ
と、谷村さんは分析しています。
「石川県には、住まいに困っている女性や子どもに対しては『女性センター』や『母子寮』など、行政で受け入れる場所があるのです
が、住まいを失った男性向けの一時的な避難場所となる『シェルター』のような施設がありません。職を失って社宅や寮を出なくては
ならなくなった人が、ネットカフェや車中生活をせざるを得ない状況が多いのです」
そこで普段はNPO法人「安心生活ネットワークいち」(活動内容については後述)の事務所として利用している店舗の2階を、緊急用の
民間シェルターとして確保しています。しかし一度に1名しか利用できないので、いつでも空いているわけではありません。「もっと
一時的に避難するシェルターとなる場所が必要」だと、谷村さんは訴えています。

金沢における居住支援法人の活動、行政との連携は?

また、もう一つ、谷村さんが課題として挙げるのが、居住支援に携わる人たちや組織が連携するためのネットワークや体制づくりで
す。
住まい探しに困っている人たちに居住支援を行う各地方自治体の住宅部門は、福祉部門との連携がうまく取れていないことが課題に
なっているところも少なくありません。かつてエリンクの存在は、石川県や金沢市の住宅部門・福祉部門いずれの担当者にも知られて
おらず、住まいと福祉の連携もありませんでした。
「生活保護を受けている人が提出する賃貸借契約書などの書類にエリンクの名前がたびたび上がるのを知った金沢市の社会福祉協議会
の方が当社を訪ねてくださって。2019年ころから、家賃を支払えず困って社会福祉協議会に相談に来る人の紹介を受けたり、こちらか
ら給付金が利用できないかを尋ねたりというつながりができました」
今では、金沢を地盤にしている福祉関係団体や弁護士から多くの問い合わせが来るようになったそうです。
「ただし、今は何かトラブルや問題が起きた時にその都度、担当者同士の個人的なつながりを頼りに連絡をとって対応しているので、
スムーズに支援ができている状態とは言えません。支援を必要とするより多くの人たちを的確にサポートしていくためにも、ネット
ワークづくりや連携の仕組みが必要です」

「入居後の孤立を無くしたい」谷村さんの新たな一歩

協力してくれるオーナーさんも増えて入居まではサポートできるようになったものの、谷村さんは「入居した後も人や社会とつながり
を持てない、孤立している人をどうにかしなければ」との思いを強くしたそうです。
不動産事業のオプションとしてではなく、本腰を入れて入居後の生活までサポートする必要があると考え、2022年12月にオーナーさん
や司法書士、引越し業者や特殊清掃業者など、応援してくれている人たちを会員としてNPO法人「安心生活ネットワークいち」を設立
しました。
孤立を防ぐために谷村さんたちが早速始めたのは、金沢市社会福祉協議会の事務所を会場として開催する「おむすびの会」。
「支援者も受益者も関係なく、ごちゃ混ぜで『みんなで楽しくおむすびをつくっておしゃべりをしよう』という趣旨の会で、誰でも参
加できて、しかも無料です。不要な食べ物をもらいに行って、それを欲しい人に届けるフードバンクの活動も行っていて、今は車1台
のみで配っていますが、もっと増やしていきたいと考えています」
入居前のサポートから入居後の見守り、そして引きこもりがちな高齢者や障がい者、犯罪歴のある入居者などが社会とつながるサポー
トを目指す谷村さんたちの活動は、前へ前へと進んでいるようです。
「孤軍奮闘」。谷村さんと周囲の人たちの活動を知り、そんな言葉が頭をよぎりました。
最後に谷村さんは、「ライバルをつくることになるかもしれないですが、私たちのような不動産会社がもっと増えればいいと思ってい
ます。それだけ、困っている人がいるということです」と話してくれました。
金沢市内には他にも居住支援や生活支援に携わる団体や企業が存在するでしょう。しかしネットワークや仕組みが未だできてない理由
の一つは、金沢にはとても奥ゆかしい人が多い風土だからなのだそうです。「『やれたらいいよね』という人はいても『よし、やろ
う』という人がいない」と谷村さんは打ち明けます。
谷村さんのようなリーダーが増え、その人たちが繋がることができれば、金沢の居住支援は大きく前進するのかもしれません。そし
て、住まいに困っている人たちを包括的に支援するためには行政の協力も欠かせません。現状の周知と連携強化を訴え、谷村さんたち
は今日も活動を続けています。

●取材協力
株式会社エリンク
https://www.alink-kanazawa.com/
特定非営利活動法人安心生活ネットワークいち
https://ichi-kanazawa.org/
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