東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

借地人が地主に対して建物買取請求権を行使できるのはどんな場合ですか

2006年08月31日 | 借地借家の法律知識
(Q)私は借地をし、その上に自分の建物を所有していますが、借地人は地主に建物の買取を求めることができるという話を耳にしました。この買取請求というのは、どのような場合にできるのでしょうか。

(A)建物買取請求権は、借地契約が更新されない場合は、借地人が借地契約によって認められた権原にもとづいて建築した建物、その他土地に付属させた物を、地主に対して、時価で買い取るよう求めることができる権利です(借地借家法13条、旧借地法4条2項)。この権利は、借地人が地主に対して、買取を求める時価(買取を求めた時点での相当な価格)での売買契約を強制的に成立させてしまうもので、地主には、買取を拒否する自由は与えられていません。

●建物買取請求権を行使できる場合
1、借地人が建物買取請求権を行使できるのは、「借地契約が更新されない場合」です。
①借地権が消滅したものの、契約の更新がないことが必要です。借地権が消滅する場合の一つは、借地期間が満了し、地主がその更新を拒絶することに正当な事由がある場合(旧借地法4条1項)です。次に、借地権の消滅後に借地人が土地の使用を継続したものの、地主が遅滞なく異議を述べ、その異議に正当な事由がある場合(旧借地法6条)も、これに含まれると解されています。さらに、借地人が、地主の借地契約の更新を拒絶する申し出に正当事由が備わっているか否かを問題にすることなく、地主の請求に応じて明渡しを承認した場合にも、建物買取請求権が生じるとされています。

2、このように、建物買取請求権は、借地契約が期間満了により終了することを前提としています。そこで、普通借地権に関し、借地借家法が適用される平成4年8月1日以降に締結された借地契約については、現時点においては、建物買取請求権が発生するような契約はないと言えます。

3、建物買取請求権は、借地権が更新されることを前提に、更新されない場合に認められることを前提に、更新されない場合に認められることを前提としています。そこで、借地契約が、借地人の債務不履行で解除された場合、または借地契約の期間中に合意解除された場合には、買取請求権は発生しないのが、判例です。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094

相談日は 毎週 月・水・金 午前10時から午後4時まで

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

50年近く住んだアパートの明渡し 家主「タダで出て行け」

2006年08月30日 | 明渡しと地上げ問題
板橋区中板橋の鈴木さんは、このアパートに住んで50年近くになる。隣に住む家主とは古い付き合いで、トラブルらしいことは一度もなかった。
 建物は古く、一部にヒビも入っていたが、2年前に契約更新して、来年の4月まで契約期間があった。

 ところが、建物を相続した子供達が6月に「建替えるので、明け渡せ」と言ってきた。鈴木さんは、契約の残存期間もあり、争いごとは好まないので、そのうち引越そうと思っていた。
 しかし、家主は不動産屋を介して「引越料は出さない、来年早々に明渡せ」と強く要求してきた。

 困った鈴木さんは、借地借家人組合に相談した。組合では早速「明渡請求には正当事由が無い。建物は古いが住めないわけではない」と、家主に通知をした。
 家主は、内容証明郵便で、昭和19年の大審院判例などを挙げて争う旨、通知してきた。

 その後、組合が代理人の不動産屋に「2年前にはまだ住めると言って契約を更新した」ことなどを指摘すると、「申し訳なかった。鈴木さんが希望する家賃の20ヶ月分の支払には応じますので、話し合いをまとめてください」と譲歩してきた。

 鈴木さんは「一時はどうなることかと思ったが、組合にお願いして助かりました。私のような者が安心して住めるような世の中にしてください」と語った。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人悩まずご相談を  042(526)1094

本日は午後1時から相談受付けます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東借連夏季研修会 相談実例で実践的な研修を実施

2006年08月29日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 東借連主催の06年夏季研修会が8月27日午後1時30分から豊島区勤労福祉会館において32名の参加で開催されました。全借連から事務局の中村さんと千葉借連の松川さんが参加しました。
 佐藤会長が開会挨拶を行い、細谷専務理事が司会進行を行いました。今回の研修会のテーマは「借地借家の相談実例」で、正しい解答を設問から参加者に選択してもらい、常任弁護団の榎本武光弁護士に正しい解答と組合が相談事例にどのように対応したらよいか解説してもらいました。
 相談事例としては、賃料の供託・消費税・増改築と修繕・明渡し・更新料・賃料増減・退去時の原状回復から16の設問について研修しました。
 例えば、「賃料を貸主に持参したら、内金なら受け取ると言われた。供託ができるか。①供託できる。②賃料を払った方がよい。③どちらでもかまわない」という具合で、とても実践的で役に立つ研修会となりました。

賃貸トラブルのご相談は

安心して相談できる 東京多摩借地借家人組合

 042(526)1094

契約書など書面持参でご相談下さい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

退室後のクリーニング費用を請求どおり支払わないといけないか

2006年08月29日 | 敷金と原状回復
(Q)建物を明け渡したあと、部屋の中を業者がクリーングした費用を賃貸人から請求されました。しかし、その金額が予想していたよりも多いのですが、全額支払わなければならないのでしょうか。


(A) 請求されている費用が実際にかかった費用であっても賃借人が全額を支払う義務があるとは限りません。たとえば、賃借人が、通常の使用をしていて部屋の壁が薄汚れてた場合には、たとえ賃貸人がその壁紙を張り替えたとしても費用を賃借人に負担させることはできません。そもそもこのような汚れは最初から賃貸人が予想できることだからです。他方、賃借人の不注意で煙草による焦げを畳に作った場合や家具を移動したときにできた床・壁の傷等賃借人の不注意で生じた疵の補修費用は賃借人が負担しなければなりません。先ずは、かかった費用の具体的な内訳を明らかにしてもらい、内容をチェックしてみましょう。賃貸人側が交渉に応じない場合は、お早めに各地の借地借家人組合にご相談ください。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まずご相談を  042(526)1094

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地主から再契約は面倒だから土地を買ってくれといわれたが

2006年08月27日 | 借地借家の法律知識
(Q)期間20年の約束で土地を借りて、木造の家屋を建てて住んでいますが、最近地主から「契約期間が切れたが、再契約といのも面倒だから、いっそのこと土地を買ってほしい。値段は時価は坪100万はしているが、建物があることだし50万でもよい」といってきました。私としても、契約期間も切れたことだし、買ってもよいと思うのですが、地主のいうとおりになってしまってはとも考えていますが。

(A)借地契約の期間が満了となったとしても、その地上に建物があるかぎり、地主がその土地を自分で使う必要があるなどの正当事由がなければ、借地契約は、法律上、当然に更新されることになっております。
 つまり、単に期間が満了したというだけでは、あなたの借地権が消滅してしまうことにはなりませんし、したがって、その土地を明渡さなければならないということには、決してなりません。まして地主には、その土地を買取ってくれと請求できるような、なんらの権利もありません。このような地主の申し出に対し、借地を買取るかどうかは、普通一般の売買と同じように、買手の意思次第、つまりあなたが買ってもよいと考えるかどうかにより決められることですが、結局は、この地主のいう値段いかんが大きなポイントになるのではないかと思います。

 そこで、この値段をどのくらいに決めたらよいかということですが、前述のようにあなたにはまだ借地権がありますが、いわゆる適正価格として理論上は、所有権―借地権=売買適正価格  ということになり、また普通借地権の価格は、一般の住宅地では所有権の60~70%で、商業地で80~90%と考えられています。時価については、公示価格、基準地価各、路線価格、評価価格と様々です、あなたの借地権が公道に接していれば、国税庁の路線価をインターネットなどで調べることができます。路線価は相続税を算出するための価格ですので、公示地価の8割ぐらいですので、あなたの借地権とほぼ同じ条件の公示価格と比較して、あなたの借地部分の時価をおおまかに算定することが可能です。借地権割合については、路線価に表示されているので参考にしてください。

 借地の土地を買取るかどうかですが、土地を買った場合の利回り等を考えても、地代を支払っているほうが、ずっと得です。地主が借地の増改築に応じてくれなければ、承諾料と引き換えに裁判所で増改築を許可してもらうことも可能です。借地であることは、決して引け目に感じることはありません。地主の言いなりになって無理して土地を買取ることはありません。最終的に、こちらの提示する価格に地主が譲歩してくれない限り、買取ることは考えないほうがよいと思います。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

一人で悩まず 東京多摩借地借家人組合へ

 042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「住宅セーフティネット」言葉だけでなく住宅に困窮している人達に人間らしい住まいを保障せよ

2006年08月26日 | 国と東京都の住宅政策
最近政府や自治体の文書でやたらと出てくる「セーフティネット」という言葉だが、語源はサーカスなどで落下防止のために張る網を指す語で、「経済的な危機に陥っても、最低限の安全を保障してくれる、社会的な制度や対策」を意味する。
 国土交通省は先月発表した「今後の公的賃貸住宅制度のあり方に関する建議案」で「住宅セーフティネット」の機能向上を、民間賃貸住宅を含めて構築すると提言している。国民は市場において自力で適正な居住水準の住宅を確保すべきであり、どうしても「市場において自力で住宅を確保できない低額所得者に対しては行政が一定の関与をして市場を補完・誘導する賃貸住宅の供給を進めていくことが重要である」という。具体的には少子化対策として「子育て支援の強化」などだが取り立てて目新しいものはない。むしろ、公営住宅は「真に住宅に困窮した人」に入居を限定するため収入基準を引き下げ、家賃負担を引き上げて入居者の追い立てを狙っている。
本当にセーフティネットというなら、収入に占める家賃負担率を示し、基準を上回る人たちや生活が困窮して家賃の支払が困難な人たちに家賃補助を実施すべきである。しかし、「居住の権利」を住生活基本法にも盛り込まない自民党政府に、国民が安心して住み続けられる政策など期待するほうが無理なようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

建物の朽廃で借地権は消滅するので契約の更新を拒絶すると言われたが

2006年08月26日 | 借地借家の法律知識
(問)過去に2回借地の更新をしている。18年前に合意更新した借地契約の更新が迫っている。地主は建物が老朽化して朽廃状態なので契約の更新はしないので明渡しの準備をするように言って来た。

(答)「借地借家法」(1992年8月1日施行)には「朽廃」に関する規定は置かれなかった。そのため建物が朽廃しても借地権は消滅しない(同法3条)。朽廃は「滅失」の場合として処理され、借地権の消滅原因ではなくなった。しかし、「借地借家法」施行以前に設定された借地権に関しては、同法附則5条によって「借地法」の「朽廃」規定が適用され、法定の存続期間の満了前に建物が自然に老朽化して建物としての効用を喪失した状態になった時点で借地権は消滅する(借地法2条1項但書)。
 朽廃というのは、一般的にいう建物に生じた自然的腐蝕状態によって建物の社会的・経済的効用を失った場合をいう。火災・地震・台風・水害等外部からの力で倒壊した場合の「滅失」とは異なる概念である。改築するために建物を取壊す場合も滅失になる。建物が「滅失」しても勿論借地権は消滅しない。
「朽廃」の規定が問題になるのは契約当事者が存続期間を取決めない場合である。例えば(1)法定更新の場合(2)更新請求による更新の場合(3)合意更新で期間を定めなかった場合、その(1)から(3)の法定存続期間中に建物が「朽廃」すると借地権は消滅する。(4)期間を取決めたが法定存続期間よりも短い期間を定めた場合も(1)から(3)の例に含まれる。
 ここで注意しなければならないのは、借地契約で鉄骨建物等の堅固建物所有の30年以上の存続期間を、その他木造建等の非堅固建物所有の20年以上の存続期間を定めた場合は「その期間満了前に建物が朽廃しても借地権は消滅しない」(最高裁1962年7月19日判決)。
 このように借地の存続期間を契約で定めている場合(借地法2条)、相談者の借地契約は期間を20年と定めているので、借地上建物の朽廃があっても借地権の消滅はありえない。従って地主は朽廃を理由に更新を拒絶することは出来ないし、建物が朽廃しても再築は可能である。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まずご相談を  042(526)1094

相談日は 毎週 月・水・金



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

契約更新で更新料を必ず払わないといけないか

2006年08月24日 | 借地借家の法律知識
(Q)契約期間が満了したので契約を更新するのであれば更新料を支払って欲しいと言われました。契約を更新するためには更新料を必ず支払う必要があるのでしょうか。


(A) 更新料とは、契約更新時に更新の対価として支払われる金銭を言いますが、更新料の支払う義務を定めた法律はありません。更新料の支払いは、契約書に支払うことが特約として明記さている場合には支払う必要があります。特約がない場合には支払う義務はありません。ただし、契約を合意で更新し、更新時に更新料の支払いを約束したのであれば支払う義務が発生します。更新料の支払いは、契約書に支払うことが特約として明記さている場合には支払う必要があります。特約がない場合には支払う義務はありません。ただし、契約を合意で更新し、更新時に更新料の支払いを約束したのであれば支払う義務が発生します。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

借主団体で安心して相談できる

東京多摩借地借家人組合まで  042(526)1094

相談日は 毎週 月・水・金 午前10時から

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

UR賃貸、高齢・単身世帯が急増/都市機構調査

2006年08月23日 | 最新情報
独立行政法人都市再生機構は21日、「平成17年UR賃貸住宅居住者定期調査結果」を発表した。1965年以来「公団住宅居住者定期調査」として5年ごとに実施しているもので、今回が9回目。前回までは公団分譲住宅等も調査対象としていたが、今回はUR賃貸住宅のみを対象とし、2005年3月31日現在、管理している賃貸住宅76万5,457戸のうち4大都市圏(首都圏、中部、西日本、九州)以外の団地や建替事業者着手団地等を除いた67万828戸を抽出。このうち6万5,858に調査票を配布。4万3,007票を回収した。調査は、2005年11月実施した。

 家族人数は年々減少を続け、2.22人(前回調査2.41人)。世帯主の年齢は平均54.3歳(同51.8歳)と上昇。これは、65歳以上の世帯主の割合が、29.4%(同21.3%)と大きく伸びたため。1人世帯の割合は32.1%(同28.3%)、2人世帯は33.1%(同29.4%)と小世帯割合がさらに増えつつある。
 居住者のうち15歳未満が占める割合は11.4%(前回13.7%)、65歳以上が20.4%(同13.8%)と、年少人口が減少し、高齢人口が大きく増加。家族構成のうち「65歳以上の単身居住」が11.3%(同8.2%)と大きく伸びるなど、UR賃貸住宅でも一層少子高齢化がいっそう進展していることが明らかになった。

 高齢者のためのサービスの希望(複数回答)として、緊急時対応サービスに対するニーズが高く43.4%(同49.6%)、以下デイケアサービス30.1%(同42.5%)、食事宅配サービス29.6%(同28.4%)が続いた。また、子育て支援のための施設・サービスとしては(小学生以下の子どもがいる世帯対象、複数回答)は、共用のキッズルーム45.6%(同16.2%)、学童保育施設35.0%(同17.6%)、一時預かりの託児施設35.0%(同18.2%)などのニーズが高かった。

独立行政法人都市再生機構

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借地の契約期限がもうすぐ切れるが、どのような手を打てばよいか

2006年08月23日 | 借地借家の法律知識
(Q)私は、戦後ある人から土地を借りていましたが、借地期間があと3ヶ月で切れてしまいます。どういう手を打てばよいのでしょうか。

(A)借地契約の期間が満了しても、借地人は建物を取壊して、借地を地主に返還しなければならないものではありません。建物が存在している以上、借地人は地主に対して、「契約の更新」を請求できます(借地法4条)。
 契約更新を請求すると、前の契約と同一条件で、更に借地権を設定したものとみなされますから、借地人は、強大な権利を持っているわけです。
 つぎに、更新請求の時期ですが、契約期間の満了前あるいはその後でも、遅滞なくこれをすることが必要です。契約更新請求書は、配達証明付内容証明郵便にして出したほうがよいでしょう。後で問題になったとき、請求の事実を証明するのに役立ちます。書類の書き方は組合にご相談ください。
 さて、地主は借地人の契約更新請求を拒むことができるでしょうか。土地所有者が、自分で土地を使う必要のある場合とか、その他正当事由がある場合に、すみやかに異議を述べたときは契約の更新請求を拒むことができます(借地法4条但書)。
 ですから、地主が右の規定に当たる理由を主張して、借地人の更新請求を拒んだときのみ、契約は更新されないわけです。地主に正当事由があるかどうかは、裁判所が判断します。
 もし、そのような場合には、借地人は地主に対し、借地上に建っている建物を買取ってくれ、という請求をする権利があります。
 借地権者の更新請求については、借地借家法でも借地法と差はありません(同法5条)。正当事由については、その判断のための事由が明確にされましたが(同法6条)、これまでの判例で確立した事由を明文化したもので、大きな変化とはいえません。

借地借家の賃貸トラブル 一人で悩まずご相談を

借地借家人組合は借主の助け合いの団体です。安心してご相談ください。

東京多摩借地借家人組合  042(526)1094

相談日は毎週 月・水・金   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

無断で長期不在をすると賃貸借契約は解除されるか

2006年08月22日 | 借地借家の法律知識
(Q)借家人Aは、しばしば無断で1ヶ月も2ヶ月も長期不在をし、管理上難渋しています。不規則ながら家賃を支払っています。1ヶ月以上の無断不在は特約で解除できる規定がありますが、Aは借家人に不利な特約で無効だと主張しています。長期不在で閉め切ると部屋も傷みます。不在を理由に契約解除は認められるでしょうか。

(A)土地、建物を含め、不動産賃貸借契約の解除については、信頼関係理論が確立しています。類型を見ると、賃料不払いや無断増改築、用法違反が問題となることが多く、借家人の無断不在の事例は少ないようです。
 1カ月以上の無断不在の禁止の特約に違反したら解除できるという契約条項は、上記の信頼関係理論による限定した解釈で、1ヶ月以上の無断不在の事実があり、かつ、これによって賃貸人と賃借人の信頼関係が失われているなら契約を解除できる、という趣旨において、有効な特約条項です。

 家主と借主Aとの信頼関係は、好きとか嫌いとか、相性が良い悪いの主観的問題ではなく、契約関係から生ずる権利の行使、義務の履行の態様、対応の姿勢などの具体的状況を客観的に評価するものです。次のような事情を理由に長期不在による契約解除を認めた判例があります(東京地裁・平成6・3・1判決)

「建物の特殊性」築後35年の木造2階建共同住宅(65歳の独り暮らし女性が所有管理)では、管理体制の整う大規模マンションと異なり、各賃借人自身、防災・衛星・通気など建物管理に協力していく必要があり、長期不在に際しては届出を要すると定める特約に合理性がある。

「違反の反復」1ヵ月半、2ヶ月余の不在を繰り返し、常態化といえる。友人に点検、開室させているというが、届出はなく、勝手に合鍵を作って渡している。

「協調性の欠如」賃借人夫婦は共にジャーナリストで海外出張が多いとしても、長期不在は仕事の都合上やむを得ないとか、友人に適宜点検させているから何の問題もない、と正当性を主張して譲らない態度は、円満な賃貸借関係、信頼関係を維持していこうとする意欲の欠如を示す重要な事実である。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094

相談日は 毎週 月・水・金  午前10時から午後4時まで
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃料減額に応じなう家主に訴訟で賃料減額で和解

2006年08月21日 | 定期借家制度
埼玉県春日部市で長年商売をしてきた山川さんは、三年前の更新の時に賃料値下げを請求した。そのときに、貸主は、ほんの僅かだけ賃料の減額を提案し合意した。同じ市内で店舗の明渡し問題で組合に相談し、希望するとおりの合意が出来た鈴木さんの話しを聞いて組合に相談することにした。組合では、契約書や近隣の相場などみたうえで賃料の減額請求と保証金の一部返還、更新料と保証金の償却などの問題を山川さんと話し合い、このすべてを請求することにした。貸主は自分ではだめと思い弁護士を立ててきた。話合いはしたがこちらの請求をほとんど拒否したために賃料減額の調停を簡裁に提出した。近隣の不動産屋から資料提出を受けて調停にのぞんだが適正な賃料として不調にさせられた。
 山川さんこのままでは納得できないと裁判にした。鑑定も辞さないと裁判で主張したところ相手の弁護士もこちらの減額請求に応じ、和解したいと言ってきた。
 山川さん「あと一歩出来るだけ希望に添うよう減額させたい」と語った。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まずご相談を  042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸人から保証人に賃借人の滞納家賃を支払うよう請求された

2006年08月19日 | 賃貸借契約
(Q)賃貸人から賃借人が賃料を滞納しているので保証人である貴方が代わりに賃料を支払って欲しいと言われました。私が、保証人になったのは5年前です。2年間の契約期間だけ保証人になって欲しいと賃借人に懇請され保証人になったのですが、滞納された賃料を支払う必要があるのですか


(A) 保証人は、特別の事情がない限り、契約更新後に賃借人が滞納した賃料を支払う義務があります。したがって、2年間だけのつもりで保証人になったとしても契約が更新されたのちに賃借人が滞納した賃料の支払いについての保証人の責任を免れることはできません。ただし、例外として、賃借人が継続して賃料の支払いを怠っているにもかかわらず、賃貸人が保証人にそのことを連絡もしないで契約を更新した場合など、賃貸人に誠実な対応が欠ける場合には、保証人の責任を負わないとされる場合もあります。

賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まずご相談を  042(526)1094

相談日は毎週 月・水・金

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更新料についての最高裁判決の分析

2006年08月14日 | 契約更新と更新料
更新料の授受は慣習に多く頼っており、地域差が非常に大きいという理由から「借地借家法」においても更新料の規定は置かれなかった。更新料については法律には何の規定もない。従って法律上は、賃借人が更新料支払の義務を負っている訳ではないし、また賃貸人が更新料を請求する権利を持っている訳でもない。
 最高裁は更新料に関して「賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求に基づき当然に賃借人に賃貸人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない」(最高裁1978年1月24日判決)と判断した。予め更新料の支払約束が無い場合は賃貸人が賃借人に対して更新料を請求することが出来ない。 前記最高裁判決後、借地・借家に関して更新料支払合意が無い場合には更新料支払を認めた判例は存在しない。
 それでは、契約書に更新料支払特約がある場合、賃借人は更新料の支払義務を負うのか。
 更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、(A)賃料の不足を補充する趣旨(B)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価(C)合意更新された期間は解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、以上三点である。
 更新料支払特約がある場合、契約を合意更新せずに、法定更新するとどうなるか。
 (1)「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち、更新料特約が有る場合、賃借人は更新料支払の義務がある。
(2)「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。
 借家の場合において、最高裁は(2)の立場から「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982年4月15日判決)と明快な判断をしている。更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

借地上の建物が競売されると借地権はどうなるのか

2006年08月14日 | 借地借家の法律知識
(Q)住宅ローンで建てた借地上の建物には、必ず抵当権が設定され、ローンの支払ができなくなると、借地権はどうなるのでしょうか。

(A)借地上の建物の住宅ローンが何かの事情で払えなくなってしまった場合には、まず、融資をした金融機関との間で話し合いをして、抵当権が実行されないように、金利の減額や支払の延期を求めるのが普通です。それができない場合には、民事再生法に定められた住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン債務者の再生申立)を利用して、抵当権の実行を免れることもできます。
 民事再生法の適用が認められなかった場合には、抵当権が実行されることになります。

 借地上に建てた建物に抵当権を設定をした場合、原則として抵当権の効力は敷地の借地権にも及びます。したがって、抵当権が実行されて競売にかけられるときは、建物だけでなく、借地権も競売されることになるのです。

 建物と一緒に借地権が競売にかけられると、それまでの借地人は建物所有権を失うとともに借地権者としての地位も失ってしまい、建物の競落人が新たな借地権者となります。つまり、建物の譲渡とともに、旧借地人から、競落人への借地権の譲渡がされたことになるのです。借地権の譲渡や転貸をする場合には、借地権が賃借権であれば、地主の承諾が必要です。地主の承諾が得られればよいのですが、承諾なしに譲渡や転貸をすれば、借地契約を解除されることがあります。これでは競落人は、せっかく競落した建物を壊して立ち退くしかありません。
 そこで、このような場合にも裁判所に、地主の承諾に代わる許可の裁判を申し立てることを認めているのです。なお、この許可の申立ては建物代金を支払った後、2ヶ月以内に限り認められています(借地借家法第20条3項)。期間が経過しないよう注意が必要です。

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

一人で悩まず 東京多摩借地借家人組合へ 042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする