東京多摩借地借家人組合

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08年住宅着工戸数、約109万戸の低水準で推移 国交省

2009年01月31日 | 最新情報
国土交通省は1月30日、08年建築着工統計調査報告を発表した。

 それによると、08年の新設住宅着工は前年比3.1%増の109万3,485戸。改正建築基準法の影響を受けた07年に続き、110万戸を下回った。年間で110万戸を割ったのは07年を除くと、67年以来のこと。

 低水準となった理由について同省は、住宅価格の上昇や雇用環境の伸び悩み、更に08年後半からの経済の悪化を挙げている。

 特に経済の悪化は、同日発表した08年12月の住宅着工戸数に大きく影響。前年同月比5.8%減の8万2,197戸と、「65年以来の低水準で過去3番目に低い数字」(同省)。07年を除いた過去5年間の同月の平均値とべると、17.4%減と大幅な減少となっている。

 09年以降についても、「資金調達環境の悪化や在庫の積み上がりなどの要因があり、厳しい状況が予測される」(同省)としている。

 また、08年住宅着工を利用関係別に見ると、持家が前年比1.2%増の31万8,508戸と、63年以来の低水準だった。そのほか、貸家は同5.2%増の46万4,763戸。分譲住宅は同1.8%増の30万78戸となっている。(住宅新報 1月30日)
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 借地上の建物滅失後の掲示と借地権対抗力(東京地裁平成一二年四月一四日判決、金融商事判例一一〇七号)

2009年01月30日 | 最高裁と判例集
 借地上の建物滅失後の掲示と借地権対抗力(東京地裁平成一二年四月一四日判決、金融商事判例一一〇七号)

(事案の概要)
 借地人の建物は、平成一〇年一二月三〇日、火事で燃えてしまった。借地人は、平成一一年三月一八日、借地書家法一O条二項による掲示(消失建物及び建物建築予定等の必要事項)をしたが、何者かによってその掲示が取り外された。そこで、同年三月二五日、二六日にも同様の掲示をしたが、これらも取り外されていた。本件土地は、その聞に売却されて、平成一一年四月二三日、被告に買われて所有権移転登記がなされてしまった。借地人は、被告に対して、借地権の確認を求める訴訟を提起したが、被告は、本件土地を買い受けた-当時、本件土地上には建物がなく、建物が存在していたことを示す掲示もなかったので、借地権を対抗することができないと、争った。

(判決要旨)
 「法一〇条二項の規定は、建物が滅失して借地上に存在しなくなっても、滅失した建物の残影があれば、それからその土地上には土地利用権が設定されているとの推測が働き、建物登記簿も調べて借地権の存在を知ることができるとの考えから設けられたものである。すなわち、無効となった登記に一定の条件の下に余後効を認めるとともに、もはや建物が存在しない現地と建物登記を結び付ける方法として掲示を要求し、それに滅失建物を特定する事項を記載すべきものとした。法一O条二項は、掲示上の表示と滅失した建物登記とが一体となって暫定的に借地権の対抗力を維持しえるものとした
借地上の建物の滅失により、掲示がなされるまで一時的にその借地権の対抗力は消滅するのであり、建物滅失後との掲示をするまでの聞にその借地について第三者が権利を取得した場合には、その後に掲示を行っても借地権を対抗することはできない。また、法一〇条二項の定める掲示は滅失した建物の残影に他ならないから、掲示が一旦なされた後に撤去された場合には、その後にその土地について借地権の負担のない所有権を取得した第三者に対しては、借地権を対抗することができなくなる。第三者に対して借地権の対抗力を主張するためには、掲示を一旦施したというだげでは不十分であり、その第三者が権利を取得する当時にも掲示が存在する必要がある。」

(説明)
 借地権を第三者に対抗するには(認めさせるには)、建物が借地人名義で登記されていること、建物が存在することが必要。建物が火事、立替で滅失したときは、「滅失建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示」すれば、この掲示が建物白身代わりとなる。この掲示は新建物が建築されて登記されるまでの間継続させないといけない。掲示の保全につき、注意を換起させる事例である。
(東借連常任弁護団会議  弁護士 川名照夫)
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空いてるじゃん!花畑団地現地ツワー~住まいのセーフティネットを作ろう~ 2月11日に実施

2009年01月27日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 昨年10月に開催された「反貧困世直しイッキ大集会」の住まい分科会の参加者や参加団体を中心に、集会後に「住まいの貧困に取組む準備会」が設立され、第3回目の会議が1月19日午後7時から新宿区の大久保地域センターで開催された。

 国土交通省では、派遣切りなどで住宅を失った離職退去者に対し、UR(旧公団)住宅の空家への優先入居策を発表したが、都内の団地では東久留米市のひばりが丘の僅か9戸しか対象になっていない。公営住宅も東京都の供給戸数6戸(立川市3戸、日野市3戸)で都営住宅はゼロと極めて不十分な状況にある。足立区のUR花畑団地では約千戸の空家がありながら、団地再生複合型の団地に再生するため1400戸が解体・除去の対象になっている。

 今回の会議では、派遣切りにあった労働者などにも呼びかけ、UR団地の空家を活用すべきと声を上げるため、2月11日午後2時から4時に「空いてるじゃん!花畑団地現地ツワー~住まいのセーフティネットを作ろう~」を実施し、団地内の見学と住民との交流を含めた現地集会を開催することを決定した。

 また、3月14日には都内で住まいの貧困のネットワーク組織の正式な立上げの設立集会を新宿区大久保地域センターで開催する。4月19日に管理会社や保証会社、ゼロゼロ物件などの被害者の掘り起こしのための「追い出し屋被害110番」の実施などを取組むことを確認した。
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賃料増額請求権が5年の消滅時候により消滅したとされた事例

2009年01月26日 | 最高裁と判例集
 賃料増額請求権が五年の消滅時効により消滅したとされた事例(判例タイムス五三五号ニ七四頁以下。名古屋地裁昭和五九・五・一五判決)

(事案)
 本件土地の賃料は昭和四五年四月一日当時一ヶ月当たり一万二〇〇〇円であった。
 賃貸人Xは右の賃料が不相当になったとして、昭和四八年一二月一三日到達の内容証明郵便をもって、翌年一月一日以降の地代を三・三平方メートル当り五○○円に増額するとの増額請求をしたが、賃借人Yがこれに応じなかった。
 そこで、Xは昭和五二年五月に賃料増額の調停を申立てた。その後、調停は不調となり、本訴を提起し、昭和五六年八月一日以降の賃料を三・三平方メートル当り一、二00円に増額する意思表示をした。この訴訟で、xは昭和四九年一月一日以降の賃料が三・三平方メートル当り月額五00円であることの確認を求めていた。
 これに対しYは、昭和四九年一月一日以降の増額請求のうち、訴状送達の日である昭和五六年七月三一日までに五年を経過した分については民法一六九条により時効で消滅したと主張して争った事案。Xの請求を一部却下。

(判旨)
 Xが最初に本件土地の賃料増額の意思表示をしたのは昭和四八年一二月一三日である。月単位の賃料債権は五年間行使しないことによって時効消滅するから、Yの右時効援用によって本訴提起(昭和五六年七月一四日)に五年以上隔たる賃料債権差額分は消滅したことになる。したがって、Xはこれをもはや請求し得ないのであるから、その金額を確定する利益がなく、則ちこの部分は訴えの利益を欠いて却下を免れないこととなる。
 Xが主張する、賃料額が判決によって確定されるまで消滅時効は進行しないと立論は、一旦賃貸人が増額請求をすればその後どれ程放置しても訴提起に至るまで時効期聞は進行しないという結果を招くに等しく、採用できない。
 Xは、X申立の賃料増額調停中にYが多少の増額には応じる旨の債務の承認をしたから時効は中断したとも主張するが、右調停はXの主張によれば不調に終わったというのであるから、民事調停法第一九条の趣旨に則り、その後に訴の提起がなかった本件にあってはこれに時効中断の効果を認めることはできない。

(寸評)
 判旨は当然のことである。この判決の後に、平成一○年八月三一日東京地裁の判決で、本判決と全く逆のものがあったことは、本紙で既に紹介した。
 長期間にわたり供託している組合員が結構多いことを見ると、本件と同様に、担当以前の地代の増額請求を受けることがあると思われるので、参考のために紹介した。
(東借連常任弁護団会議  弁護士 田中英雄)

東京借地借家人新聞より

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「追い出し屋」被害で指針策定へ 国交省方針

2009年01月24日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
賃貸住宅の家賃を滞納した借り主が、家賃保証会社から法的手続きを経ずに退去を迫られる「追い出し屋」被害が相次いでいるのを受け、国土交通省は家賃保証業務のガイドライン作りに乗り出すことを決めた。悪質な業者による「追い出し行為」を防ぐのがねらいだ。

 家賃保証業務は監督官庁がなく、政府も正確な業者数を把握していない。国交省は昨年12月に調査に着手。日本賃貸住宅管理協会を通じ、会員企業などに契約書の提出を求め、契約件数、売上高、利用者の相談窓口の有無などを調べている。全国宅地建物取引業協会連合会や全国賃貸住宅経営協会にも保証会社との取引状況などの報告を求めている。

 すでに届いた数十社分の契約書のなかにドアロックや家財処分など、違法性の高い記載があることを確認。これを踏まえ、国交省は被害の広がりをくい止めるためには、契約書の適正化に重きを置いたガイドラインが必要と判断した。

 2月上旬にも調査結果と合わせて、ガイドラインを公表。法外な違約金請求など、消費者契約法に触れる記載例を示し、違法な契約を結ばないよう呼びかける。また、業界団体に苦情の相談窓口を置くよう求める内容にする方針だ。

 世界同時不況のあおりで、「派遣切り」などで職と収入を失った非正規労働者らが増え、家賃を払えない借り主が続出すると予想されている。各地で支援活動に取り組む弁護士らは2月15日に全国組織を結成し、家賃保証業務の登録制を柱とする法規制の検討を進め、国に早期の法案化を要望する方針だ。(室矢英樹)

朝日 1月24日


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期間の定めのある建物賃貸借契約の更新後の保証人の責任について

2009年01月22日 | 最高裁と判例集
 期間の定めのある建物賃貸借契約の更新と保証人の責任(最高裁第一小法廷平九・一一・一三判決。判例タイムス九六九号一二六頁以下)(肯定)

(事実)
 建物の賃借人の連帯保証人が、賃貸人に対して、合意更新された契約には民法六一九条二項により連帯保証の効力が消滅した。
 仮にそうでなくても、長期間にわたる賃借人の賃料未払の事実を通帯保証人に通知することもなく合意更新したうえ、未払賃料を連帯保証人に対して請求することは信義誠実の原則に反するとして、連帯保証債務の不存在確認を求めていた事案。連帯保証人の上告棄却。

(判旨)
 「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との聞で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである」。

(寸評)
 世上、よく生じる保証人の責任のうち、建物賃貸借契約の保証人の責任に関する最高裁の判断として実務に与える影響は大きい。
 本件の第一審は、更新前後の契約聞には法的同一性がないとして更新後の保証人の責任を否定した。学説上もこの立場を採る有力説があるが、裁判の実務上の大勢は、最高裁の判断と軌を一にしているようで、学説上の通説でもある。
 本件は、期間の定めある建物の賃貸借に関するものであり、土地賃貸借契約の更新の場合には別異に解釈される余地は充分にあり、それが相当といえる。
 評者は、この最高裁判決に批判的である。保証意識の推測として、当黙に法定更新を前提とするのは保証人に酷である。
(東借連常任弁護団会議 弁護士 田中英雄)

   東京借地借家人新聞より
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更新料を支払わないと借地契約の更新はできないのか

2009年01月21日 | 契約更新と更新料
(質問)地主から更新料を請求されています。前回は、父親の代でどこにも相談することができず、200万円を支払って更新しました。今回は、父親が5年前に他界し、長男である私が借地権を相続し、地代を支払っております。今回地主から300万円の高額な更新料を請求され困っています。更新料を支払わないと更新が出来ないのでしょうか。地主は前回更新料を支払っているので、今回も支払うことを約束しているというのですが本当でしょうか。契約書には次回の更新料については何も書かれていません。

(回答)結論から申し上げますと更新料は支払わなくても、借地法では契約の更新できるようになっています。旧借地法では第4条で借地の期限が満了しても、建物が存在していれば前回と同一条件で借地契約の更新を請求する権利が認められています。また、同法第6条で更新料を支払わないで、合意更新ではなく法定更新を選択すれば、借地契約は自動的に更新されます。
 地主が更新を拒否するには、正当な事由が必要で、なおかつ遅滞なく異議を述べなければなりません。正当事由は借地人が現在の借地を使用している事情より、地主の方にもっと使用する必要性があるなどの事情がないと簡単には認められません。
 更新料については、最高裁の昭和51年と53年の判決で「借地人には支払い義務はない」と明確な判決が下されています。また、前回更新料を支払っただけでは更新料を支払う合意が成立したとは認められません。



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全借連のホームページが開設されました

2009年01月20日 | 最新情報
 全国借地借家人組合のホームページが開設されました。みなさん、ぜひアクセスして御覧下さい。地方にも、借地借家人組合がございますので、ぜひご相談下さい。

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地権譲渡の許可を得ずに借地権の譲渡を強行し契約を解除された事例

2009年01月19日 | 最高裁と判例集
 借地人BがCとの聞に借地上の建物につき借地権付売買の予約をし、CがさらにDとの間に賃貸借契約を締結したことにつき、これを仮装として、借地権の譲渡に該当するとされた事例(東京地裁平8・6・2判決 判例時報一六〇〇号一一五頁)

(事実)
(1)借地人Bが借地権を譲渡したい旨地主Aに申し出たところ、Aは本件土地か自宅敷地に接していることから承諾を拒否した。
(2)その後BはCとの間に借地権付建物の売買予約を締結し、CはBに七二OO万円を支払って建物の利用件を取得し、かつ、所有権移転請求権仮登記を経由した。
(3)その後建物の周囲に足場が組まれて改装工事がなされ、Cから建物を賃借したDが医院として利用しはじめた。
(4)Aは、右一連の事実からすると、BはAに無断で借地権を譲渡したものであるから、借地契約を解除し、Bに対し建物収去土地明穫を求めた。
(5)これに対しBは、BはCに対し借地権付きで本件建物を売渡す予約したのみで、Cには本件建物を賃貸しているだけである、と主張し、Aの請求を争った。

(争点)
 BとCとの契約は借地権の譲渡に当るか否かである。
(判旨)
(1)Aの譲渡不承諾の意向を承知しているにもかかわらず、あえて、CがBに七二00万円といった高額の金員を支払い、本件建物の占有を取得し、これをDに転貸し、改修等自由にこれを利用していること、その代わりBは本件建物から転居し利用について全く関与しなくなっていることからすると、BはAの承諾を得ないまま借地権と建物の譲渡を強行したというべきである。
(2)BとCは、Aの不承諾意思にもかかわらず本件借地権の譲渡を断念するつもりかなく、かつ、譲渡した場合と同様の経済的効果(引渡、金銭授受、利用、仮登記)を先取り的に実現しているのであり、譲渡予約を仮装しながら、実は譲渡を強行していることにほかならない。
(3)Aの不承諾の意向に不当な点はなく、BとCはAの承諾を得ずに、かつ、警告を無視して本件借地権を譲渡したものであるから、Aの解除は理由がある。

(寸評)
 本件借地人BとCはやりすぎである。地主Aの解除を認めた本判訣は正当であると思う。借地権譲渡を地主が承諾しなかった場合には、借地人は借地権譲渡許可の申立を裁判所におこせる。本件のBもそれをおこしたが、それはDが医院を開業したあとであった。やはり譲渡許可の裁判所の決定を取り、しかるのちに事を始めるべきであった。
(東借連常任弁護団 弁護士 白石光征)


東京借地借家人新聞より


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地代の増額請求に対し借地法でいう借地人が相当と認める地代とは何か

2009年01月18日 | 最高裁と判例集
 借地法一二条二項(現借地借家法一一条二項)にいう「相当卜認ムル地代」とは伺か(最高裁第二小法廷平8・7・12判決、判例時報一五七九号七七頁)

(事案)
(1)本件惜地の地代は、昭和五五年八月に月額六万円に増額されて以来据え置かれてきた。(2)一方、本件借地にかかる公租公課(固定資産税と都市計画税の合計額)は、平成元年一一月現在、月額約六万一七七一円であり、地代額を上回っていた。(3)そこで地主は、平成元年一O月、地代を同年一一月分より月額一二万円に増額請求レた。(4)しかし、借地人は右増額請求接も依然として月額六万円を支払続けてきた。(5)そこで、そこで地主は平成二年二月、借地人に対し一週間以内に増額賃料の支払がない場合は借地契約を解除する旨意思表示したが、借地人は催告期間内に催告通りの質料を支払わなかった。(6)よって、借地契約は解除されたとして地主が建物収居土地明渡の訴えを提起した。

(大阪高裁の判決)
 借地人が従前の地代額を支払う限り主観的に相当と認める地代を支払ったものとして債務不履行の責任を問われることはない。これが借地法一二条二項の趣旨である。よって本件は借地人が六万円の地代を支払っている以上契約解除は無効である。

(最高裁の判決)
 (1)借地人が従前の地代額を主観的に相当と認めていないときには、従前の地代額と同額を支払っても借地法一二条二項にいう相当と認める地代を支払ったことにはならないと解すべきである。②では、借地人が主観的に相当と認める額の支払さえしていれば、常に債務不履行にならないのかといえばそうではない。借地人の支払額が地主の負担すべき公租公課の額を下回っていても、借地人がこのことを知らなかったときには、公租公課の額を下回る額を支払ったという一事をもって債務不履行があったということはできないが、借地人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っていたときには、借地人が右の額と主観的に相当と認めていたとしても、特設の事情のない限り、債務不履行がなかったということはできない。③大阪高裁は、借地人がその支払額を主観的に相当と認めていたか否かについても、また、借地人が公租公課の額を下回るという事実を知っていたか否かについても事実認定をしなかったのは法令解釈適用の誤りである。

(若干の解説)
 地代の増額請求があった場合の借地人の対応としては、借地人が自分だけの判断でこの額でよいと思う額を支払っておけば、あとで結果としてそれも上回る額で決まったとしても債務不履行の責任は問われないというのは、ご存知の通り。この判決の意義は特に②にあって、「だからといってそれが公租公課の額を下回っていて、しかもそれを知りつつ漫然と従前の額を支払っている場合には、借地人の義務を全うしていることにはならない」と警告している。
(東借連常任弁護団  弁護士 白石光征)   

  東京借地借家人新聞より
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借地人が建物買取請求権を行使すると明渡の強制執行の阻止理由になる

2009年01月15日 | 最高裁と判例集
 建物収去土地明渡判決と建物買取請求権(最高裁平成七年一二月一五日判決、判例タイムズ八九七号)

(事案)
 借地人は、期間満了に際して更新を拒絶され、正当事由有りということで、借地上の建物を収去して借地を明け渡せという判決を受けた。借地人は、建物収去土地明渡の強制執行を実行されてしまう立場になったが、借地法に基づき建物買取請求権を行使して、それを理由にして、強制執行を許さないと争った。一審、二審とも借地人の請求を認め、最高裁も同様の判決をした。

(判決要旨)
 「借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時まで(高裁が結審するまでという意味)に借地法四条ニ項所定の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がなされ、同判決が確定した場合であっても、賃貸人は、その後に建物買取請求権を行使しに上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができる。なぜなら、建物買取請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃貸人の建物収去義務が消滅するに至るのである。したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当たるもりではなく訴訟法上も、同訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはない。そうすると、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時以後に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法三五条二項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当する。」

(説明)
 借地期間到来に際して、更新を拒絶されたときは借地人借地上の建物を地主に買い取ってもらう権利建物買取請求権がある。この建物買取請求権は、地主かち起こされた土地明渡請求訴訟の最中に行使する義務はなく、いつ行使してもよい。建物買取請求権を行使すると、建物の所有権は地主に移転し、借地人は、建物代金の請求権を取得する。その結果、借地人は、建物を収去する義務がなくなり、また、建物代金が支払われらるまでは、建物からの退去を拒否することができる。この判決は建物買取請求権行使の効果が請求異議事由(明渡の強制執行を阻止する理由)になることを初めて認めた最高裁判決である。
(東借連常任弁護団  弁護士 川名照美)
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格安借地権付マンションの落し穴

2009年01月15日 | 譲渡・転貸借
 杉本さんは家を買いたいと思って、手頃な家を物色していた。不動産屋へも足繁く通った。そんな折、知人からマンションを格安で売りに出している人がいるとの情報を得て、その人を紹介してもらった。そのマンションは借地権付ではあったが、2千万円と格安で部屋数の多い掘出し物であった。
 杉本さんは即決で買うことにした。不動産業者が介在していないので仲介手数料(66万円)も支払わなくて済むと思うと安い買物である。
 杉本さんはマンションの登記も済ませ、そのマンションに引越した。ところが、マンションの土地所有者から、借地権の無断譲渡であるというクレームがついた。土地所有者は「部屋の前所有者は、私(土地所有者)から借地権の譲渡承諾を受けずに、売ったので、その譲渡承諾料を支払え」と言い、「支払わなければ、賃貸借契約を解除する」と杉本さんを脅したのである。
 杉本さんは困って、組合に相談してきた。組合は杉本さんに、「土地所有者の言っている通り部屋の前所有者が譲渡承諾料を支払っていないことが事実であれば、借地権付きマンションであるから敷地利用権が賃借権であり、その無断譲渡ということで、民法612条2項の規定から賃貸借契約を解除されることは当然あり得ることである」と回答した。
敷地利用権に対して予め一定の金銭を支払って包括的に賃借権の譲渡承諾を土地所有者から受けている場合は、自由に譲渡が出来る(譲渡権利付賃借権)。しかし、そうではないとすると、譲渡の度毎に土地所有者の承諾を得なければならない。その場合の譲渡承諾料は一般的には各室の敷地利用権価額の10%程度であるが、売買代金の10%位の支払いで認める場合が多い。
杉本さんの場合、45万円支払えば承諾すると言っているのであるから取敢えず支払って、後日、売主に損害賠償請求をして、その代金を取返すことを提案した。
(東京借地借家人新聞より)


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通常使用による建物損耗汚損の修復費は保証金の解約償却費に含まれる

2009年01月14日 | 最高裁と判例集
 賃借人が通常使用することによって生ずる建物の損耗・汚損の修復費は、解約時の保証金の償却費のなかに含まれる(大阪高裁平成六・一二・一三判決。判例時報一五四O号五ニ頁)

(事実)
 AはBから①保証金一六O万円、解約時に一OC万円を控除した額を返還する。②貸室内の建具、壁、天井床面その他貸室及びその関連する総てに対して、故意過失により損傷を与えたときは、別途に支払うという約定で建物を賃借していた。
 Aは契約後一年二ヶ月経過した時点で契約を解約し、保証金特約に基づき六O万円の返還を求めた。Bは、Aが契約期間中に貸室内を損傷したため、その修復費用として六O万円が必要であるとして、この原状回覆支払債務六O方円と保証金返還債務とを相殺する旨主張して保証金の返還を拒否。
 原審はBの主張を認めたため、Aが上告した事案である。
 本判決は、Bの主張する損傷が契約期間中のものかどうか疑問があること、損害特約にいう損失には、賃借人の通量使用により生じた程度の損耗、汚損は含まれず、これらの損傷は保証金一○○万円によって補償されていることを予定していること。補修に六O 万円を要するかどうか疑問があるとして原判決を破棄し差し戻し判決をしたものである。

(判旨)
 「本件特約にいう損傷には、賃貸人による賃借物の通常の使用によって生ずる程度の損耗・汚損は含まれないものと解するのが相当であり、特に契約における保証金一六O万円は、契約終了時には、約六Oパーセントにも当たる一○○万円を控除して返還するものとされていることからすれば、右のような通常の使用によって生ずる損傷、汚損の原状回復費用は右保証金かち控除される額によって補償されていることを予定しているものというべきである」
(寸評)
 本判決は、保証金の償却特約がある場合のものであり、結論は当然である。問題は償却特約がない敷金類似の保証特約とか、償却宰が一○パーセント程度の特約の場合についてはどうなるのか問題が残っている。原状回復義務の範囲をどこまで認めるのか、今日的な問題を考えるうえで参考までに紹介した。
(弁護士 田中英雄) (東京借地借家人新聞より)


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借地は認めない、売るか買うか二者を選べと脅かす地上げ屋

2009年01月13日 | 明渡しと地上げ問題
 荒川区西尾久1丁目で昭和33年から37坪を借地している福本さんは、12月に地主より「今度土地を売ったので地代もそちらに払ってほしい」と通告があった。

 その後、地上げ会社の開発部長が来て「所有権は当社に移転したので土地を買うか売るか、契約残存期間は9年あるが切れたら借地権は消滅する。万一、更新を認めたとしても多額な更新料が必要だ。それに福本さんは家屋に抵当権が付いている。このような物件は早く処分した方がよい」と主張。福本さんは「余計なお世話だ。今後も借地権続けていく」と断った。

 ところが地上げ屋は「借地は絶対認めない。売るか買うか腹を決めろ」と脅かした。組合より「借地人を恫喝する気か」と一喝すると、「また話に来ます」と引き上げていった。福本さんは組合立会いでならと念を押した。(東京借地借家人新聞より)



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借地人提供の地代を地主が内金として受領したことが受領拒絶に当たる

2009年01月11日 | 最高裁と判例集
 地主が地代値上げ請求後、借地入から従前額の地代の支払を受けるに際L ごれを内金として受領する旨通知したことが、原則として賃料全額の支払に対する受領拒絶に当たるとして、弁済の提供を欠く供託が有効とされた事例(東京地裁平成五年四月二○日判決、判明時報一四八三号五九頁)

(事実)
 地主が借地入に対して、従前額の約六倍の地代値上げ請求をしたところ、借地人はこれを不当と考え従前額の地代を銀行振込で支払った。ところが、地主は借地人に対し、右振込まれた従前額を増額請求した地代の一部として受け取る旨通知した。そこで借地人は、以後、地主に提供するとなく、従前額の地代を供託した。その後、右土地の相続人から借地人に対し賃料不払を理由に借地契約を解除する旨意思表示をして、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。

(争点)
 地主が借地人に提供する従前額の地代を内金として受領する態度をとったことが受領拒絶に当たるかどうかである。

(判決の要旨)
 裁判所は、借地人は値上げを正当とする裁判が確定するまでは相当と認める地代の支払義務を負担するが、これは必ずしも客観的な相当な地代であることを要しないのであるから、相当と認める額の地代の支払いは債務の本旨に従った弁済であって一部弁済ではない。したがって、地主が地代の内金として受領する旨意思表示をしたことは、特段の事情がない本件においては、地代金額の支払としては受領拒絶するとの意思を明らかにしたものと解するのが相当として、弁済の提供を要せずして受領拒絶を理由として直ちに供託をすることができ、地代不払の債務不履行はないとした。
(短評)賃貸人からの賃料増額請求に対し賃借人が相当賃料として従前額を提供したとき、賃貸人がこれを賃料の内金として受領すると主張する事例がしばしばみられる。この場合、賃借人としては、賃貸人か賃料の一部であると言明されながら、これを支払うことは、残りの賃料差額の支払義務を暗に認める結果になるのではないかと危惧し、他方では(一部とはいえ〉賃料として受領するという以上、強いて、これを持ちかえって供託をした場合その供託が有効かどうかと思い迷うものである。本判決は、賃貸人の内金受領の意思表示は賃料金額の支払としては受領拒絶の意思を明らかにしたものであると解したもので、賃借人にとっては、活用できる判決といえる。しかし、他方、裁判例の中には、増額賃料については裁判で確定するから従前賃料額を持参されたい旨の催告があったにもかかわらず、現実の提供することなくした供託が無効とされた例がある。(名古屋地裁昭和四七年四月二七日判例時報六八九・九二)裁判例が分かれている以上、実務的には、賃貸人が賃料内金として受領する場合には、賃借人としては、支払った上それが賃料全額であることを明確にしておくというこれまでの方針を引続きとるべきであろう。(弁護士 榎本武光)           (東京借地借家人新聞より)


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