東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

更新料支払特約があっも法定更新した場合には更新料の支払義務が無いという最高裁判決

2008年07月31日 | 最高裁と判例集
 次に掲載する最高裁判決は前日紹介した東京高裁判決(昭和56(1981)年7月15日)を不服として賃貸人(上告人)が最高裁に上告したものである。判決は賃借人(被上告人)の全面勝訴。更新料支払特約があっも法定更新した場合には更新料の支払義務が無いという判断が下された。

      最高裁昭和57(1982)年4月15日判決

言渡 昭和57年4月15日
昭和56年(オ)第1118号

    判      決
東京都世田谷区若林4丁目**番**号
上告人             T実業株式会社
代表者代表取締役      N   M
訴訟代理人弁護士      雨宮 真也
中村 順子
川合 善明
島田 康男
東京都世田谷区若林4丁目**番**号
          Sメゾネット105号室
被上告人            A 

  
 右当事者間の東京高等裁判所昭和55年(ネ)第1066号、第1094号建物明渡請求事件について、同裁判所が昭和56年7月15日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

    主       文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。



    理        由
 上告人代理人雨宮真也、中村順子、川合善明、島田康男の上告理由について所論の点に関する原審の認定判断は、本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではないと認めるべきであるとするものと解されるところ、本件における証拠関係及び事実関係の下においては右認定判断はこれを是認することができないではない。
 論旨は、原判決を正解しないでその不当をいうものであって、採用することはできない.。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

      最高裁判所第一小法廷
        裁判長裁判官    山 本    亨
            裁判官 団 藤  重 光
            裁判官 藤 崎  萬 理
             裁判官    中 村  治 朗
             裁判官    谷 口  正 孝

 昭和57年4月15日
 最高裁判所第一小法廷




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首都圏の借地借家人組合が交流連絡会を開催

2008年07月30日 | 東京借地借家人組合連合会
 第2回首都圏交流連絡会が7月28日午後、横浜市の神奈川借連の事務所において東京・神奈川・千葉の3連合会から8名が参加して開催された。

 全借連第27回定期総会の感想、現状の借地借家問題をめぐる問題等について活発な意見交流がされた。情勢では借家の明渡しや借地の地上げ問題が増えていること、セイフティネットが機能しない中で住宅の貧困化がすすんでいること等が話し合われた。

 今後の運動として、首都圏の借組間で最近の相談事例の研究会や交流会の開催、木造密集地域やドヤ街等首都圏の住宅事情の視察、耐震補強工事の地主の承諾問題と各自治体の助成要件の調査活動等の運動が提言された。また、8月30日の東借連主催の相談員要請夏季研修会の参加等について協議した。次回は9月25日千葉県で開催する。



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後から入居した人の方が家賃が安いが減額できないか

2008年07月29日 | 地代家賃の増減
(Q) 後から入居した人の家賃の方が安いのですが 賃貸マンションに住んで8年になりますが、ここ最近、新しく入居した人たちの家賃が下がっていると耳にしました。管理者から「下げている」との連絡もなく、以前から住んでいる人たちはみんな驚いています。何とか話し合いを持ちたいのですが、可能でしょうか。また、どのように進めればよいのでしょうか。


(さいたま市 主婦 52歳)

(A) 近隣同等物件の家賃を比較したうえで、話し合いの場を持つことをお勧めします 賃貸住宅の賃料については、空室が発生した際、早期入居対策として家賃調整が行われ、値下げをして募集するケースが出てきます。したがって、新規の賃借人の家賃が古くからの賃借人の家賃との間に格差が出てくることはありえることです。


 家賃の改定については、借地借家法第32条に、「借賃増減請求権」としてその要件が明文化されています。


 それによると、(1)土地・建物に対する租税、その他負担の増減(2)土地・建物の価格の上昇もしくは低下、その他経済事情の変動(3)近傍同種の建物借賃に比較して不相当、などの状況があるときには、将来に向かって建物の借賃の増減を請求できるとなっています。


 一般的に、家賃の不相当の程度は、15~20%の差が出たときとされています。これについて、当事者間に協議が整わない場合は、まず調停の申し立てを行うこととなります。


 今回のご相談では具体的な差額が出ていませんが、20%の差額が出ていないから請求できないということではなく、当事者(賃貸人と賃借人)間で話し合いを行い、互いに歩み寄りのうえで和解することは良いと思います。その場合、近隣同等物件の家賃を調査し、比較したうえで話し合いの場を持つことが重要でしょう。


財団法人 日本賃貸住宅管理協会



(2008年7月28日 読売新聞)



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8月以降の各組合の行事予定

2008年07月28日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
■城北借組 「西武デパート相談会」
 8月20日(水)・21日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 8月22日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。
 「借地借家問題講座」
 8月2日(土)午後1時から板橋区グリーンホール。連絡・(3982)7654。

■多摩借組 「我が家の耐震診断と耐震補強の学習会」
 9月20日(土)午後1時30分から国分寺労政会館第1会議室。講師は生協・消費者住宅センターの建築士他。参加無料。

 「定例法律相談」
 9月6日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者は必ず予約。連絡・0
42(526)1094。

■江東借組 「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から亀戸カメリアプラザ(亀戸文化センター)。連絡・(3640)4694。

■葛飾借組 「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。

■足立借組 「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。要事前連絡。連絡・(38
82)0055。


■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。

■世田谷借組 「相談会」
 毎月25日午後2時~7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。

■北借組 「法律相談」
8月6日(水)・20日(水)午後7時から赤羽会館。連絡・(3908)72
7270。


 行事は各組合にお問合せ下さい。会員限定の催しもあります。(東京借地借家人新聞)
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借地の期間満了が近い時における借地条件変更許可の申立が棄却された事例 

2008年07月25日 | 最高裁と判例集
 借地非訟事件において、借地権の期間満了が近いときにおける借地条件変更許可の申立が、契約が更新される見込みが確実とは言えず、また緊急の必要性があるとも認められないとして棄却された事例 (東京高裁平成5年5月14日決定、判例時報1520号94頁)

 (事案)

 (1)地主Xと借地人Yとの借地契約は非堅固建物(木造建物の類)所有の目的で平成7年3月31日に期間が満了する。

 (2)借地上には、A棟(昭和30年代の建築)、B棟(昭和34年頃の建築)、C棟(昭和39年頃の建築)があった。

 (3)借地はJR池袋駅近くにあり、商業地域、防火地域に指定され、高層ビルが建ち並んでいる。

 (4)借地人Yは、本件借地に近いところに宅地42坪及び同地上に5階建てのビルのうち4階部分を所有し、平成2年6月右C棟からここに転居した。

 (5)Yは、各建物が老朽化したので土地の有効利用を図り、建物の賃貸による収入を得るため、本件借地上に7階建の事務所兼居宅のビルを建築することを計画した。しかし地主Xの承諾が得られなかったため、借地条件変更(非堅固建物所有から堅固建物所有への変更)の許可の申立をした。

 (6)他方地主Xは自己居住地や本件土地等を所有しているが、平成7年3月31日に迫った本件借地の期間満了の際には、更新を拒絶し、土地の有効利用を図るため、ここに賃貸ビルを建築する予定でいる。

 (7)平成4年4月12日、C棟が突然焼失、A棟の1部にも類焼し建物としての効用を失った。A、C棟が借地の大半を占めている。またB棟は外壁などにかなりの老朽化が見られる。

 (決定要旨)
 (1)本件借地契約は、平成7年3月31日には期間が満了し、Xが更新を拒絶することは明らかである。このように期間満了が近い場合に本件申立を容認するためには、条件変更の要件を備えるほか、契約更新の見込みが確実であること及び現時点において申立を容認するための緊急の必要性があることを要するものと解される。

 (2)本件においては、XYとも居住の必要性からではなく、土地を有効利用し賃料収入を得るためビルを建築しようとしていることなど前記(1)から(7)までの事実を総合すると、平成7年の期間満了時において借地契約が更新される見込みが確実とはいえず、これを訴訟で解決することを待てないような緊急の必要性があるとも認められない。よってYの申し立ては理由がない。

 (若干のコメント)
 Yの申し立ては平成3年にされ、東京地裁は平成4年7月30日にこれを容認した。その後高裁に控訴中に前記(7)の火災が発せした。これがYの逆転敗訴に微妙に影響したものと思われる。この高裁の決定要旨(1)は、契約更新見込みの確実性と建築の緊急性の2つを要件とした点に特徴がある。

 これに対し増改築許可の申立の場合には、認容されても期間の延長はないので少し事情を異にするが、期間満了間際の申立には右2点は一応念頭に置いた方がよい。  (1995.06)

参考法令 「借地借家法」第17条


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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府中グリーンプラザのセミナー会場定員を超え大盛況

2008年07月25日 | 借地借家問題セミナーと相談会
 東京多摩借組では、4月26日の八王子市民会館を皮切りに、5月31日に立川市民会館、6月21日に福生市民会館、7月19日に府中グリーンプラザの4ヶ所で「借地借家問題市民セミナー」を開催した。宣伝は、主に市の広報の催し物案内に掲載している。その他会場周辺に組合員の協力を受け、チラシを配布している。7月19日の府中グリーンプラザのセミナーは朝日新聞の多摩マリオンにも掲載され、会場の定員30名を越える37名が参加し、大盛況だった。

 各セミナーとも参加者の関心は高く、借地借家法や消費者契約法を分かりやすく解説し、組合の存在意義などをピーアールしている。



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住宅地価格、3四半期連続でマイナス/三井不販調査

2008年07月24日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 三井不動産販売(株)は24日、「第45回リハウス・プライスリサーチ」(2008年7月1日時点)を発表した。同調査は、首都圏の住宅地・既存マンションの価格動向を四半期ごとに定点観測しているもの。

 08年4~6月の四半期変動率は、住宅地価格が▲2.0%(前回調査▲1.9%)、既存マンション価格が▲0.9%(同▲0.4%)と、ともに前期に続き下落傾向。また、07年7月~08年6月の年間変動率は、住宅地が▲4.8%、既存マンションが±0.0%となった。とりわけ東京23区の住宅地が▲9.9%と下落傾向が強く、全体へ影響を及ぼしている。

 地域別の価格変動率をみると、住宅地は東京23区が▲3.5%(同▲3.7%)、東京市部▲2.8%(同▲0.8%)、千葉県▲1.0%(同 ▲1.9%)、埼玉県▲1.4%(同+0.1%)、横浜市・川崎市▲0.9%(同▲2.1%)、神奈川県・その他の市▲0.9%(同▲1.3%)。
 既存マンションは、東京23区▲1.4%(同変動なし)、東京市部0.9%(同+0.1%)、千葉県▲1.6%(同▲0.9%)、埼玉県0.6%(同 +1.0%)、横浜市・川崎市▲0.5%(同▲0.1%)、神奈川県・その他の市+1.7%(同+1.3%)。

 同社は、「今後、エリアによっては、時間差はあるものの、住宅地、既存マンションともに価格調整が進み、価格が安定していく」と分析している。
(不動産ニュース7月24日)
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新賃料の合意がないことを理由に更新料支払義務を排斥した事例

2008年07月24日 | 最高裁と判例集
更新料支払特約があった場合において、新賃料につき合意が成立しておらず更新料が具体的債務として発生していないとされた事例 (東京地裁平成5年2月25日判決、判例タイムズ854号)

 (事案)
 賃借人は、店舗賃貸業者であるが、平成元年6月、飲食業の店舗として転貸する目的で、マンション1階にある店舗を賃料15万円で賃借したが、その契約書には「賃借人は3年後の更新において新賃料の2カ月分を更新料として支払う」との特約があった。

 賃貸人は、更新時期に際して、賃料を20万6000円に増額請求し合わせて更新料の41万2000円、それに敷金50万円の請求(契約時に差し入れるべきものが3年後に延期されていた)をした。賃借人は、改定賃料の折り合いがついた後に更新料を支払うと回答したが、賃貸人は、更新料と敷金不払を理由に契約を解除して、建物明渡の訴訟を提起した。

 本件判決は、いまだ更新料支払義務は発生していないとして賃貸人の明渡請求を排斥した。更新料に関する部分の判決要旨は次のとおり。

 (判決要旨)
 「被告は、原告に対して、3年後の更新時において新賃料2カ月の更新料を支払う約束をしてはいたが、新賃料の具体的な算定が予め合意されていたことを認めるに足りる証拠はない。
 新賃料の金額は、第一次的には、更新時における双方の合意によって定めることが予定され、従って更新料も右金額の確定をまって初めて、その2カ月分相当額の具体的債務として更新時に発生するものといわなければならない。
 本件においては、いまだ合意が成立していないことが明らかであるから、新賃料の金額の確定を前提とする更新料も、本件解除前において、その具体的債務として発生していなっかたものというべきである。この点について、原告は、被告が少なくても1カ月15万円の従前賃料を基準にした更新料30万円の支払義務を有していた旨主張するが、更新料の算定方法は前記のとおりであるし、原告のような性急な交渉態度は、いたずらに被告を困惑させるものというほかなく、こうした点にかんがみると、被告に原告主張のような右金額による更新料支払義務があったとまでいうことはできない。」

 (説明)
 本判決は、「新賃料が合意されていないから更新料も確定できない」と判断したが、支払特約更新料の支払義務を排斥する論理の1つを示している。
 賃借人は、新賃料が合意されていないとしても従前賃料の2カ月分の更新料支払義務が肯定される危険を避けるために、契約解除後であるが15万円の2カ月分の30万円を供託していたが、本判決は、従前賃料の2カ月分についても、支払義務はなかったと判断した。


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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成年後見制度とはどのような制度ですか

2008年07月23日 | 借地借家の法律知識
自分で判断する能力を欠いているとか、それが不十分な場合には、その財産をめぐって様々な争いや不正が発生することになります。
 例えば、介護契約についてすら、契約をしたのかしないのか、そもそも契約という認識や理解がされていたのかなど、様々なことが問題となるので、その方の財産を保護する制度が必要となります。それが成年後見の制度で、判断能力が欠ける場合には後見人、著しく不十分な場合には保佐人、不十分な場合には補助人をつける仕組みとなってます。
 これは、従来の禁治産や準禁治産の制度を改善したもので、4親等以内の親族、身寄りのない方の場合には市町村長からも申立も認められ、財産管理だけでなく療養介護などの事務についても保護されることとなっています。多くは主治医による鑑定が必要となりますが、裁判所に納める費用も10万円程度に抑えられ、家庭裁判所に申立をすれば比較的短期に決定してもらえます。

 後見人などには、親族になってもらう場合もありますが、弁護士などの専門家が担当する場合もあります。とりわけ相続問題など利害がからむ場合には、親族の方が後見人となった場合でも、裁判所で後見監督人が選任され、その監督の下に財産管理などが行われることとなります。
 また、成年後見については、裁判所を通じて行う法定後見制度のほかに、任意後見の制度もあります。任意後見は、判断能力が衰えていない段階で、あらかじめ後見人や後見の内容を決めて契約をしておく制度です。
 裁判所への申立や任意後見の契約などの詳細、不明な点については、弁護士にご相談いただいたうえ、手続を進めるようにしてください。


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地震で借地上の建物が壊れ解体して更地のままにしてあるが大丈夫か

2008年07月22日 | 地震と借地借家問題
Q借地上に所有していた建物がひどく壊れたため解体してもらいました。その後再築の目途がたたないので更地のままにしてありますが、借地権に影響はないでしょうか。

A借地上の建物が滅失しても借地権は消滅せず、残存期間だけ存続します。さらに、罹災法が適用されれば借地権は二つの点で保護されます。すなわち、①借地権の残存期間が10年未満の場合は10年に延長されます(罹災法11条)。また、②政令施行の日から5年間建物がなくても借地権に対抗力が与えられます(罹災法10条)。ところで、罹災法のこれらの保護が受けられるのは、借地上の建物が災害により滅失した場合に限ります。ところが、実際問題として滅失か否かの判断は非常に難しく、滅失したと思って建物を取壊したところが、後に裁判所によって滅失でないと判断され、とくに②の保護が与えられなくなって、土地を買った新所有者に対抗できなくなるということも起こり得ることです。

 したがって、滅失かどうか判然としない場合において、建物を取壊す場合には慎重を期して念のため借地借家法第10条2項本文の明認方法(権利が存在することを示す掲示)を施しておくべきです。なお、この規定は従前建物が登記されている場合のみに対抗力を認めています。取壊した日から2年以内に建物を建築し登記すれば借地権は第三者に対抗することができます。掲示板には、「この土地は私が借地権を有しており、その上に下記の建物が建っていましたが滅失しました。私は、下記建物滅失の日から2年が経過するまでに建物を新たに建築する予定ですので、借地借家法第10条の規定に基づきここに掲示します」。滅失した建物の表示・滅失した日・住所・氏名・年月



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土地を時効取得されるのでしょうか?

2008年07月19日 | 借地借家の法律知識
(Q) 2年前、親名義の土地に我が家を新築した際に、敷地の測量をしたところ、隣家の倉庫が5センチほど境界線から出ていることが分かりました。そこで、そのことについて隣家に確認してもらい、「はみ出ている事実を認める」という書類に印鑑を押してもらえました。その際、隣家とは、トラブルになってしまったため、今でも、気まずい関係が続いています。

 もし、隣家が時効取得を主張してきた場合、渡さなければならないのでしょうか? また、隣家がほかの人に土地を売却などした場合、どうなるのでしょうか? 不安でたまりません。




(A) 冷静な手続きが笑顔に変える

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO役員 石田 光曠)


 境界問題で隣家ともめるケースは意外に多く、残念ながらそのほとんどが、口もきかないという関係になっています。本来、いざという時には助け合わなければいけない隣人同士ですから、一刻も早い円満解決が必要です。

 さて、今回の場合、2年前に確認した証拠書面がありますから、取得時効の成立は中断しています。したがって、隣家から突然、「やっぱり取得時効の完成を主張する」と言ってきてもそれは認められませんから、ひとまずご安心を。

 ただし、確認した内容が、「はみ出していることを認める」という内容だけであれば、さらにそこから20年間経過すれば時効完成の可能性を否定できず、さらにその完成前に中断行為をしなければなりません。また、隣家に相続や売買が発生した場合、新たな権利の発生として10年、または、20年の取得時効が考えられなくもありません。このような場合には、当事者だけでなく、第三者に対しても対抗力のある絶対的な境界確定行為が必要です。

 公的な制度として、今までは裁判所の「境界確定の訴え」という裁判によらなければならなかったのですが、境界トラブルのあまりの多さから、比較的気軽にできる「筆界特定」という法務局の制度が最近誕生したばかりです。

 では、どうするかですが、土地調査家屋士という境界問題の専門家がいます。地元の土地調査家屋士会の相談会などを利用して、どのような対策が必要で、そのうちどのような対策が既にされているかいないかの指導を、具体的に受けてください。

 隣地同士のトラブルは、根が深くならないうちに、早めにきちっとした法律手続きをすることで、笑顔で付き合える関係に変わるものです。初めのうちは犬猿ムードで始まる手続きも、最後は笑顔で握手するという事例が多いようです。感情的にならず、冷静に粛々と手続きを踏んでください。

(住宅ねっと相談室より)
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不動産開発のゼファー民事再生 負債949億円

2008年07月18日 | 最新情報
 東証1部上場の中堅不動産開発会社ゼファー(東京都中央区)は18日、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理されたと発表した。負債総額は949億円。サブプライム問題をきっかけとする不動産取引の低迷などが響き、物件の売却が想定通りに進まず、資金繰りに行き詰まった。

 東京証券取引所は同日、ゼファーを整理銘柄に割り当て、8月19日に上場廃止することを決めた。

 ゼファーは94年設立。購入したマンション用地を転売したり、購入用地に建設したオフィスビルを丸ごとファンドに売ったりしてきた。都市部の地価上昇を追い風に業績を伸ばし、07年3月期連結決算では売上高1279億円、当期利益63億円を計上した。

 しかし、今年に入ってから売却予定先が資金を調達できず、物件が思うように売れなくなったという。子会社のマンション分譲会社、近藤産業(大阪市)が5月末、マンション市況の低迷を受けて自己破産を申請。その影響で信用が低下し、金融機関から融資が受けられなくなったことも打撃となったという。

 サブプライム問題を受けて、金融機関が不動産への融資を絞っているとの見方が、業界内には広がっている。外国人投資家など投資マネーの勢いも衰えており、ほかの新興不動産会社も厳しい経営環境に置かれている。(朝日 7月18日)

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備え付けのエアコンが故障したが、家主が修理してくれない

2008年07月18日 | 増改築と修繕
(問)賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修理代金を負担するのが道理だと思うのですが。

(答)民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。

①「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)。

 ②「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所平成8年11月28日判決)。

 即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合でも、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効というのが裁判例である。

 結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えない。従って、修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、家賃と相殺することが出来る。(東京借地借家人新聞より)


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地主の妨害乗り越え、借地上に鉄骨3階建てを建築

2008年07月17日 | 増改築と修繕
 台東区谷中に住む山田さんは地主との4年半に亘る建築を巡る裁判の末に、借地上に鉄骨3階建の自宅がやっと完成した。 

事件の発端は、地主側弁護士からの通告書であった。地主側の通告書には、「通告人は、本書面を以って貴殿が本件土地上に於いて建物の新築・改築又は増築を行わないよう請求致します」と記されていた。  建築計画を立て、建築会社の設計図も完成し、新築の準備をしていた矢先のことであった。
 
 「貸地上に建築計画上の住宅・店舗の建築に際して更新料・承諾料の要求は一切致しません」と言う直筆の実印が押された念書を地主から貰っており、地主からは既に建物建築の承諾を得ていたにも拘らず、このような建築中止の通告である。地主のたちの悪い遣り方に納得が出来ず裁判に訴えた。  

 裁判が始まると地主側は木造建物の建築承諾はしたが、堅固建物の建築承諾はしていないと反論してきた。確かに念書には堅固建物とは書いてない。

 だが、裁判の結果は非堅固建物から堅固建物への変更を認め、30年の借地契約で鉄骨3階建の建物へ建替えることを認めた。地主が書いた念書通り建替承諾料・借地更新料共に支払わずに済んだ。

 建築資金は店舗併用住宅なので国民生活公庫から融資を受けて、裁判終了から2年後に建物は完成した。(東京借地借家人新聞7月号)



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組合に入会し、明渡し交渉で頑張った3年半

2008年07月16日 | 明渡しと地上げ問題
江戸川区東小岩の平屋建て借家に住む町田さん達3軒は3年前の05年3月5日に不動産屋から「戦後直ぐに建てた建物なので老朽が激しいため今回の契約期間満了で契約を解除するので更新しない」との文書が送りつけられ、5月11日に組合に入会した。

 当初1軒15万円の引越料が、10月には30万円になり、不動産屋は「そちらの要求額を提示してほしい」と言ってきたので、組合は金額を提示した。05年12月に不動産屋より1軒100万円の提示があり、その後も数回文書の交換と話し合いを重ねたが進展がないまま、業者がユアーズホームにかわった。

 2年後の07年8月、ユアーズホームは組合員宅に挨拶に来て「引越料の金額が決まった」と連絡。町田さんたちは「この件は全て組合に一任してある」と動じないため、同会社は組合に「話し合ってほしい」と電話を寄こした。何度か話し合いが行なわれ、今年の4月22日組合事務所で「200万円でまとめてほしい」との条件を町田さん達も了承し、今年の10月末迄に明渡すことで合意。3年半近くかかったが、組合員の粘りが実る結果で終わった。



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