東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

高齢者、家借りやすく 遺品処理など孤独死リスク対応

2021年11月26日 | 最新情報
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD15A6M0V11C21A1000000

高齢者が賃貸住宅に入居しやすくする取り組みが不動産業者で広がっている。高齢者が物件を借りようとする場合、孤独死などのリス
クからオーナーに敬遠されやすい。亡くなった後の持ち物の処理を引き受けたり、こうした物件の情報を開示し納得してもらったうえ
で転貸したりすることでオーナーや高齢者の負担を軽くする。
高齢者の持ち家率は全体的には高いが、単身世帯に限ると、賃貸住宅などに暮らす割合は約3割にのぼる。総数は2018年時点で200万世
帯を超える。賃貸で長く暮らし続ける人がいる一方、持ち家があっても子どもの独立や配偶者の死亡などを機に、コンパクトで交通の
便が良い賃貸へ移ることを考える人も一定数いるとみられる。
ただ、思うように入居できない高齢者が少なくない。入居中に亡くなって「事故物件」になることなどへの警戒感がオーナーに根強い
からだ。

持ち物の処理、引き受け

不動産会社のフラット・エージェンシー(京都市)は昨年、高齢者の専用店「下鴨ひろば」(同)を開いた。平均年齢70歳のベテラン
従業員のみを配置した。「同年代の視点から、高齢者の住まい探しを支援する」(同社)ことが狙いだ。
同社はオーナーから家を借り、高齢者に転貸するのと並行し、入居後の見守りサービスも手掛けてきた。今後は専用店舗の開設を機に
事業の範囲を広げる。例えば、高齢の入居者が亡くなったとき、部屋に残された持ち物処理の事務作業を引き受ける。持ち物の扱いに
苦慮するオーナーは多く、処理を受託することで入居の拡大につなげる。
下鴨ひろばで今年末にも、この事業の相談会を始める。将来は複数の高齢者が同居するシェアハウスも転貸方式で展開する方針だ。候
補の物件は、地域の空き家などの活用を視野に入れる。

事故物件、情報開示して転貸

通常は入居をためらう事故物件を逆に活用するのが不動産会社のMARKS(横浜市)だ。オーナーから借りた事故物件を高齢者へ転貸す
る事業を昨年、始めた。入居を予定する高齢者には、自殺なども含め物件の事故情報を開示し、納得してもらったうえで、見守りサー
ビスなども加えて契約する。
「立地や部屋の広さなどの条件が良く、通常より賃料が割安な物件もある」(同社)。老後資金の節約のため事故物件を積極的に選ぶ
高齢者も増えているといい、すでに複数の契約を結んだ。

受け取れなかった家賃、保険で補償

東京海上日動火災保険は今年10月、入居者の孤独死などが原因でオーナーが受け取れなかった家賃を補償する保険を拡充する検討を始
めた。要望に応じ、従来より1年長い最大3年の損失を補償する方針だ。
15年の発売以来、保険の契約は伸び続けており、同社は「リスクヘッジをさらに厚くすれば、もう一段の高齢者の入居促進につなが
る」とみる。
単身の高齢入居者が亡くなったときの賃貸借契約の解除などを円滑にする契約のひな型を、国土交通省が今年6月に公表するなど、国
も流通促進に動き出した。入居者の死後、契約を解除できる代理権を持つ第三者「受任者」を入居時に定めるのが柱だ。受任者には部
屋に残った持ち物の処理を任せることもできる。
不動産コンサルティングのさくら事務所(東京・渋谷)の長嶋修会長は「孤独死などのリスクに対応する制度は整いつつあるが、高齢
者を積極的に受け入れる動機づけがまだ乏しい」と指摘。「物件によっては国がオーナーから借り上げ、高齢の入居者に転貸するな
ど、さらなる流通促進策も検討すべきだ」と話す。
(堀大介)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地上げ、原状回復のトラブルの相談急増

2021年11月22日 | 明渡しと地上げ問題
神奈川県の組合員の皆さんから、次の相談が寄せられています。地上げ問題で「家主が変わったと突然見知らぬ男が来て、“土地を買いたい。地代は集金で”と言われ、地代の期日が過ぎてもう2か月も”次回に“と集金に来ていない。どうしたらいいのか」、と。「所有者を調べ期日通りに地代を振込み、地代の遅延で訴訟になる場合もあることから馬車道法律事務所に相談し、供託など至急対応すること」。

原状回復請求相談では、「借家に25年住んで退去の際、敷金を差し引かれたうえ、高額なクリーニング代を数十万円請求されました。日当たりの悪い部屋で最初からあちこち壊れていた。家主は一度も家の建てつけや畳の張替えも一切してくれなかった。家主の請求に納得がいかない」。

相談者に「個々の請求について、家主に請求の根拠を示すよう、故意過失が無く通常損耗や経年劣化の場合には支払い義務はなく、敷金返還の内容証明を送る事」などをアドバイスしました。「組合を継続してよかった」と激励が寄せられています。(全国借地借家人新聞より)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更新料は支払い義務なし、高裁の判決に不服の地主最高裁の上告を断念

2021年11月22日 | 契約更新と更新料
借地人の国立さん(仮名)は20年前更新料100万円を支払い合意更新しました。今回の更新については法定更新を主張。地主は弁護士を通じ合意更新するよう強硬に主張し、高額な更新料支払いと大幅な賃料増額を請求。葛飾借地借家人組合を通じ、請求を拒否しました。地主は調停を申し立ててきましたが、話し合いはまとまらず不調になりました。その後、地主は東京地方裁判所に提訴。契約書に更新料特約は存在しないが、支払い合意があり慣習もあると主張してきました。

地裁での判決は更新料支払い義務を認めず、賃料増額も地価は下落しており地主の主張は認めるに足る証拠はないとして請求を棄却しました。地主は東京高等裁判所に控訴しましたが高裁の判断は控訴棄却。さらに地主は最高裁判所に上告しましたが、取り下げたため控訴審判決で確定。

本件の裁判では土地評価証明と鑑定書が提出されましたが証拠として採用されない画期的なものでした。20年前の賃料が現在に至っても相当額であるという判決は大変意義があり、80歳を超えた高齢借地人の頑張りがもたらした成果です。
(全国借地借家人新聞より)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

耐震性不足を理由とする契約解除・更新拒絶を認めなかった事例

2021年11月17日 | 最高裁と判例集
 耐震性の不足を理由とする契約解除・更新拒絶請求を認めなかった事例(東京地判平成25年12月25日)

1 事案の概要
 建物は昭和53年築の居住用マンションで、契約書には「天災、地変、その他賃貸人の責によらない事由により、賃貸借物件を通常の用に供することができなくなったと賃貸人が認めたときは、本件賃貸借契約は当然に消滅する」という終了特約があった。耐震性能調査では図面上の耐震壁が実際には存在しない、梁の鉄筋本数が耐震基準の2分の1から3分の1程度であることなどから、「震度6弱程度の地震にみまわれた場合、構造体に損傷が発生する可能性が高い」との結果が出ている。賃貸人は、この調査結果を踏まえて①終了特約に基づく契約の終了と②期間満了による更新拒絶(立退料の提供あり)を主張して、賃貸人に対し明け渡しを求める裁判を起こした。
2 裁判所の判断
(1)終了特約による契約解除の主張
 建物の状態については、先の耐震調査結果を踏まえて、「耐震構造上の問題があって、マンションの入居者のほか第三者の生命、身体へ危険を及ぼす危険性を有している」と認めた。しかし、終了特約については、「(賃貸人は)賃貸借の目的物に瑕疵がある場合には、その瑕疵を修繕する義務を負っている(民法606条1項)のであり、終了特約が直ちに賃貸借契約が終了するという賃借人にとって著しく不利益な効果をもたらすことを踏まえると、終了特約の『通常の用に供することができなくなった』状態とは、「賃貸人において通常の用に供するための修繕をすることが不可能な状態であることをも要する」と判断した。そして、賃貸人が耐震補強(修繕)工事を行うことは多額の費用を要すると主張している点について、どのような耐震補強工事が可能または不可能なのか、どれだけの費用がかかるのかなどについて「なんら具体的な主張立証をしていない」として否定し、終了特約に基づく契約終了を認めなかった。
(2)更新拒絶の主張について
 賃貸人が住居以外に、生計を維持するための事業としても使用していることから自己使用の必要性は高い。他方、建物については解体して新たな建物を建築する必要性があることは否定できないとしつつも、(1)で述べた耐震補強工事を行うことが不可能であるか否か等が明らかにされていない状態では、立退料の提示があることを考慮しても、なお更新拒絶には正当事由がないと判断し、契約解除を認めなかった。
3 コメント
 本事例から、耐震性能検査で建物に問題点が指摘されたとしても、取り壊しではなく補強工事によって対応が不可能か、可能であっても多額の費用がかかることを賃貸人側で具体的に明らかにしなければ容易には契約解除が認められないことが分かる。立退請求を受けた場合、このような観点から賃貸人側の理由を具体的に精査することが必要であるといえる。

(弁護士 松田耕平
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家賃保証会社が不法行為 法規制と公的制度を

2021年11月16日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 家を借りる際、いまや8割が利用している家賃保証会社。コロナ禍の雇用危機で家賃の支払いに窮する人が増えるなか、強引な支払い督促などのトラブルが絶えません。法規制を求める動きから10年以上。業者の野放し状態がつづいています。
  連帯保証人にかわり家賃滞納時に賃料を保証するのが「家賃保証会社」です。入居者は委託料などを保証会社に支払います。
東京都の藤田美佳さんは、ツイッターで家賃保証会社とのトラブルの相談にのっています。情報を寄せた人は約1200人です。
「家賃の分割払いに応じない、支払えないと嘘つき呼ばわり。家や職場に鬼のように催促の電話をする」「法外な退去料を請求され『さっさと払え』の一点張り。子どもの奨学金で工面した」「家賃を滞納してないのに保証会社に勝手に鍵を変えられた。振り込んだ家賃を大家に渡していなかった」という〝大家も被害者〟という事例までも…。
藤田さん自身も被害者です。部屋を借りて1年、請求書が届きました。「契約時には何の説明もなかった」委託保証料でした。「納得できない」と支払いを拒んだところ弟の会社にまで電話をかけてきました。「矢の催促に耐えかねて支払う人もいるのでは」と懸念します。
 家賃保証会社について、全国の消費生活センターに寄せられた相談は2010年度が最多で741件。その後、減少しましたが、19年度は485件と高止まりしています。
 国土交通省によると、家賃保証会社は約250社。「把握できてない会社もある」といいます。そのうち同省が定めた登録会社が83社(9月現在)。家賃保証会社の利用率は年々増え、賃貸借契約の8割に上るといいます。
「生活弱者の住み続ける権利対策会議」副代表の及川智志弁護士は、貸金業法の規制強化でサラ金などが倒産したことが家賃保証会社の増加の背景にあると見ています。
かつて返済に窮した債務者に「目ん玉売れ」などと脅迫的な取り立をして社会問題となった「商工ローン」。同社の社員が家賃保証会社の社員になっていた例もあります。「貸金業の元社員が取り立てのスキルを使い、追い出し行為をくり返している」と問題視します。
家賃保証会社をめぐっては、家賃滞納を理由に勝手に鍵を替える、家財を撤去・処分するといった不法行為が横行。違法判決も相次いでいます。 
及川弁護士は「一つひとつ裁判で救済していては間に合わない。本来は居住権があるのに住まいを失う被害者も出てくる。法規制が必要です」と話します。
 東京借地借家人組合連合会の細谷紫朗会長は「国の登録制度は任意のため登録なしでも営業ができる。悪質な取り立て行為や違法な契約に対し、事実上の野放し状態が続いています」といいます。
保証会社が連帯保証人を要求する「ダブル保証」も増えています。
さらに低所得を理由に利用すらできない人も増えています。同組合の調べでは、家賃保証会社の審査に「落とされた」と答えた人が3割もいます。
「生活困窮者は保証会社から契約を拒否されると部屋を借りられない。住まいの貧困をこれ以上広げないためにも、法規制ともに公的な家賃保証制度が必要です」と訴えます。

(新聞赤旗11月16日報道記事)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

建物の老朽化により建て替えの必要性があり、相応の立退料を支払うことを前提にした契約の解除、明渡請求を認めなかった事例

2021年11月01日 | 最高裁と判例集
東京地方裁判所2019年12月12日判決を紹介します。

事案としては,賃貸人は,建物(本件建物)が,木造建物の貸与年数(22年)を優に超過し,旧耐震基準の建物であるため,倒壊の危険性があるところ,耐震補強工事には多額の費用がかかるので,建替えの必要性があり,相応の立退料を支払うことを前提に,契約の解約予告(本件解約予告)をしました。これに対し,賃借人は,一級建築士(A)の意見書を提出し,早急に耐震補強工事や建替工事を要する状況になく、比較的平易かつ安価の補強が可能であると反論しました。
判決では,「我が国の木造建物には旧耐震基準の建物が多数あると考えられ、その全てが現在直ちに建て替える必要があるといえるものではない。そして、A意見書によれば、本件建物は、①昭和34年の新築当時、建築確認及び完了検査を受けた建物で、②その基礎は、現在でも一般に採用されている鉄筋コンクリート造の布基礎で、全体として矩形のそれほど複雑でない平面をした瓦葺き平家の建物である上、③全体的に壁量が多いことから平成12年改正後の壁量に関する基準に準じている可能性が高く、④仮に適合しない場合にも、同基準に示された補強は比較的平易に行い得、⑤土台等に白蟻による被害も見当たらず、東日本大震災を含む地震等による損傷の跡は殆ど見当たらないとされ、これらのことから、現況のままで、ある程度の規模の地震には対応することができ、早急な耐震補強工事や建替工事が必要とはいえないとされている。」などと述べ,「立退料による正当事由の補完を検討するまでもなく、本件解約告知に正当事由があると認めるのは困難である。」として,賃貸人の請求を棄却しました。

建物の老朽化を理由にした更新拒絶(解約予告)の相談は多く,築後50年前後の木造建物の場合,賃貸人は,旧耐震基準で倒壊の可能性が高いと主張し,裁判所も,特に東日本大震災以降,その主張に好意的な印象を受けます。しかし,この判決は,建物の構造・現状によっては,賃借人側でも,一級建築士などが作成した意見書を提出するなどして,専門的・具体的な反論をすることにより,明渡請求を棄却した事例として,参考になります。

(弁護士、種田和敏)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする