③更新料・一時金を根絶させる運動
更新料は借地借家法や民法にも法律上の規定はなく、法律上も慣習上も支払い義務のない金銭である。賃貸借契約書に一義的かつ具体的に更新料を支払う旨の合意がある場合のみ更新料の支払い義務が生じる。更新時に更新料を具体的に支払う金額が計算できる特約がなければ、支払いを拒否できる。最近では、貸主側も東借連と常任弁護団が2012年に発行した「更新料解決マニュアル」(旬報社)などを読んで研究し、一義的かつ具体的な更新料支払い特約が明記した賃貸借契約書を作成することが多くなっている。今後、賃貸借契約書の作成には十分注意する必要ある。
賃貸借契約の更新するに当たっては、契約書を作成して合意で更新する場合と、契約書を作成せず法定更新する場合と二通りの更新の方法が、借地借家法で認められている。法定更新を選択しても、更新ができることを多くの借地借家人に知らせ、契約の更新についての法律知識を学習しよう。
なお、定期借家契約は契約期間が満了すると賃借人には更新を請求する権利はなく、無条件で借家を明け渡さなければならない。再契約が可能と契約書に書いてあっても再契約できるとは限らない。再契約と更新との言葉の意味も理解していない借主も多く、定期借家契約について十分に注意が必要である。
④明渡し・原状回復他の取り組み
建物の老朽化・耐震性不足等を理由にした借家の明渡し問題は、依然として深刻な問題である。借家の転居先が見つかっても、家賃が値上がりして高額で家賃の支払い能力を超えている場合があり、高齢世帯は貸主が敬遠して借家を貸してくれない、連帯保証人がいない・緊急連絡先がないと保証会社の審査で落とされる、家賃保証会社と保証委託契約を結ばないと借家を貸してもらえない等の困難問題が起きている。立ち退き料をもらっても、解決ができない問題である。
借家の明渡しは、借家人の住まいの権利の問題である。借地や借家の明渡しは、地主・家主に明渡しを請求する「正当事由」がなければ、明渡しを請求する権利はなく、借地借家人には住み続ける権利がある。明渡しの裁判の中で、一定の立退料を正当事由が足りない分を補完するとの裁判例もみられる。立退料をもらえれば、借主が以前と同じように生活を維持できるとは限らない。
借地借家人の住み続ける権利を守るために、借地借家法の正当事由制度を守り、お金の力で賃借人の権利を弱める「立退料によって正当事由を補完する」ことに反対しよう。
借家の退去後に発生する原状回復トラブルは依然として多い。原状回復問題は、民法と特約について2つの点から考える必要がある。第1に、民法が2020年4月の改正で、民法621条で賃借人の原状回復義務は「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文化された。国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(2011年再改定版)では「賃借人の故意過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・棄損を復旧すること」と定義された。賃借人が普通に使っていて、建物や設備が痛んだものは原状回復する必要はなく、どのような場合が通常使用を超えるのかガイドラインで整理されている。
第2に、特約については、民法上の規定と異なり、賃借人にとって不利な特約が有効か否かを判断した2005年12月16日の最高裁第2小法廷判決が非常に重要であり、「(賃借人に不利な特約が)賃借人が負担する契約書の条文に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭で説明し、賃借人が明確に認識し、明確に合意されていることが必要である」とされ、また消費者契約法違反になっていないかも問われるなど、特約を契約書に書くだけでは無効になるケースが多い。
ガイドラインでは、建物の設備等の減価償却の考え方が取られており、ガイドラインをしっかり学習し、原状回復トラブルに対応していくことが重要である。